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守護者の乙女  作者: 胡暖
第二章

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24.ニコライ

 見習いになってすぐは出来ることが少ないので、しばらくは年上の見習い達とペアになって仕事を覚えるという。

 見習い初日は、そのペアの発表があった。

 大きな立て看板に、見習いとペアの者の名前が貼り出されている。

 ラーシュはルーカスとペアになり、お互い分かりやすく絶望していた。ラーシュは何のために家を離れたのかとぶつぶつ言っている。

 エヴァはルーカスと少しでも和解できると良いと思うが、二人の関係は拗れに拗れている。喧嘩しそうになったら間に入ろう、と決めた。

 エヴァは自分の名前を探した。名前を確認する前に、すすすっと近寄ってくる少年がいる。そちらに目を向けると、少年は決まり悪気に頬を掻く。


「お前のペアのニコライ・アンヌッカだ。……歓迎会で挨拶しようと思ってたのに、お前達めちゃめちゃ目立ってるからさ、声かけそびれたよ」

「あ、ベルタの…」

「あぁ、息子だよ」


 ニコライは茶色い癖毛と、目元がよく似ている。

 エヴァはにこりと笑って手を差し出した。


「君がペアなんだ。心強いな。よろしく、エディ・オールストレームだよ」


 ニコライはうーんと唸る。


「俺は、見習いの中でもまだまだ下っ端だし、お前のこと守ったりはたぶん難しいからな。俺自身はお前のこと虐めたりはしないけどさ」


 エヴァの手を握りながら、母さんは無茶振りが過ぎるとぶつぶつ言う。

 エヴァはクスクス笑う。


「君に守ってもらおうとは思ってないよ。普通に接してくれる相手がペアでよかった。仲良くしてくれると嬉しい」


 そして、早速ニコライから仕事を教えてもらう。

 見習いの仕事は、毎朝の魔獣舎・厩の掃除、そこで飼育されている獣達の餌やり、演習場の整備に、防具や武器の手入れと細々とした雑用が多岐に渡っている。

 今日の仕事は、魔獣舎の掃除だった。

 魔獣達の寝床の藁を敷き変えるのだが、糞尿を含んだ古い藁はズッシリと重い。初めての経験に最初は意外と楽しく仕事をしていた。しかし、普通でも重労働だが、小さいエヴァには余計に大変だった。すぐ根を上げる。


「ニコライ、ダメだ。これ大変だ。今日中に終わらないかも」

「えー、エディ全然出来てないじゃないか!もっと頑張れよ!」


 ニコライに助けを求めても、彼も自分の分で精一杯だった。

 エヴァは、ため息をついて、魔獣舎の魔獣を見る。


「君たちのベッドなんだからさ、ちょっと協力してくれない?」


 そうすると、たちまち魔獣達は自分の寝床の藁を前脚や身体を使って、通路側に寄せ集め始めた。

 ニコライは自分の作業の手を止めあんぐりと口をあける。


「ありがとう!次は、この台車にその藁を積んでくれる?」


 エディはうんうん、と頷き、台車を差し出す。

 車輪のついている台車に乗せてくれたら、運ぶのはそれほど大変ではない。

 魔獣達は、エヴァに台車を差し出されると、せっせとそれに藁を乗せていく。

 エヴァはニコライを振り返って叫ぶ。


「ニコライ!こっち運ぶの手伝って!藁を寄せるのはこの子達がしてくれるから」


 ニコライは、マジかと呟きながら、急いで台車を持っていく。

 エヴァとニコライはせっせと汚れた藁を運び出した。


 魔獣舎は広い、実はエヴァ達の他に3組の見習いが掃除をしていた。その内の1人が叫ぶ。歓迎会でエヴァに突っ掛かってきた人物だ。


「お前達、許可もなく魔獣を使って何やってるんだ!」


 エヴァはキョトンとして答える。


「何って…寝床の清掃だけど。何か問題ある?」

「魔獣に手伝わせたら訓練にならんだろう!ズルするな!」

「…訓練?魔獣舎の掃除でしょ?」

「全ての行動は訓練に繋がるんだ!これだから孤児は」

「…それ、今関係ある?」


 ニコライが慌ててエヴァに近寄ってきてこっそりと耳打ちする。


「エディ、揉め事は不味い。適当に謝っちまえよ!」

「僕が?…何で?」


 ニコライはエヴァに断られると思っていなかったらしく、目を白黒させアワアワする。


「何を揉めている?」


 入団初日だったので見習い達の様子を見回っていたらしい副団長のウルリクが、声をかけてきた。

 ここぞとばかりに、エヴァに突っ掛かってきた相手が、ウルリクに訴える。


「聞いてくださいよ!ウルリク副団長。こいつ、魔獣舎の掃除を魔獣を使ってサボってるんです」

「…落ち着け、オリヤン。何だって?」

「こいつ、魔獣に掃除を手伝わせてるんです!」


 意味が分からないと首を振って、ウルリクはエヴァを見た。


「何をしたんだ、エディ」

「何って…僕の体格じゃ、寝床の藁をかくのが大変だから、魔獣達に藁を台車に乗せるのを手伝ってもらってただけです。…そんなに言うなら君もやれば良いのに」


 エヴァは文句を言っていたオリヤンを軽く見やって言う。

 エヴァの言葉に、言われたオリヤンだけでなく、全員が心で『できるか!』と声を揃えた。

 エヴァは首をかしげてウルリクに問う。


「何か問題ありますか?」


 ウルリクは言葉に詰まる。

 問題はある気はするが、別に魔獣を連れ出したわけでも、魔獣を使役して何か問題を起こしたわけでもない。

 確かに、エヴァの体格ではこの仕事は手に余るだろうというのも分かる。

 少し悩んでエヴァに伝える。


「まぁ、魔獣を外に出した訳じゃない。藁を運ばすくらいは良いんじゃないか?」

「…!副団長!」


 ウルリクの決定に、不服そうにオリヤンが叫ぶが、ウルリクは黙殺した。


「ほら、皆手を止めず、掃除に戻れ!」


 ウルリクの一言で全員掃除に戻った。



「お前、早速なにかやらかしたらしいな」


 訓練が終わり、エヴァはラーシュの部屋に来ていた。

 その日にあったことを報告し合う事にしていたからだ。

 エヴァは首をかしげる。


「魔獣達に掃除を手伝ってもらっただけだよ?」


 がくっと、ラーシュは頭を下げる。


「それがやらかしてるんだよ」


 エヴァは肩をすくめると、話をそらすことにした。


「ラーシュ達は今日は何をやっていたの?」


 ラーシュは、言葉につまる。

 視線を下げると、早口で言いきった。


「武器の手入れだ。部屋の端と端に座ってひたすら無言で刀を磨いた」


 エヴァは無言で武器の手入れをする二人を想像して可笑しくなった。口許を弛ませると、ラーシュは憮然とした顔で言う。


「笑うな」

「ごめんごめん。お互い、初日から大変だったね」

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