格上
南門にロック君も来ていた。
「ロック君も来てたんだね。王都が滅ぶくらいにヤバいみたいだよ。逃げなくていいの?」
「短い間だったがこの国には世話になったからな。腕試しついでにやれる事はやっとこうかなと。逃げるのは得意だから死ぬつもりはさらさらないぜ。やれる事をやったら逃げさせてもらう。エルクこそ逃げなくていいのか?」
「手に負えなさそうなら逃げるよ。僕も逃げるのは得意だからね」
どうしようもなくなったら、隠密を掛けて、防護魔法を随時掛け直しながらひたすら逃げるとしよう。
「だとしても、なんで逃げなかったんだ?」
「お母さん達も引っ越して来てやっと一緒に暮らせるようになったっていうのに、壊されたらまた離れ離れになるかもしれない。それに、王都にはたくさん思い出が出来たからね。僕の力で守れるかもしれないなら守りたいよ」
「そうか。これをやるよ。俺の家に代々伝わる秘薬だ」
ロック君から真っ白い丸薬を受け取る。
「どんな効果があるの?」
「一時的に身体能力が何倍にもなる。運動能力に限らず、魔力もだ」
「それはすごいね。それじゃあ頂くよ」
「待て!」
飲もうとしたら止められる。
「その秘薬は強力な代わりに代償が大きいんだ。本来出せない力を使う代わりに、その反動が秘薬の効果が切れた時に一気に襲ってくる。どうしても今以上の力が必要だと思ったら使うといい」
なんの代償もなく力を得る事は出来ないってことか。
「わかったよ。ありがとう」
「お互い死なないように頑張ろうぜ!」
「うん」
ロック君とは一旦別れて、僕は門を潜り王都の外に出る。
「おい!何してる!戻れ!」
騎士に止まるように言われ、捕まえようとしてくるけど、僕は避けて最前線まで行く。
「子供!?何してる!くそっ」
オーガと戦っていた人が僕に気付くが、オーガに邪魔されて僕の方に来ることが出来ず悪態をついている。
「僕は大丈夫です」
僕は答えながら地面に手をつき、土魔法を発動して、目の前に堀を作る。
結構な魔物が堀の下に落ちていった。
これで大分時間が稼げるだろう。
「坊主がやったのか?」
先程の騎士に聞かれる。
「うん。僕も戦います」
堀を作ったことで、地上の魔物の侵攻は大分緩やかになった。
次は飛んでいる魔物に狙いを定めて、土魔法で石礫を飛ばしていく。
「君が報告にあった子供だな。君の実力は確かなものだが、もう十分だ。下がりなさい」
順調に魔物の処理をしていると、高そうな鎧を着た騎士に言われる。
指揮官だろうか。
「まだ戦えます」
「ここは子供の来るところではない。君のおかげで多くの人が救われただろう。後は我々に任せて逃げるんだ」
「奥に見えるドラゴンを倒せますか?」
「倒す必要はない。我々の任務は国民が逃げる時間を稼ぐことだ」
「倒さないと王都が壊滅します。それにここにいる人も死んでしまいます」
「建物はまた建てれば済むことだ。それと、引き際は弁えている。心配は無用だ」
「冒険者の方は死を覚悟しているとギルドで聞きました。騎士は冒険者を置いて逃げるんですか?」
「……ああ、そうだ。我々は自らの命はかけていない。だから君も命をかける必要はない」
この人は嘘をついている。
「僕も死ぬつもりはありません。危なくなったら逃げるので大丈夫です。お気持ちだけ頂きましたので、放っておいて下さい。邪魔はしません」
「ま、待て!」
僕は騎士の静止を無視して堀の向こうへと飛んでいく。
堀によって進行を妨げられた魔物がごった返していたので、まずは場所を確保する為に、地面を円柱形に10m程盛り上げて、その上に着地する。
地面と一緒に上がって来た魔物に石礫を当てて落とし、ここを自分の戦うフィールドとする。
目線が高くなったので、空を飛んでいる魔物も相手をしやすくなった。
少し戦っていると、レッドドラゴンの群れが近くまでやってきた。
僕は先端を尖らせた石柱を放ち、処理していく。
騎士や冒険者から歓声が上がるが、既に重傷者が出始めている。
定期的に身体強化とシールドを掛けてはいるけど、追いついていないのが現状だ。
門の先にも一部の魔物の侵入を許してしまっている。
レッドドラゴンを倒しきったけど、今度は白いドラゴンが迫ってきている。
白いドラゴンだけではない。
三つ首のケルベロスみたいな魔物も迫って来ており、その奥には体長20mくらいの巨体なトロールのような魔物が見える。
倒しても倒しても、数が減っている様子はなく、無限にダンジョンから湧き出ているのではないか……。
倒し続けていると、1匹の赤いドラゴンの姿が見える。
竜ではなく、龍だ。
蛇のように長い姿をした赤い龍は、僕達を無視して王都の上空に入ろうとする。
あんなのが暴れたら王都が滅茶苦茶になってしまう。
戦っている人が退避を始めないということは、まだ避難は終わっていないということだ。
なんとか止めないと。
僕は石柱を赤い龍に打ち込むが、血を垂らすだけで余りダメージがあるようには見えない。
赤い龍はこちらをジロリと見た後、炎のブレスを吐く。
ヤバいと思い、周囲に結界を張り、なんとか防ぐ。
ここだと他の騎士達を巻き込んでしまうので、僕は赤い龍に攻撃を続けて注意を引きつけながら門からさらに離れる。
「苦戦してるな」
ロック君が僕の横に飛んでくる。
「ちょっと、あれはマズいね。攻撃範囲が広すぎるし、あんまり僕の攻撃が通ってないよ」
「それなら、アイツは一緒にやるか。俺が弱体化させて地に落とすからトドメを頼む」
「う、うん。わかった」
ロック君はどうやってあれを地に落とすのだろうか。
そう思っていたら赤い龍の動きが急に鈍くなった。
これが弱体化というやつだろうか。
ドン!!!
