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守護者の乙女  作者: 胡暖
三章

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53.繋がる悪意

 

 報告のために謁見に向かったランバルドを待っていたのは、(マクシミリアン)だけではなかった。王の側に当然のように佇むベルマン公爵と神殿長(クリストフ)にため息を吐きたい気分になる。そして、当然のようにいないオールストレーム公爵にも。

 オールストレーム公爵は、いくら養子とはいえエディに愛が無さすぎではないか?と、同じ年頃の子を持つ親としてランバルドは密かに憤っていた。

 また、養い親から愛情を受けられない分、自分が守ってやらねばとも。ランバルドは一人幼くして入団したエヴァに、ひっそりと同情を寄せていた。


 ――――大体、あのような幼い子どもが悪魔だなんて。一体何が出来るというのだ。エディは、普通の子どもだ。ただ魔獣と心を通わせることが出来るだけの……。


「報告を聞こう」


 マクシミリアンから声をかけられ、ランバルドは表情を引き締めた。


「は。本日の、鴉・鼠の異常発生ですが……」

「あの異教徒がやったに決まっている!」


 ランバルドの報告を遮って、声を張り上げたのは神殿長のクリストフだった。


「ごみ漁りをする不浄の害獣を操るなど、悪魔らしい!あやつらは神聖な神殿も踏み荒らして行ったのだぞ!あぁ、忌々しい!!!」


 妄言甚だしいクリストフの言葉に気色ばんだ表情をして、ランバルドは改めてマクシミリアンを見据えて声を張り上げた。


「ご報告いたします。今回の騒動、エディ・オールストレームは全くの関わりがありません。騒動の最中、彼は眠っており、それを私は確認しております」

「ほう?都合よく寝ていたと?騒動は日中の事であったが?」


 マクシミリアンはゆったりと腰かけた玉座の上で、顎を撫でる。


「はい。連日の疲労からエディの顔色の悪さを心配した宮廷魔道具師長が、睡眠導入剤を処方したとの事です」

「そんな筈がない!きっと奴は寝ていても獣を操れるのだ!」


 クリストフはわめいたが、ランバルドは元より、マクシミリアンも相手にはしなかった。


「では、エディ・オールストレームが原因ではないとして、鼠・鴉の異常発生の原因は何だ?」

「バルトサールの報告では、恐らく今回も魔道具が使われたのではないかと……」

「は、都合の良いものだな。何でも魔道具だよりか?」


 鼻で笑ったマクシミリアンの言葉にランバルドは口をつぐむ。その問いの答えを持ち合わせていなかったからだ。


「……しかし、魔道具であれば、犯人は誰であっても可能です。騒動は、彼の意識が無い時に起きたこと。そうと知らぬものが、エディに罪を着せようと動いている可能性があります」


 静かに頭を下げるランバルドをつまらなさそうに見た後、マクシミリアンは手を振る。


「早急に原因の追求を。以上だ」

「は」


 ◆


 謁見の間を出て、クリストフはギリリと唇を噛み締めた。

 もともと、クリストフはエヴァの事を良く思っていなかった。


 ――――折角、力の無い王のお陰で神殿が正しく評価されているのだ。魔獣を操るなど、神のような力を持った人間を----しかも異教徒を、のさばらせておくわけにはいかないのだ。


 もともと王族だったクリストフは虹の橋を渡って神に相見えたことがある。神は魔獣を側に侍らすのだ。騎士団のように魔道具に操られた、意思の無い傀儡(魔獣)ではない。意思を持った魔獣を調伏し、意のままに操る。それは正しく人ならざる所業だった。

 そう、クリストフは、エヴァの能力を自身の優位を脅かす脅威だと考えていたのだ。そして、アンナリーナとの婚姻で、再び王家が力を持つことを恐れていた。


 大義名分を手に入れてからは、全力でエヴァの排除に動いている。それなのに、彼女を排除することはクリストフが思ったより難航していた。

 人目がなければ地団駄踏んでいたであろう彼に、後ろから声がかけられる。


「本日は残念でしたわね」


 ばっと振り返ったクリストフは、相好を崩した。


「これはこれは、サンドラ様。こんな夜更けにどうされました」

「沢山の鼠が部屋を這い回ったでしょう?清めが中々終わりませんの」


 現れたサンドラは頬に手を当てて、困ったわ、と首をかしげる。それに同意してクリストフは頷いた。

 だから、少しお話ししましょう?とサンドラは笑う。


「私見ましたの。本日、勇敢にも騎士団に乗り込んでいかれていたでしょう?どうしてエディ・オールストレームを捕縛しませんでしたの?」


 クリストフは、その時の事を思いだし、顔を歪めた。


「忌々しい。騎士団の連中の邪魔にあったのですよ」


 その言葉に、サンドラはわざとらしく目を見張り、口許に手をやる。


「まぁ、恐ろしい。神殿の取り決めに逆らおうなんて」

「全くです。信心の足りない連中ですよ」


 サンドラの同意に気を良くしたクリストフは、調子良くいかにエヴァが危険な存在で、早く捕縛するべきなのかを話す。

 イライラを隠しもしないクリストフに、サンドラはにいっと真っ赤な唇を吊り上げた。


「そうですか、それは大変ですね。では、私がお手伝いいたしますわ」



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