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守護者の乙女  作者: 胡暖
第一章

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6.ラーシュ2

「まずはお互いの事を知ることから始めよう!」

「…俺は別に知りたくない」


 エヴァの言葉にふいっと顔を背けてそう言った。

 ラーシュはエヴァが、側にいることは認めたが、馴れ合うつもりはない。

 しかし、エヴァはそんなラーシュの態度には微塵も怯まない。気にせず会話を続けてくる。


「まぁ、そう言わず。ラーシュは今いくつ?」

「…………12歳」

「あ、3つ年上なんだね。じゃぁ、公の場では兄上って呼ばないと」


 エヴァがそう言うと、ラーシュにひどく憮然とした顔で見られた。


「お前のしでかすことの責任なんか取れないぞ」

「まだ、わ…僕何もしてないよね?」


 どうだかな、と視線をそらされる。


「えー。……じゃぁ次。ラーシュの本当のお母さんはどんな人?」

「………お前はまた…!」


 そう言って、エヴァを睨み付ける。しかし、すぐ諦めたようにため息を吐いた。人を貶める気はなさそうだし、使用人や他の人間にあれこれ脚色した噂話を聞かされても困る、と思い直したのだ。


「…知らない。俺を産んですぐ亡くなったから。お前は?」


 人の事を聞くのだ、自分の事を聞かれたらどう思うのか、エヴァが孤児だと分かっていて聞き返す。


「同じだよ。僕を産む時の産褥の熱で亡くなったんだって。だからどんな人か知らないんだ」

「…」


 あっけらかんと返されて、ラーシュは思わず黙り込む。

 未だ、家族との関係に含みを持っている自分が、駄々をこねる子供のようではないかと、そう感じられて。自分とこいつの境遇は違うと思いながらも、あっけらかんと割りきれば、もう少し楽だったのだろうか。


「お前は、苦しかったり、悲しかったりしないのか。その、親がいないことで」


 ラーシュの言葉に、エヴァはパチリと瞬き、そして破顔する。


「だから、ここにいるんだよ。本当の家族って、どう言うものだろうと思ってさ。ラーシュは、この家でどんなことが苦しかった?悲しかった?」

「…物心ついた頃、なぜ母上が自分にだけ話しかけてくれたり、笑いかけてくれたりしないのか分からなかった。ある時、ルーカスから妾の子と言われ、それが悪いのかと泣いて乳母に聞いたが…」


 そこまで言って、ハッとしたように言葉を止める。ピシリと、音を立てて腕輪が軋む。


 ――――何を言っているのだろう、自分は。

 感情を揺らすな。強すぎる力は自分では制御できない。


「…思ってたんだけど、その腕輪って何?魔道具?」

「気にするな。そんなものだ」


 エヴァの質問に曖昧に返す。


「ふーん、まぁ、自分だけ異質な存在に感じる辛さは、僕も何となく分かるよ」


 エヴァはそこで一度言葉を区切って、にこりと笑う。


「僕はさ、家族だけじゃなく、同世代の友達もいないんだよね。だから、こうしてラーシュと過ごせるのすごく嬉しいんだ!」


 話題が逸れたことにほっとしながらも、ラーシュは悪態をつく。


「別に友達じゃない」

「えー」

「………それに、城での茶会に参加すれば、嫌というほどいるぞ、同世代がな」


 実は、エヴァと同じく友達がいないラーシュは、そ知らぬふりをして答える。


「お城での茶会?」

「あぁ、王女の婚約者探しらしい。次は2ヶ月後にあるはずだ」


 現王に王女は3人いる。どの王女も年頃ながら婚約者はおらず、有力貴族を集めての茶会は、これまでに幾度か開催されていた。

 次の茶会の主催者は、第一夫人の王女だったはずだ。


 ――――本来であれば、第一夫人から産まれた娘は、神族に嫁ぐはずだが…王は野心家だからな。


「僕も行くの?」

「…多分な」


 頷きながらも、王族にもこの態度で接するのではないかと、ラーシュはこめかみを押さえる。

 一方、のんきなエヴァは、王都に来た時、その美しさに見惚れた城に行けると、嬉しそうだ。実は、中がどんな風なのかと気になっていたのだ。


「楽しみだな」



 ◆



 そんな話を、昨日ラーシュとしていたはずだったのに。

 エヴァは次の日、ルーカスと登城していた。


「本来なら王族への挨拶が先だけどな。まぁ、事前の申請も必要だし、城の中には入るつもりないし、今回は特別ってことだな!」


 ガタゴトと馬車に揺られながら、あはは、と豪快にルーカスは笑う。

 エヴァは不思議そうにルーカスを見て、


「城に来るのは二ヶ月後かと思ってた」

「何でだ?あぁ、王女様のお茶会か!そうだな、父上もその頃にはこちらに戻られるだろうし、王へ謁見もあるだろうな」

「王様に?何で?」

「新しく貴族になったものは、必ず王への挨拶が必要だ。子どもなら5歳。養子なら、縁組みしてすぐ場を設けるな」

「そうなんだ、じゃぁ今日は何のために来たの?」

「エディの力を試したい。どんな魔獣でも、言うことを聞くのか、それはどの程度強制力があるのか」

「それで、何で城に?」

「城の中に騎士団の魔獣を飼っている騎獣舎があるからさ」


 いたずらっぽく笑ってエディの方を見る。


「マルガレーテのようなスレイプニルだけが、騎士団の騎獣じゃない。エディはあまりたくさんの魔獣を見たことないんだろ?ビックリするぞ!」


 案内されたのは演習場のような広い土地とセットになった、騎獣舎だった。作りは、厩と似ているが、大きさが厩の比ではなかった。中から、色々な獣の声がする。演習場では、騎士が騎獣に騎乗し訓練を行っている様子が見える。

 エヴァは目を輝かせた。


「ようこそ、騎士団へ!」


 ルーカスはにこやかにそう言った。

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