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守護者の乙女  作者: 胡暖
三章

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40.事情聴取

 本日最後の謁見となり、マクシミリアンは疲れていた。先ほどまで、クロンヘイム侯爵家の当主がブラント伯爵家、ハーララ子爵家の当主を引きつれて乗り込んできていたのだ。

自分たちの息子は亡くなったのに、オールストレーム公爵家の子供たちが無事なことに納得がいかないという理由でだ。そもそもちょっかいをかけたのはそなた達の息子の方だろうが、とマクシミリアンは思ったが、懸命にも口に出さなかった。真実をつまびらかにしてほしいという陳情に、おざなりに相槌を打ち何とか追い払ったところだ。

 椅子に胡坐をかき、頬杖をついた姿勢で最後の謁見者を迎えた。そして、現れた人物の姿を見て、一層ため息を吐きたい気分となる。

 王よりも余程、華美な装飾を施された法衣を纏ったその姿。神殿長―――クリストフ・バックマンはゆっくりと玉座に近づき、膝をついた。


「ご機嫌麗しゅう、我が君。本日はお耳に入れたい事柄があり参上いたしました。」

「申せ」

「は…。あのオールストレーム家に入った孤児ですが、忌まわしいことに異教徒でございました」

「…何?」


 鬱々とした気分を一瞬忘れ、微かに体を起こす。

 クリストフは顔をゆがめ首を振る。


「身分が卑しいだけでなく、思想も違うなど…のさばらせておくのは危険でございます。何より、怪しげな術を使い、魔獣を操るというではありませんか。あの者は悪魔に違いありません」

「ふむ」


 マクシミリアンには現時点で、オールストレーム公爵家と事を構える気はない。

 何より、継承権は本来あちらにあるのだ。向こうが沈黙している現状で、こちらから藪をつついて蛇を出すようなことを言うつもりはなかった。

 しかし、多少力をそいでおくことは必要だと考えていた。

 普段は権力に固執するばかりで煩い神殿もたまには役に立つのだな、とにやりと嗤った。


 ◆


 ドアをノックする音で、エヴァは目を覚ました。

 本日は休みとなった。団長であるランバルドの計らいだ。今日はゆっくり休んで、明日何が起こったのか証言するように言われている。だからこそ、エヴァはゆっくりと眠っていたのだが…。

 眠い目をこすりながらドアを開ける。


「お前、まだ寝てたのか?」


 ドアの前には呆れた顔のラーシュが立っていた。エヴァが部屋に招き入れる前に我が物顔で入ってくる。


「どうしたのラーシュ?」

「父上から連絡が来た。昨日の件、何があったのか早急に説明するように、って」


 その言葉に、エヴァはパチリと目を開ける。そして慌てて身支度を整える。

 エヴァがアンディシュに会ったのは、養子にすると言われたあの時だけだ。その人となりは良く分からない。だからエヴァには、こちらの話をあまり聞いてくれない怖い人という印象しかない。

 準備のできたエヴァを伴ってラーシュは団長室に向かう。騎士団の中で話すには触りのあることも多い。外出を願いに行くのだ。

 しかし、あんなことのあった翌日に当事者が外に出られるだろうか、とエヴァは心配したが、まだ未成年の二人だからと、保護者への報告のための帰省は案外あっさりと許可が出た。

 屋敷に戻るとユーハンが待ち構えていた。

 いつもながらにこりともしない愛想のなさだが、その瞳には心配がにじんでいる気がした。エヴァは、ユーハンの顔を見て、ほっと息を吐く。

 屋敷に入ると、ラーシュだけがアンディシュに呼ばれたので、先にエヴァはユーハンに事情を説明することにした。ずいぶんと久しぶりの気がするユーハンの部屋のソファに二人で腰掛ける。


「何があった?うちの手のものから、大規模な魔力爆発が起きたと報告があった」


 少し身を乗りだしたユーハンに性急に尋ねられる。エヴァはたどたどしく、あの日の出来事について話をする。エヴァとて、何が何だか分からない部分が多いのだ。ユーハンはラーシュの兄弟なので、ラーシュの魔力が暴走したことも正直に話す。全てを聞き終えたユーハンは、眉間にを押さえてため息を吐いた。


「本当にラーシュがあの爆発を起こしたのか?」


 エヴァはこくりと頷く。ユーハンは自分に言い聞かせるように首を振る。


「ありえない。あんな規模の爆発が人に起こせるなど…」


 ユーハンの独り言のような呟きに、エヴァは首をかしげる。


「どうして?魔力を持っているんでしょう?」

「我々の持っている魔力には、力として発現できるほどの量はない。だからこそ、魔石を補助として魔道具を作って使用するのだ。元々ラーシュは魔力量が多く、それを制御するために、魔道具を使用していた」


 ラーシュの手についていた腕輪の事だろうと、エヴァは頷く。


「それでも、精々部屋の物を動かす程度だったはずだ。人を吹き飛ばし、なおかつ周囲を更地にするような大爆発を人の手で起こせるはず…」


 途中で言葉を止め、ユーハンは口元を抑える。何かを考えこむようなユーハンに、エヴァは首をかしげる。


「ユーハン?」

「あ、あぁ。いや、何でもない。……しかし、このような荒唐無稽な話をそのまま話す訳にはいかないな。何と言い訳したものか」


 ◆


 同時刻、アンディシュの執務室でラーシュも同じように事情を説明していた。ただし、自分の魔力が暴走したところまで。エヴァの魔法については話さなかった。


「そうか…では、相手の魔道具が暴走した、で押し通せ」


 ラーシュから話を聞いたアンディシュは端的に指示を口にする。ラーシュがそれに頷きを返すのを見ると、話は終わりだとばかりにアンディシュは扉を顎で指す。


「エディを呼ぼうか?」

「不要だ。お前の話で不足があればと思って念のため呼び出したに過ぎん」


 アンディシュの言葉にラーシュは少し顔をしかめる。


「…心配じゃないのかよ」

「はっ…お前の盾くらいになればと思い飼っているものをか?」

「何だと?」


 ラーシュは、目を吊り上げる。それを見たアンディシュもまた、片眉を上げる。


「言った筈だ。お前を守る駒にせよと。…心を許すな」


 端的な言葉に、ラーシュはぐっと言葉を詰まらせる。

 もし、ラーシュがエヴァに心を傾けていることがばれれば、恐らくエヴァは排除される。エヴァの魔法の件も話さなくて正解だったと、ラーシュは心の中で息を吐く。


 ――――家のために都合よく利用なんてさせるものか


「…分かってる」


 ◆


 その日、エヴァとラーシュはオールストレーム公爵家に一泊した。

 翌朝、早い時刻に家を出ようとする二人を見送るようにユーハンが出てくる。その手には籠を持っていた。


「これを」


 そっと差し出されたのは、魔道具のようだった。


「以前渡した対物の攻撃に対する魔道具と、急ぎで新たに制作した対魔力の魔道具だ。この二つを持っていたために、助かったことにすると良い。以前の物は攻撃で壊れたので、家に戻って新しい物をもらったと」


 エヴァとラーシュは頷き、お礼を言いながら、それぞれ魔道具を受け取る。

 それを見て、少しだけ目元を緩めたユーハンが言う。


「昨日は動転してそれどころではなかったが…二人とも無事でよかった」


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