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守護者の乙女  作者: 胡暖
三章

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60.僭越の代償

 蝶番が外れそうなほどの勢いでラーシュは部屋に飛び込んだ。

 ノックなどと言う作法は頭から飛んでいた。

 団長執務室の中にいた、ランバルド、ウルリク、そしてベルタがラーシュへと視線を向けた。


「エディが拐われたってどう言うことですか!?」


 お茶会の席でエヴァが、神殿に拐われていったことは、ベルタによって速やかに騎士団に伝えられた。

 ウルリクは、団長執務室へラーシュとルーカスを呼び出し、オールストレーム家へ連絡をいれた。

 もともと、敵地に乗り込むようなもの、とラーシュは気が気ではなく、訓練も疎かだった。ペアのルーカスに呆れられながら剣の模擬訓練をしていたところに、報せを受け、ルーカスに後始末を任せすっ飛んできたのだった。

 部屋に入るなり叫んだラーシュは、大人三人の前にある紙切れに気づき、ばっと手に取った。


 ----悪魔裁判開廷のお知らせ


 そこには、明後日にエヴァに対する悪魔裁判が行われる事が簡潔に記されていた。一番最悪の展開になっていることに、血の気が引いた。まだ黒幕も証拠も見つかっていないのだ。今裁判が開催されれば、なす統べなく、エディが嬲り殺しにされてしまう、そう考えたラーシュは、感情の高ぶりからぶるぶると手を震わせた。

 言葉にならないラーシュの様子にウルリクが言う。


「先程、神殿長の小飼の神兵が持ってきた。おそらく、あらかじめ準備していたんだろうな。根回しの良いことだ…」

「そ、そんな、呑気に話してる場合じゃ……!大体、王女は何してたんだ!みすみすエディが神殿に拐われるなんて!!」

「まぁ、落ち着け。直にユーハン殿がいらっしゃる。話しはそこからだ」


 激昂したラーシュに対し、ランバルドは、ラーシュの肩に手をおいてなだめる。しかし、気のすまないラーシュはベルタをキツくにらみ据えたままだった。

 ベルタは、普段通り悠然と佇んだまま、ゆっくり一礼した。


「お嬢様は次の手を見据えて動かれております」



 ◆




 アンナリーナはベルタを遣いにやった後、早々に自室を出た。

 国王()を訪ねる事も考えたが、心の内で却下した。何の見返りも無しに助けてくれるとも思えず、また、今回の父の思惑が読めない以上、上手い話の通し方が思い付かなかったからだ。


 ギリリ、とアンナリーナは唇を噛む。

 何か仕掛けてくるとは思っていたが、所詮サンドラとヴィオラのする事。嫌がらせの粋を出ないと高を括ったのが悪かった。

 まさか、大人側がサンドラとヴィオラにすり寄るとは思わなかったのだ。

 そして、王族(自分)がいる場であそこまで強硬な手段を取られるとも思っていなかった。


 ----読みが甘かった……!


 つくづく自分の甘さに反吐が出る。

 積極的に巻き込んだ立場ゆえに、彼女(エヴァ)の事を護らねばと思っていた筈なのに。


 最低限優雅に見えるように足早に廊下を進む。


 扉の前に立ち、深呼吸してノックした。

 侍女に招き入れられ、人払いがすむとアンナリーナは母にすがりついて涙を溢した。


「お母様、エディが…!エディが……!」


 あらあら、と言いながらベアトリスはアンナリーナの頭を優しく撫でてくれた。普段は、王族たれと自分を厳しく律しているアンナリーナだが、彼女もまたただの13歳の少女だった。


 呼吸が落ち着くと、彼女は母に先程の出来事を話した。

 ベアトリスは、頷きながらアンナリーナの話を聞いてくれた。


 そして、アンナリーナの話が終わると、ベアトリスはその少女めいた容貌に似つかわしくない真っ赤な唇を歪め、ゆらりと立ち上がった。普段は鷹揚に構えていることの多い母の本気の憤怒にアンナリーナは少々気圧された。

 ベアトリスは手に持った扇をもう片方の手に打ち付けながら楽し気に宣言した。


「これまでの悪口くらいなら、見逃してあげたものを。お痛が過ぎるわね。いいでしょう。彼女達が楯突いたものが何なのかとくと思い知らせてあげるわ」


 ベアトリスは公爵家同士の覇権争いには興味がない。だからこれまで、動向には注目しつつも、前に出て意見を言うことはしなかったのだ。アンナリーナに対しても、助言はすれど積極的に関与はしなかった。

 しかし、これが後宮内の話、ひいては自分の娘の立場が傷つけられているとなると、話は変わる。

 正妃の娘が侮られることがあってはいけないのだ。


 第一滅多に涙を見せることのない愛娘の心の叫びを受け止めない母親がいるだろうか?

 ベアトリスは、ニッコリ笑って侍女を呼ぶための紐を引いた。

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