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守護者の乙女  作者: 胡暖
第二章

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22.相談

 ラタ経由で手紙を送るとすぐにアンナリーナから返事が来た。

 王城に向かうとベルタが迎えに出てきてくれた。


「ご無沙汰しております」


 ニコニコと丁寧に頭を下げるベルタに、久しぶりと声をかける。


「しばらく振りですから、お嬢様のお話が終わりましたら、髪を整えましょうね。新しい流行の髪型を試してみたいんです」


 今は、頭の下半分を短くして、上半分を長めに残した髪型が流行っているらしい。エヴァは、流行など分からないので、よろしくと答えておく。


「騎士団に入るんですって?」


 部屋に入るとすぐに、アンナリーナは本題に入った。

 エヴァは頷きを返し、会談の理由を話す。


「うん、そうなんだ。ラーシュ…兄上に、妬まれて嫌がらせをされる可能性があるって言われて……僕、寮に入ろうかと思ってたんだけど…」


 アンナリーナも、もっともだと頷く。


「そうね。ましてや、あなた女の子ですものね。ばれる危険性はできるだけ排除したいわ。わたくしの婚約者として王城に住まわせることも出来るけど……これは最終手段にしたいわね……ベルタ、あなたニコライが騎士団よね?何か良い方法があるかしら?」


 ベルタの息子で、アンナリーナの乳兄弟であるニコライが騎士団にいることから、ベルタは多少見習いの知識がある。

 アンナリーナの問いにベルタはうーんと唸る。


「そうですねぇ。日中は、騎士団長様の目がございますし、そうそう無茶なことはできないかと……。寮に関しては、高位貴族の方は個室を使われるはずです。ご兄弟のラーシュ様のお隣にすれば、他の方は手出しがしにくいでしょう」

「ふむ、まぁあの男はエヴァのこと、憎からず思っているようですものね。後はお風呂ね」

「騎士団の寮の個室は確か、ご自身で持ち込めば使えるように、部屋に湯の出る魔道具(シャワー)が使える場所が設置されていたはずです。大浴場は使用できませんが、それで事足りましょう。もし、湯船に浸かりたい場合は、こちらにいらした際にご準備いたします」

「ふむ、では湯の出る魔道具(シャワー)を準備しましょう」


 手際よくアンナリーナとベルタが話を進めていく。

 何とかなりそうな様子に、エヴァはホッとした。

 そこで、ベルタがポンと手を打った。


「そうですわ。騎士団ですが、入団前に集団での健康診断があるはずです」

「それは不味いわ……適当に口実をつけて、不参加ね」


 話し合いが終わり、エヴァはベルタに髪を切ってもらう。


「うちの三男坊は、見習いになって1年ですが、エヴァ様のことをしっかりお守りするように言っておきますからね」


 ニコニコとそう言うベルタにお礼を言って、エヴァは城を後にした。




「全く父上は何を考えているのか……」


 エヴァが、授業のためにユーハンの部屋に行くと、顔を見るなりユーハンに嘆かれた。ラーシュも同意するよう、うんうんと頷いている。

 そう言えば、騎士団に行くようになったらユーハンの授業も受けられないなぁと、エヴァは思った。ユーハンにどうすれば良いか聞いてみる。


「授業をするほどの時間は取れぬだろうな。ただ、父上から入団後も定期的にお前の話を聞くようには言われている。週に一度は王城に上がるようにするので、困ったことがあればその時に言いなさい。ラーシュ、お前もだ。……まぁ、騎士団にはルーカスもいるから大丈夫だと思うが…」


 ユーハンは言いながらきつく眉根を寄せる。

 表だって父の考えを否定するようなことは言わないが、心の中は荒れ狂っていた。


 ――――この年頃の3歳差は大きい。体力も技術も何から何まで違うのだ。他から目をつけられそうなことが分かっていて騎士団に放り込むような真似をするとは…しかも、我が家に利があるとは思えぬ状況で。理解に苦しむ。


 せめても自分の出来ることとして、護身用の魔道具(おまもり)を作った。エヴァだけに渡そうかと思ったが、母の違う弟もまた目立つ容姿をしていることから、攻撃される可能性がある。二人分の魔道具(おまもり)をそっと差し出す。


「物理的な攻撃に対して反転する魔道具だ。「反転」(リフレクション)の呪文で発動する。首から下げられるので身に付けておくと良い」


 エヴァとラーシュは各々御守りを手に取り首から下げた。


「ありがとう!」

「……ありがとうございます」


 ◆


「……どうしてエディを騎士団にやるのですか…」


 アンディシュに執務室に呼ばれたラーシュは、開口一番そう聞いた。

 アンディシュは馬鹿にするよう鼻で嗤った。


「ふん、騎士団の主な敵は魔獣。魔獣に襲われないあいつが側にいれば、お前の盾がわりにはなろう」


 ラーシュはきつく拳を握る。


「お前は失えない。今は機会ではないが、その時になれば……分かっているな」


 アンディシュの言葉に理不尽さを感じながらも飲み込み頷く。

 入団はもうすぐそこまで迫っている。

 出来る限り側にいて守ってやりたいとは思うが、ラーシュにも優先順位がある。

 それでも、あの屈託無い笑みが失われるのは嫌だな、と思う。


 各々の思惑を孕み、季節が変わる。

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