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宣戦布告

「全員手を止めて集まってくれ」

魔物が襲来してからしばらく経ち、冒険者ギルドに行ったり、王城に呼ばれたりした後、今日も初等部の女子寮の修繕を手伝っていると、初等部の先生から号令が掛かる。

僕達は作業を中断して、先生のところに集まる。

さっき昼ごはんは食べたばかりだし、なんだろうか……。


「先程、帝国から宣戦布告があったとの連絡を受けた。よって作業はしばらくの間中止する。各自家に帰り、王都に残るのか、それとも王都を離れて避難するのか話してきなさい」

ダイス君が正式に次の王になることに決まり、帝国が攻めてくるという話は流れたと思ったけど、先日のスタンピードを攻める機と帝国は見たようだ。


こんな時に攻めてくるなんて……。

こういう時こそ手を取り合って助け合う時じゃないのかな。


僕はアンジェと家に帰り、お母さんとお父さんに説明をする。


「帝国と戦をすることになるみたいだよ。先生が王都に残るか、王都を離れて避難するか家族と話しなさいって」


「エレナも一緒の方がいいわよね。今日も教会に行ってるから迎えに行ってきてもらえる?」


「うん。行ってくる」

僕はお姉ちゃんを呼びに教会に行く。


「エレナちゃんならあっちにいるわよ」

教会でシスターさんにお姉ちゃんのいる場所を教えてもらい、教えてもらった場所に行くと、そこは畑だった。


「何してるの?」

今は冬なので、作物は収穫も終わっている筈だ。


「食べ物の貯蓄がどんどん無くなっていっているから、次の年にたくさん植えられるように畑を広げているのよ。エルクはどうしたの?学院に行ったんじゃないの?」


「帝国から宣戦布告をされたんだって。それで、作業は中止になって家族とどうするか話してくるようにって言われて解散になったよ。お姉ちゃんも一緒に話をしようってことで呼びに来たの」


「神父様に教えてくるわ。エルクはここで待ってて」


「うん」

お姉ちゃんが教会の中に走っていったので、僕は戻ってくるのを待ちつつ、途中になっている畑の拡張を代わりにやっておく。

お姉ちゃんはクワを持っていたけど、僕は土魔法でやろうと思う。


地面に手を付いて、畑を耕すように地面の土を掘り返していく。

空気が入り、土がフカフカになるようにイメージして進める。


「ふぅ。終わった」

ヒモで囲われた箇所は硬い地面から畑に変わった。


「あれ!?作っちゃったの?」

お姉ちゃんが戻ってきて驚く。


「待ってる時間に魔法で耕しておいたよ」


「なんで勝手にやっちゃうの?」


「何かやり方が間違ってた?フカフカの土になったよ」


「畑を耕す苦労を学ぶ為でもあったのに……」


「……ごめんなさい。そんな理由もあるとは知らなかったよ」


「エルクは親切でやってくれたんだからいいわ。でも今度から一声掛けてね」


「うん。戻した方がよければ戻そうか?押して固めるくらいしか出来ないけど」


「そこまでしなくても大丈夫よ。それにそれどころではなくなったから、勉強がてらなんて言っている暇も無くなっちゃうわ。神父様はお城に行って詳細を確認してくるそうよ。話はしたから帰りましょう」



「「ただいま」」

お姉ちゃんと家に帰り、話を始める。


「2人が帰ってくる前に少し話をしたのだけれど、王都に残るのがいいと思うの。王都の中で戦をするわけではないし、王都を離れても行くところがないわ。エルクとエレナはどう思う?」


「僕も王都に残ってもいいと思うよ。せっかく友達も出来たし、お別れもしたくないかな」


「私は……戦になったら王都を離れようかなって思ってる。逃げるんじゃなくて、帝国領の方に」


「……戦に参加するつもり?」

お母さんが怖い顔でお姉ちゃんに聞く。


「違うよ。戦が始まれば、戦場の近くにある村が被害にあうでしょ?助けに行きたいの」

お姉ちゃんは前に言っていたことを前倒ししたいようだ。


「駄目よ。危な過ぎるわ。それにエレナをそんなところに行かせたくない」

お母さんは当然反対した。

お父さんも顔を見る限り反対のようだ。


「私なら大丈夫よ。王国でもトップクラスに強いらしいし……」


「そうかもしれないけど、危険なことには変わりないわ。それに、エレナが行って何が出来るの?」


「……怪我人を治療することは出来るよ」

お姉ちゃんは送り出してくれないことに少し熱くなっている。


「兵士に襲われるってことは、残念だけど殺されている可能性の方が高いわ。エレナが村にいる時に襲われれば助けられるかもしれないけど、エレナは鉢合わせた兵士をどうするの?殺すの?立場的には敵かもしれないけど、徴兵されただけの民間人かもしれないわよ」

お母さんはお姉ちゃんの心の方を心配しているようだ。


「そこまで考えられてなかった……。ごめんなさい」

お姉ちゃんにもお母さんの気持ちが伝わったようだ。


「エルクは行くとは言わないのか?もちろん行ってほしいわけじゃない。黙って行くくらいなら、話してほしいってことだ。反省しているようだったから黙っていたが、魔物と戦いに行ったことは聞いている」

お父さんに聞かれる。

誰かから僕がスタンピードの対処をしにいった事を聞いていたようだ。


「僕は行かないよ。お姉ちゃんにも似たことを言われたけど、カッシュさんに死ぬかもしれないことに関わりたいなら、死ぬ覚悟をして家族に別れを告げてこいって言われてね。命を掛けてでも守りたい人のためならやるけど、もう無茶はしないって決めたよ」


「そうか。安心した。もし危険なことに首を突っ込まないといけない時は、一度立ち止まり頭を冷やすんだ。エルクもエレナも優しい子に育ってくれてお父さんは嬉しいが、2人とも自分のことが無頓着な時がある。自分を第一に考えてほしい」


「「うん」」


「アンジェちゃんはどうするの?王都に残るならこのままうちにいていいからね」

お母さんがアンジェに聞く。


「戦になれば今よりも食糧難になると思います。これ以上お世話になるわけにはいきません」


「食料ならたくさんあるから気にしなくていいよ」

不要な遠慮をしているアンジェに言う。


「嘘をつかなくてもいいわよ。ただでさえ冬で新しく収穫は出来ないのに、スタンピードに戦と、食料は無くなる一方よ。少ない食料を他所者の私がもらうわけにはいかないわ」

村で貧しい生活をしてきたからこそ、負い目を感じるのだろう。


「アイテムボックスにたくさん入ってるんだよ。冬になる前に買い込んだりしたやつだから、本当にたくさんあるんだ。信じられないなら後で見せるから、僕達に遠慮して出て行くって言ってるなら、その必要はないよ」

創造のスキルが急に使えなくなるか、僕の魔力が枯渇しない限り、食糧難で僕が困ることはない。


「本当に負担にならない?」


「ならないよ」


「アンジェちゃんのことは家族のように思っているのよ。だから、例え食料がなくてもそんな遠慮をしなくていいの」


「……ありがとうございます」


「後はエレナだけね。急いで決めなくていいからゆっくり考えて。じっくり考えて、それでも行くというなら止めないわ」


「うん」


お姉ちゃんが行く判断をしたなら、全力で応援してあげよう。

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