表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

117/171

side 俺

ムカつく神に強奪を使った俺は、気がつくと薄暗いだだっ広い空間にいた。


目の前には投射機で映されたような大きなモニターが浮かんでいる。

モニターには知らない女が映し出されていた。


「おはよう…ママ、お腹すいた…」

「エルクちゃん、ごめんね。ご飯少なくて」


どこからともなく音も聞こえて来る。

今はエルクという子供とモニターに映し出されている母親らしい女が話しているようだ。


モニターを見ていて俺は気づいた。

映し出されている映像はエルクという子供の視点だ。

聞こえている音もエルクが聞いている音がそのまま垂れ流しにされていると思われる。


俺をこんな薄暗い空間に閉じ込め、こんなものを見せて、あの野郎は何がしたいんだ?


少しして今度は小さな女の子がモニターに映し出される。


この子はエルクの姉のようだ。

姉とエルクは外に散歩に行く。


映された映像を見る限りだと、ここはかなりの田舎らしい。


エルクは自分のスキルを確認したいみたいだが、この村には教会がないから確認できないようだ。


そういえば俺も神に強奪を使ったんだから、何かスキルを奪い取っているかもしれない。

俺も確認したいな。


他にやることもないのでモニターを見続けていると、エルクの食事の時間になったらしい。

見ただけで質素なのがわかる。


エルクが明らかに子供の成長には足りていない食事を食べ終わった後、何故か俺の前にもさっきエルクが食べていた食事が現れた。


いやいやいや、どうなってるんだよ。


腹は減っているので食べることにするが、見てて思った通り美味しくない。


その後、エルクが寝た後はモニターが真っ暗になって小さい音が微かに聞こえるだけになった。


他にやることもないので俺も寝ることにする。


薄暗い空間に閉じ込められてから数日が経ち、いくつかわかったことがある。


まず、このエルクという少年は自分のことを俺だと思っているようだ。

俺はここにいるので、この少年は俺ではないはずだが、そうとしか思えない。

少なくても俺の記憶を持っている。

エルクはたまに独り言で、あのムカつく神に対して恨み事を呟いている。

今の生活は確実に辛く、それがあの神に転生させられたのが原因と思っているようなので、仕方のないことだ。

俺もこんなところに閉じ込めたあのクソ野郎を恨んでいる。


それから、エルクと会話したりすることは出来ないが、俺の意思をエルクに反映させられることがわかった。


例えば、エルクに後ろを向くように俺が念じれば、エルクは後ろを振り向く。

散歩している時、別れ道でいつもとは違い左に曲がれ!と念じれば左に曲がった。


ただ、主導権はあくまでエルクにあるようで、後ろを向けと念じても、エルクは不意に後ろが気になった感じに振り向くだけだ。そのまま後ろを向き続けろと念じても、後ろに何もないことがわかれば俺の意思は無視されて前を向いてしまう。

別れ道でもそうだ。左の道に行ってみようかなと思わせることが出来るくらいで、エルクが右に行くと決めれば右の道へと歩いていく。


選択肢を与えるくらいで強制力はないようだ。


さらに時は流れたある日、村に神父が来た。

エルクは待ち望んだとばかりに神父に会いに行った。


神からスキルを強奪したのは俺であって、エルクではないはずだ。

エルクにスキルはあるのだろうか?


そう思っていたが、水晶で鑑定した結果[創造]という明らかにヤバそうなスキルが表示された。


俺はエルクに本当のスキルを秘匿するように念を飛ばす。

今の俺はエルクと一心同体のようなものだ。エルクが面倒ごとに巻き込まれるのは勘弁願いたい。


エルクは俺が念を飛ばしたからか、それとも自分の意思かわからないが創造のスキルを神父には教えなかった。

ナイスだ。


エルクは創造スキルを獲得していたらしい。

エルクのスキルは鑑定出来たが、果たして俺はなんのスキルを神から強奪したんだ?確認するにはどうしたらいいのか?


