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守護者の乙女  作者: 胡暖
三章

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42.呼び出し

 王宮からの緊急の呼び出しに、アンディシュは舌打ちをする。


 ――――先手を打たれたな。


 ユーハンから養子が異教徒であるという話を聞き、報告と改宗の相談のために謁見の申し込みをしていたのだが、悠長に沙汰を待っていたことが裏目に出たらしい。痛くもない腹を探られるのも面倒だと思っていたが、さらに面倒なことになったなと思う。神殿長のクリストフ・バックマンが動いているのだろう。恐ろしい勢いで、噂も広がっているようだ。

 アンディシュが面倒だなと再び舌打ちをしたところで、ドアがノックされた。応答すると、ユーハンが中に入ってくる。


「どうした」

「いえ、エディに対して悪魔裁判が行われると…」


 その言葉にアンディシュは軽く頷くと、王宮から届いた書状をユーハンに放り投げる。


「……異教徒である旨はお伝えしていたかと思いますが?」

「先手を取られた。謁見前に、神殿長に動かれたのだろう」


 ユーハンはため息を吐き、眉間を抑える。


「私の予想では、王女との婚約がある以上、エディ個人への攻撃ではなく、公爵家に対するものかと思っておりましたが、悪魔裁判となると…」

「あぁ。奴は死ぬだろうな」


 ユーハンは眉を顰める。

 悪魔裁判とは、要は神殿による背教者の処刑をもっともらしく見せるためのデモンストレーションだ。悪魔ではないと証明するために拷問にかけられるが、()()()()()()()()()()。生き残れるのは悪魔だけだからだ。生き残れば、どのみち殺されることになる。


「王は王女とエディとの婚約を破棄しても良い…ひいてはオールストレーム公爵家と対立しても良いと考えているということか……。父上。今回の爆発騒ぎ、ラーシュの力の暴走だと聞きました。そして、今回の王家の対応を見るに…」


 ぶつぶつと呟きながら自分の思考をまとめると、ユーハンはアンディシュをじっと見据える。


「ラーシュは従妹殿……いえ、キルスティ王女の息子なのですね?」


 アンディシュはふっと口元を上げるだけで答える。ユーハンはその顔を見て大きくため息を吐いた。皆まで言わなくても分かる。まさかとは思っていたが、本当にそうらしい。

 しかし、そもそもなぜ、そんな大切なことを家族にも秘密にしていたのか。ユーハンはアンディシュを詰まりそうになる自分を抑える。どうせ、聞いたところで答えなど返ってこないからだ。


「……おかしいと思ったのです。あなたが他所で子供を作ってくるなどと…。ラーシュは、腕にいくつもの魔力抑制の魔道具をつけていましたが、まさかあのような大きな爆発を起こせるほどの魔力を秘めているなんて…」

「大方、王もそれで気づいたのであろうな。義はこちらにあるゆえに何も言って来ぬが、今回神殿を諌めもせず好きにさせているということはそう言うことだろう」

「しかし、エディを切り捨てるということは…」

「いや、それはただの嫌がらせであろう。向こうもこちらの出方を伺っているようだ」


 王だって馬鹿ではない。いきなりオールストレーム公爵家と事を構えることはないだろうと、アンディシュは考えている。


「……どうなさるおつもりですか、エディの事」

「さてな…奴の首一つですむのなら安いものだが」


 アンディシュの言葉にユーハンはこぶしを握る。家門第一主義の父だ、この答えは予想できていた。しかし、ユーハンにはそこまで割り切れない。短い間とはいえ、共に過ごしてきたのだ。しかも、まだ彼はあんなにも幼い。ユーハンの頭の中に、救いきれなかった幼いラーシュの姿が浮かぶ。あの日、本人から助けを求められるまで、彼の置かれた状況を深く考えることもなかった。すべて終わってから気づいたところで、もう過ぎ去った時間は戻ってこない。あんな後悔はもうこりごりだった。


「彼の魔獣を使役できる能力は後々の役に立つのではないのですか?」


 エヴァを擁護するようなユーハンの言葉にアンディシュは片眉を上げる。


「何だ。お前も奴の肩を持つのか?」

「…お前()?」

「ふん、ラーシュも随分と奴に肩入れしているようだな。情に引っ張られるようなら早々に処分するが?」


 アンディシュの鋭い目を、同じ相貌で見返しながらユーハンは答える。


「ならば、既に遅かったと言わざるを得ないでしょう。今、公爵家を二分するのは得策ではないかと存じますが?」


 暗に、エヴァを処分するなら父と敵対すると言うユーハンにアンディシュは目を見開く。喜怒哀楽の薄い息子で、何なら自分の考え方に近い考えをすると思っていただけに、それ程の反発を露にするとは思っていなかったのだ。


「……神殿に目をつけられたのだ。逃げ切れるとは思うなよ」

「抗い逃げ切れなかったのと、最初から差し出すのでは訳が違いましょう」


 一歩も引かないユーハンにアンディシュは溜め息をつく。


「まぁ、いい。奴の処遇をどうするかは、王の出方次第で決めることにする」


 王宮からの呼び出しは、神殿からの陳情に対し、事実か否かを説明せよと言うものだ。最初からこちらの非を挙げ連ね、すぐに裁判にかけるというような文面にはなっていない。

 アンディシュの言葉に少し眼差しを緩めたユーハンを部屋から追い出すと、アンディシュは気だるげに王宮に向かう準備を始めた。


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