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守護者の乙女  作者: 胡暖
三章

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57.行き止まり

すみません、前話の最後をすこし修正加筆しています。

 翌日は、捕えたオリヤン達の手先であろう人物の尋問があった。

 エヴァは、捕えられたのが、リントヴルムの時にオリヤンと一緒にいた者と同一人物かを確認するために、ランバルドに連れられ、王宮内にある地下牢を訪れていた。ウルリクと、ユーハンも一緒だったが、同行者はそれだけで、今回の事が他所に漏れないよう、団長が細心の注意を払っていることが感じられた。


 王宮の中でも居住区から遠い一角に、入り口はあった。

 きぃ、と軋む音を立てながら、扉が開く。

 王宮の完璧に手入れされた煌びやかな風景が扉一枚隔てただけで、こうまで変わるのか、とエヴァは思う。薄暗い地下牢へと続く通路は黴臭く、湿ったような臭いがしていた。

 ランバルドが1本の松明を持って先頭に立ち、4人で階段を下へと降りていく。

 降りきったところでもう一枚扉を開けると、沢山の牢の格子が見えた。

 一番扉に近い牢をランバルドが松明で照らす。

 牢の格子にかじりつくようにこちらを睨む眼と眼があった。


「エディ、こいつの顔に見覚えは?」


 静かなランバルドの声に、エヴァはこくりと一つだけ頷きを返す。間違いなく、あの採取の森で穴にエヴァを突き飛ばした人物だった。

 受けるように、ランバルドも頷くとウルリクに軽く合図する。

 ウルリクが腰から鍵の束を取り出し、牢を開けると、中の住人の眼が輝いた。

 しかし、それも一瞬----中に入ったウルリクによって、手を拘束されるまで、だった。

 全員で牢の一番奥の扉から外に出る。

 すこしだけ広いそこは尋問室だと言う。


「ジャック、オリヤンの指示でエディを襲ったのか?」


 壁に再び拘束した後、ランバルドが手先(ジャック)に声をかける。


「一体なんのことだか、わ、分かりません。どうして僕が拘束されるのですか?」


 ジャックがたどたどしく答えるが、エヴァは首を振る。


「彼は採取の森で僕を穴に突き飛ばしました。オリヤンには逆らえないと言っていました」


 エヴァの言葉に、ジャックは睨み付けるように前のめりになった。がしゃん、と手につけられた鎖が鳴る。突然ガラリと変わった雰囲気にエヴァは息を飲む。


「う、うるさい!!しゃべるな!この平民風情が!お前の言うことなど、誰が信用するか!俺には、……がっ!!!」


 不意に言葉が途切れたと思った瞬間、ジャックは口から大量の血を吐き、だらんと項垂れた。


「な………!」


 慌ててランバルドが近づき、その体を持ち上げる。横から、ウルリクがジャックの眼を開き、首筋に手を当てた。

 そして、緩く首を振る。


「……ダメだ。もう死んでいる」

「…毒か?」

「……分からないが、ジャックの意思で毒を呷ったようには見えなかった」

「俺もだ」


 ぼそぼそと、ランバルドとウルリクが話すすこし後ろで、エヴァは凍りついたように立ち尽くす。その肩を、そっとユーハンが支えてくれた。エヴァが見上げると、心配そうな瞳と目が合う。


 ◆


 すぐにバルトサールが呼び出された。


「うーーーん、詳しく解析しないと分からないけどこれかなぁ?」


 と、指差したのはジャックの手に嵌められた指輪だった。

 きらん、と良く研ぎ澄まされたナイフを取り出したバルトサールは、躊躇なくその指ごと、指輪を切り落とす。

 息を飲んだエヴァに、バルトサールはへらりと笑う。


「引っ張っても取れなかったからねー」


 そして、その指ごと指輪を持ち、エヴァとバルトサールは、魔道具試作棟まで戻ることとなった。残りの三人はこの場の事後処理を済ませた上で、結果が出る頃に来ると言う。


 自らの執務室に戻ったバルトサールは、何らかの魔方陣が書かれた紙の上に指を乗せた。

 力を込めて、魔法が発動すると、指からポロリと指輪が外れる。細く長い指で、その指輪をそっとつまんだバルトサールは、装飾のついたルーペで、じっくりと指輪を見る。


「ふむ」


 一つ頷くと、引き出しを開けまた、魔紙を1枚取り出した。

 再び指輪を乗せて、発動すると、光る文字が中に浮いた。

 バルトサールが、白紙の魔紙を光に当てると文字が吸い込まれるように魔紙に転写された。

 一部始終をじっと見ていたエヴァは、不謹慎にも美しい光景にほぅと息をつく。

 エヴァの様子にふふ、と笑ったバルトサールは、今しがたの行動について説明してくれた。


「これは魔道具の解析をする術式を組んだ魔紙なんだ。こんな風に、上に乗せて発動するとどんな魔道具なのかわかるんだよ」

「へぇー、で、その指輪はどんな魔道具だったんですか?」

「相手の口を封じる魔道具だね」


 さらりと言われた言葉にエヴァは絶句する。

 バルトサールは、魔紙の説明から目を離さずに独り言のように呟く。


「契約者はオリヤン……秘密を漏らした時に発動して、魔道具の所持者の命を奪う……秘密に関する認識設定が甘いな、これじゃ質問されて対象を頭に思い浮かべた時点で……」


 こりゃまずいね、とバルトサールはエヴァに向かって苦笑した。



 ◆



「つまり、あれか?これは、尋問すればもれなく死ぬってことか?」

「そういうことだね」


 あの後合流した、ランバルド達にバルトサールは、持ち帰った魔道具の性能を話した。憤るランバルドに、バルトサールは飄々と言葉を続ける。


「さらに悪いことに、契約者は恐らく死んだ三人。つまり、契約の解除もできない。……敵は用意周到だね。自分には絶対到達しないようにしている」

「ベルマン公爵が裏にいるのは確実なんだが…」

「証拠がないよね」


 ユーハンの言葉に、バルトサールは肩を竦めた。

 進みかけたと思ったのに、いきなりの手詰まりにエヴァは肩を落とした。

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