必要経費
この内容では冒険者活動として学院を休むことは出来ないので、一旦依頼のことは忘れて訓練と勉学に励み、翌週にまた屋敷に集まった。
先週に引き続き、仕分けをしなければいけない。
大物は終わっているので、小物の選別になる。
小物であれば買い取りに出すのも、そこまで手間では無いので、少しでも価値があるものは買い取りに出す予定だ。
やっと利益が出そうである。
物の価値がわからない僕に仕分けは出来ないので、あまりやる事がない。
ある程度仕分けが終わったら、ゴミと買い取りに出す物を分けて馬車に詰め込むだけだ。
スキル書を探すことは出来るんだけど、それは片付けが終わってからみんなでやる事になっているので、抜け駆け厳禁である。
「どう?何か良い物はあった?」
僕は3人に聞く
「エルクよりはってだけで、私達も物の価値に詳しいわけではないから絶対ではないけど、良さそうな物はないわね。一応価値がありそうなものは分けてはいるから、今の所は、気づかずに紛れ込んでる事を期待するしかないわ」
ローザが答える。
やっぱりそんなに甘くは無いようだ。
買取額が0ということはないだろうけど、このままではタダ働きと変わらない。
お金に困っているわけでは無いけど、少なからず頑張った対価は欲しいものだ。
それからしばらく続けて、なんとか仕分けまで終わらせることが出来た。
最後はみんなで仲良く馬車に詰め込んで、今日は終わりにする。
翌日は馬車に詰め込んだ物を売りにいく所から始める。
これを買い取ってもらって、ゴミを捨てて、掃除をしたら依頼の内容は終わりである。
後は気が済むまでスキル書を探して任務完了だ。
僕達は買い取り屋に仕分けた物を持ち込む。
本当は物によって売る店を選んだ方が高く売れる可能性はあるけど、正直いって買い取りをお願いする物にどれだけの価値があるのかわかっていない。
あまり価値が無いと思われるので、分けて持っていくだけ手間が増すだけと判断して、なんでも買い取ってくれる所に持っていく事にした。所謂よろず屋である。
全体的に買取額が安くはなるけど、冒険者ギルドで教えてもらった店なので、騙される可能性は限りなく低いと思う。
なので、僕達が気づいていないだけで高いものが隠れていれば教えてくれると思う。
まぁ、国の職員も見落として、買い取り屋の主人も気付かない程にマイナーなお宝が隠れているなら、それは仕方ない。諦めよう。そもそも僕達も気づいていないのでショックは受けない。
「買い取りをお願い出来るかしら」
ローザが店主と話をする。
「かしこまりました。品物はどちらになりますでしょうか?」
「表の馬車に乗せてある物をお願いします」
店主が店を出て、馬車を見に行き戻ってくる
「そうですね、半日程お時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
「わかりました。では夕方頃にまた伺います」
余裕をみて、帰る時に寄る感じだ。
「かしこまりました」
僕達は屋敷に戻り、今度はゴミを乗せた馬車を処理場に持っていく。
「ゴミはどこに捨てればいいのかしら?」
ローザが処理場にいたおじさんに尋ねる
「処理場ははじめてか?それならまずはあそこの建物にいる人に言えば、やり方を教えてくれるよ」
「ありがとうございます」
教えてもらった建物に入り、受付っぽい感じのところにいた職員に声を掛ける。
「ゴミを捨てに来たのだけれど、初めてなので教えてもらえるかしら?」
「あ、はい。えーと、処理される物はどちらになりますか?」
「あそこにある馬車に乗っている物全てです」
「少々お待ち下さい」
職員は馬車を見に行き、戻ってくる
「そうですね、あの量であれば廃棄料として銀貨10枚掛かります。ご自身で捨てられる場合は、この建物を出て右に行ってもらったところにいる職員の指示に従って捨ててください。追加で銀貨2枚頂ければ、こちらで処理することも可能です。どうなされますか?」
「相談するので少しお時間を下さい」
ローザがそう言ってから、一度建物の外に出る。
「ゴミを捨てるのにお金が掛かるのね。知らなかったわ」
ローザはお金が掛かるのを知らなかったようだ。僕も知らなかったけど、前世では不法投棄が問題になっていたくらいだから、処理にお金が掛かると言われればそうなんだなと思うくらいである。
「私も知らなかったけど、捨てないわけにはいけないから払うしかないわよね」
フレイの言う通り、持って帰るわけにはいかない。
「出費が増えるけど、処理も任せてもいいかな?」
ローザは捨てるのも、職員に任せたいようだ。
「私も賛成よ。今回の依頼の目的はここじゃないからね」
「任せる」
フレイは賛成のようだ。アメリはいつも通りだね。
「僕もそれでいいよ」
僕も正直面倒なので、任せれるものは任せてしまいたい。
「それじゃあ決まりね。とりあえず私が払っておくわ。売った物の分からもらうことにするからね」
買取額が銀貨12枚を下回らない事に期待しよう。
「うん」
処理を職員に任せる。馬車ごと預けて、後から取りにこればいいと言われたので、夕方に取りに来ると伝えて、歩いて屋敷に戻る。
「さて、屋敷の中は空っぽになったから後は掃除だけね。その前にお昼にしましょう」
僕達は浄化魔法を掛けてから、カフェに入る。
先週から昼はいつもここのカフェなので、これで4回目である。
週末のお昼頃な事もあり、店には行列が出来ていた。
昨日までは少し時間がズレていたので、混んではいたけど、並んではなかったのにな。
少し残念に思っていると店員に声を掛けられて、行列とは関係なく中に通された。
並んでいる人に少し悪い気がしつつも席に着く。
いつものテラス席だ。
「僕達が来るかもしれないから、この席を空けてたのかな?」
僕はローザに聞く
「そうだと思うけど、日頃から空けてるんじゃないかしら。私達みたいなのがいつ来ても待たせないようにね」
ここはVIP席だったようだ。
「そうなんだね」
そうなると僕達が早く食べて席を空けたところで、待ってる人が座れるわけではないようだ。
そう言いつつも、昨日よりも気持ち早めに店を出た。
屋敷に戻って掃除を始める。
それぞれ部屋を分担して、終わったら次の部屋へと順番にやっていこうということになった。
そして数分後……
「エルク、どうしたんだ?何か用か?」
アメリに聞かれる
「僕の担当の所から順番にキレイにしてたんだよ。それで次はこの部屋だよ」
僕は浄化魔法をつかってキレイにする。
「終わったよ」
「ああ、助かった。そういえばエルクはその魔法が使えたんだったな。忘れてたよ」
アメリは戸惑いながらも答えた。
さらに数分後にはローザに同じ反応をされて、最後にフレイのところに行く。
「やっぱりこうなったわね。結局エルクがやる事になると思ってたわ」
フレイも同じ反応をすると思ったけど、フレイはこうなると予想がついていたようだ。
2人にも別荘で霊媒師の祠を浄化魔法でキレイにしたのは見てたと思うけど、当事者だった事もあって、フレイは2人に比べて浄化魔法への印象が強いのかな?
ローザとアメリは出来るのは知っていても、使えるタイミングだと気づかなかったのに。
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