その後、飛び方を忘れたかのように赤い龍が降って来た。
呻き苦しむ赤い龍の首?辺りを狙って、石柱をひたすらに打ち込んでいく。
僕達を殺そうとずっと暴れていたが、遂に動かなくなる。
「そいつが暴れたことで周辺の魔物も巻き込まれたみたいだな」
「そうだね。結構危なかったよ」
「しかし、アレは俺には無理だな。死にたくないから逃げさせてもらう。エルクはどうするんだ?」
ロック君が指さす方には先程と同じ赤い龍が群れている。
白い龍も混じっているし、世界の終わりにしか思えない。
「王都から逃げても、この世界が滅びるんじゃない?逃れられる場所なんてあるのかな」
「何日かすれば魔王が倒してくれるかもな。それまで逃げ切れれば助かるかもしれない。しかし、この辺りは全部更地になりそうだ」
「魔王ならあれだけの魔物を倒せるの?」
「さあな。だが、倒せるなら魔王くらいだろう。一緒に逃げないか?少なくても今逃げれば大切な人くらいは守れるかもしれないぞ」
「ロック君は先に逃げて。僕はもう少し足掻いてみる」
「……間違いなく死ぬぞ?」
ロック君に真剣な目で言われる。
「死ぬ前には逃げるよ。ロック君が僕の頼みを聞いてくれるなら、ラクネが怪我をした人を治そうとまだ逃げずにいるかもしれないから、見つけたら無理矢理にでも逃げるように言ってもらえないかな?」
「……ああ。任せとけ」
ロック君は飛んでいった。
『そっちはどんな感じ?』
僕はルフにみんながちゃんと逃げれたか確認する。
『ラクネ様のご家族も一緒に避難所まで逃げて来ましたが、エレナ様とリーナ様とは合流出来ませんでした。強大な気配を感じましたので、さらに北へと移動する予定です』
お姉ちゃんも逃げずに何かしているのだろうか。
『わかった。王都はもうダメかもしれない。僕の手には負えなさそうな魔物がたくさん見えるよ。死ぬ前には逃げるから、出来るだけ遠くに逃げて』
『かしこまりました。お気をつけ下さい』
果たして乗り切る方法は何かあるのだろうか……
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ご愛読頂いている皆さんに一つアンケートを取らせてください。
4作品も完結させずに執筆中としている作者に原因があるのですが、全てをハイペースで執筆することは、今の生活では難しいと痛感しています。
最新話のPVの数字を見て、現在は『クラス転移したひきこもり・・・』の作品を多めに投稿出来るように、書き溜めるストックを調整していますが、投稿ペースが早い作品がPVが多くなる傾向でもあるので、実際にどの作品を皆さんがもっと読みたいと思っているのかを知りたいです。
全体の執筆ペースを上げることはなかなか難しいですが、「この作品の投稿ペースをあげてくれ!」という要望が多い作品を多く投稿したいと思っています。
①『クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される』
②『イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で最強に・・・』
③『クラス転移したひきこもり、僕だけシステムがゲームと同じなんですが・・・ログアウトしたら地球に帰れるみたいです』
④『天職が『盗賊』という理由で追放されました。盗みを極めし男はやがて魔王と呼ばれる』
⑤その他(新作が読みたい。投稿ペースを揃えて欲しいなど)
数字だけで結構ですので、コメントで教えて下さい。
作者のモチベーションにも繋がりますのでよろしくお願いします。
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