そんなことを考えている間にエルクが家族に創造スキルの事をバラしやがった。

他の人には漏らさないように言っているのでまだマシだが、もっと慎重に行動してほしい。


その日、エルクはスキルを使わずに寝た。

エルクが寝ている間に、俺のスキルを確認する方法がないか考えていたが、俺のスキルが何かすぐにわかった。

俺のスキルも創造だった。


俺のスキルが創造なのか、それともエルクが創造スキルを獲得しているから俺も使えるのかは知らないが、これで色々と出来そうだ。


スキルを発動すると目の前にボードが現れて、パソコンの初期設定みたいなことをやらされた。

俺は自分の使いやすいようにボードの設定をしていく。

このボードで自分の魔力も確認出来るようなので、端の方に表示させておく。


後は創りたいものの必要魔力も表示するようにしておくか。毎回詳細を確認しにいくのは面倒だよな。


設定が終わったので何か創ってみることにする。

俺の魔力は1しかないようなので、1で創れる食べ物を探す。

ミニトマトが必要魔力1だったので創ることにした。


創ったはずなのに、ミニトマトは現れない。

しかし魔力はちゃんと0になっている。


意味がわからないが、魔力はなくなり、体に力が入らず動けないので、諦めて寝ることにした。


翌日、エルクが創造スキルを使う。

初期設定はなく、俺が設定した状態のボードが現れていた。


『水魔法の創造申請が出ています』


エルクがボードを操作していると、機械音のような声が聞こえ、目の前に勝手に創造スキルのボードが現れた。


ボードには水魔法の創造を許可するか表示が出ている。

俺は許可する。


するとエルクの方のボードに水魔法の表示が現れて、必要魔力も表示された。


俺が許可しないとエルクはスキルを創れないのか?


エルクが水魔法を創ろうと魔力を使うが、俺の魔力は減っていなかった。

エルクと俺の魔力は別のようだ。

エルクは魔力がなくなったのに、さらに魔力を注ごうとして気絶した。


俺の魔力も回復していたので、もう一度ミニトマトを創ろうとしてみる。

必要魔力の表示は1のままなので、魔力は昨日と同じく足りるはずだ。

しかし昨日同様にミニトマトは現れない。

だけど、昨日と違い動けなくはならなかった。


食べ物が出てこないことにイラつきつつも、今回は動ける要因を探す。

ミニトマトを創るのに必要な魔力が0.5になっていた。

表示は整数にしていたのでさっきは気づかなかった。


もう一度創ってみたけど当然のように俺の魔力が減るだけだった。


この空間には何も創れないのか、それとも食べ物は創れないのか?


エルクが目覚めた後に、魔力量の検証をしており、気絶するまで魔力を注いだ方が魔力量が増えることがわかった。


なので俺もエルク同様、気絶するまで魔力を使うことにした。

ミニトマトは創っても意味が無さそうなので、今は光魔法を創っている。

この薄暗い空間を明るくしたい。


エルクが目覚めた後、また水魔法に魔力を注ごうとしていたので、俺は食い物を創れ!と念を飛ばす。


『米の創造申請が出ています』

エルクは米を創ろうとしているようだ。俺はすぐに許可を出す。


『牛肉の創造申請が出ています』

米は止めて牛肉を創ることにしたのか?食い物ならとりあえずなんでもいいので許可を出す。


その後も申請が出るけど、創り始めない。何を創るか考えているようだ。

俺が許可を出すまでは表示がされないから、何度も申請が来るのは仕方ないか。


エルクは迷った結果、ジャガイモを創ることにしたようだ。


ジャガイモは次の日になってやっと完成した。

エルクが創った場合はちゃんと現れるようだ。


俺が創れないのは不服だが、エルクが食べたら俺のところにもちゃんと現れたので良しとしよう。


それからしばらく経ち、創造スキルについてわかったことがある。


まず1つ目だが、俺は食べ物以外なら問題なく創れるようだ。

多分この空間には、エルクが食した食べ物以外は存在出来ないのだと思われる。

光魔法はちゃんと習得出来てこの空間は明るくなったし、ソファやベッド、テーブルも創ることが出来た。

雷魔法で電気を出して、創った家電も使うことが出来る。

想像も出来ないものは創れないけど、基本的に創れないものはなさそうだ。

必要性はなく、必要魔力も桁外れに多いので創ってはいないが、強奪のスキルさえも創ることが出来そうだ。


しかし、エルクは俺が許可を出さない限りは創ることが出来ない。

エルクは鑑定のスキルを創りたかったらしいが、俺が許可を出さなかった。

何度も申請が来ていたが、全て拒否したら創るのを諦めた。


エルクが鑑定を獲得して、エルク自身を鑑定したら俺の存在に気づくかもしれない。

エルクが俺の存在に気づいた時に、どう動くかがわからない現状では、俺の存在は隠した方がいいと結論付けた結果だ。


そして2つ目、エルクが創造のスキルを使うと俺の魔力量も増えている。


エルクの魔力量は俺が創造を使っても増えていないので、エルクに比べて俺の魔力はかなり多くなっている。

理由はわからないが、創造スキルの主導権が俺にあるのが要因かもしれない。


まあ、多くなったからといって、この空間で出来ることなんて限られているのであまり意味はないな。


なんとかしてここから抜け出したいが、どうしたものか……


少しでも面白いと思って頂けましたらぜひ下部より★の評価をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