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side 神々②

わしは下界の様子を見て頭を抱える。

頭を抱えていたのは最近ずっとだが、あれは今までと比にはならない。


あの世界でも一二を争うダンジョンが暴走を始めた。


わしはハマトとノルンを呼び出す。


「今いい所なんだ。どうでもいい用件なら後にしてくれないか?」


「私も後にして欲しいわ」


「下界が緊急事態だ。呑気なことを言っている場合ではない」


「主神様も見てたのか。先に言っておくがあれは俺の仕業じゃないからな。元を正せばあの男を送ったからかも知れないが、事を起こしたのは元からあの世界にいる住人だ」


「このままだと少なくても世界の半分くらいは壊滅しそうだけど、主神様に何か考えがあるのかしら?」

ハマトもノルンも下界の様子を見ていたようだ。


「お前らも知っているだろう。下界に手を出す方法はわしら神にはない。だからこそあの男を転生させたのだろう。実際はお前らの企みで転生ではなく、封印してからの転移になっていたがな」


「天使兵にでもやらせたらどうだ?あいつらなら下界と天界を行き来出来るだろう?」


「馬鹿を言うな。魔物の始末は出来るだろうが、下界に天使が降り立つだけでも余波が大きすぎるのに、力を行使して戦いでもしたら、近くにいる者は間違いなく死ぬ。聖なる力であっても、地上の者には毒だ」


「それでもこのままだと誰も住めない星になるだろ?天使兵にやらせれば王国に住む者は死ぬだろうが、帝国に住む者の1割くらいは生き残るんじゃねえか?魔族と獣人族のほとんどは王国から離れて生活しているし、人族に比べれば耐性も高い。悪くはない選択だと俺は思うがな。今回の件は王国の自業自得だし、帝国が戦を仕掛けようとしたのもきっかけの一つになっている。俺は主神であるあんたの指示に従うから、決めてくれ」


「しばらく様子を見る。国王が龍斗の生み出した装備を使えば対抗出来る可能性はある」


「あのおっさんがそんな判断を出来るとは思えないが、魔物が王都を滅ぼしてから天使兵を送り出してもほとんど被害は変わらないだろう。様子を見るのもいいんじゃないか?」


「私も今回は主神様の判断を尊重することにするわ」


「天使兵に戦闘の準備をさせてくれ。わしの合図ですぐに下界に降りられるように待機だ」


「ああ」

ハマトが出て行く。


「ハマトはほとんど変わらないと言ったけど、私の見立てだとすぐに動けば1万人くらいの人が多く助かるわ。全体から見れば誤差かもしれないけど、遅くなればなるほど多くなるわよ。決断は迷わないで」

ノルンが忠告をして出て行く。


言われなくてもそんなことはわかっている。


少しして、ルインダンジョンから魔物が溢れ出す。

魔物は餌を求めて散らばり、殆どは王都へと侵攻を開始する。


王都に住む者が魔物に気付き、準備を開始する。

国王が龍斗の装備を使う様子は今の所ない。


勝てないと早々に判断し、騎士を中心に王都に住む者を逃す時間を稼ぐ為に、命を掛けて戦う部隊がつくられる。


命を掛ける覚悟があるのならば龍斗の剣を振るえ!

あれは持ち主と共に成長する剣だ。

持ち主がいなくなった今でも成長し続けている。

振った本人は反動に耐えられず粒子レベルで分解されるかもしれないが、龍であろうとも葬ることが出来るだろう。


わしの願いが届くことはなく、国王は龍斗の装備を使う決断はしなかった。

王国の者が助かる可能性はこれだけだったが、その可能性が潰えたなら、天使兵を差し向けるしかないか……。


そう考えたが、最前線で魔物の群れの侵攻が止められているのを見て、もう少し様子を見ることにする。


あれは、エルクか。

憎き悪魔もいるようだが、あの2人が中心となって魔物を倒している。


もしかしたら、なんとかしてくれるのか?

そんな甘い考えを抱いてしまったが、悪魔はエルクを置いて逃げていった。

しかし、悪魔を責めることは出来ない。

自分の力量を把握出来ているということだ。


エルクはスカーレットドラゴンの群れに囲まれ、ホーリードラゴンに睨まれている。


エルクは耐えていたが、ホーリードラゴンのブレスを受け死にかける。

今度こそここまでだ。


『ハマト、天使兵を出撃させる』

わしはハマトに思念を飛ばす。


『待て!ガキが何かしようとしている』

ハマトからの返答を受け、エルクの様子を見ると、何かを口にしていた。


エルクの体がビクンビクンと大きく跳ね続け、エルクの力が急激に上昇した。


またあやつが表に出て来たようだ。

以前とは比べ物にならない力を感じる。

既にわしらの領域に足を踏みこんでいるな。


「なっ……」

あやつはホーリードラゴンが放っていたブレスを跳ね返した。

跳ね返ったブレスに巻き込まれ、スカーレットドラゴンの数匹が死滅する。


あやつは門のそばに転がる騎士と冒険者・衛兵を蘇生させる。

原型を留めていない者までもが、何事もなかったかのように目を覚ます。

すぐに気を失ったのは、あやつが何かしたからか……?


以前にも使っていたが、あやつは死をも操る力を得ている。

確かに創造のスキルを使えば可能ではあるが、普通は魔力があれば発動出来るというものではない。

それ程に熟練されているのか、それとも、熟練度など無視できる程に魔力があるのか……。


あやつが手を空にかざすと世界は光を失ったかのように暗くなる。

そして、世界に光が戻った時、あれだけいた魔物が姿を消していた。

いや、魔物だけではない。

地面までもがまるで初めからそこに谷があったかのように消え失せていた。


「とりあえず、天使兵共は待機させたままにしているがどうする?」

ハマトがやって来て言うが、どうしたものか。


「ダンジョンは完全に消滅したのだから、天使兵はもう必要ないだろう。アレをどう思う?」


「強さだけなら天使兵と同等だな。ただ、創造のスキルを与えてしまっているからな。やろうと思えばなんでも出来るだろう。なんであれ、あいつのおかげで世界が救われて良かったんじゃねえか」


「結果的にはな。あやつが封印されている時に何をしているのかは確認できないのか?」


「無理だな。封印したばかりならなんとでもなったが、今あの封印に手を加えればその隙に逃げられる」


「そうか。悪魔もおかしな動きをしている。何か手を打たねばならないな」


「あいつはあんたに恨みを持っているだろう?天界への門を開けてやれば乗り込んでくるんじゃないか?そうすればなんとでもなるだろう?」


「試してみるか」

わしは、天界と下界を繋ぐ門の鍵を開錠する。


あやつはこちらに気付くが、乗り込んでくる気配はない。

少し待っていると何かを投げ込んできた。


「ホーリードラゴンの首だな」


「なぜこんな物を投げ込んできた?」


「あんたもこうしてやるってことじゃないのか?しかし、乗り込んで来ないとは案外冷静だな」


「あやつに恨まれるべきはわしではなくお主のはずなんだがな」

わしは悪態をつきつつ、門を閉じる。

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