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守護者の乙女  作者: 胡暖
第一章

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18. 宮廷魔道具士長

「初めまして!エディ君」


 騎士団で、稽古をつけてもらうようになって、しばらくしたある日のこと。演習場でラーシュと素振りをしているとエヴァはいきなり声をかけられた。

 エヴァは剣を下ろして、汗をぬぐいながら声の方に顔を向けた。横で、ラーシュも同じように剣を下ろしたのが見えた。

 頬を掻くランバルドより一歩下がったところで、青色の髪を後ろで一つに束ね、緑色の目に眼鏡をかけた男性がニコニコしている。その横で、腕を組み怖い顔をしている、ウルリクとの対比がすごい。


「あーー。この方は、宮廷魔道具士長のバルトサール・オースルンド殿だ。研究馬…ゴホン、とても研究熱心な方でな。エディの魔獣を使役する能力に興味がおありらしい」

「えぇえぇ、全く。侯爵家当主でありながら、あまりの熱心さから領地に返らず、城でずっと研究に励まれている変わり者…失礼」


 ランバルドがうっかり、ウルリクはあえての本音を交えて、バルトサールについて説明してくれる。


「全く。こちらの話も聞かず、一方的に押しかけて来るなど…」

「あはは、ごめんごめん、ウルリク副団長。週に2回騎士団に稽古に来てるっていうからさ、つい」


 イライラと眼鏡を押し上げるウルリクを全く気にせず、バルトサールはエヴァにずいっと近づく。


「すごいね、綺麗な虹色の目だ」


 びっくりして一歩後ろに下がったエヴァをかばうように、ラーシュが少し前に出る。

 バルトサールはそこで初めて、ラーシュに気が付いたかのように、おやっと首をかしげる。


「ラーシュ・オールストレームです。エディの兄です」

「あぁ、君が。あはは、小さくても立派に騎士だねぇ」


 どことなくバカにされたように感じラーシュはムッとする。


「んー?ラーシュ君。君、魔力封じの魔道具をつけているの?」

「魔力封じ?」


 バルトサールの言葉を復唱するエヴァの声に、ラーシュは肩を揺らす。こちらを見てくるエヴァから顔をそらし、答える意思のないことを示す。

 バルトサールはそんなひそかなやり取りなど意に介さないようだ。嬉しそうに言葉を続ける。


「素晴らしい!封じるほど魔力があるならば、放出型の魔道具も使用できそうだね!作ったはいいが使える者がいなくて、眠っているのがあるんだ」

「ゴホン、規則で騎士団の外に魔道具は出せませんな」


 ランバルドが話を遮るように、咳払いをする。

 話についていけないエヴァとラーシュはポカンとして、大人たちを見上げた。


「魔道具?何の話…ですか?」

「あー。騎士団員は、対魔獣戦のために、剣ともう一つ自分の能力に合わせた魔道具を持つんだ。氷の効果が付与された剣、火の矢を飛ばす弓…色々ある。そもそも、バルトサール殿の就いている宮廷魔道具士長というのは、魔石と魔獣の研究を行い、騎士団で使用する魔道具の作成・改良をする部署だ」


 眉間を抑え、心底頭が痛いとでも言うように、ウルリクがバルトサールの説明をする。


「へー。団長と副団長はどんな魔術具を使うんですか?」


 何の気なしにエヴァがそう聞くと、急に空気がピリッとした。

 ランバルドが、騎士団員以外には誰がどんな武器を使うかは秘密だと言う。

 聞いてはいけなかったかなと、エヴァは曖昧に頷いた。

 そんな微妙な空気など、全く気にもしていないようにバルトサールは目を輝かせ、ウルリクの体を押しのけて、エヴァとラーシュに話しかけてくる。


「僕は、体力の劣る子供こそ、魔道具の力を磨くべきだと思うんだよね!」

「だーかーらー、騎士団員でもない者に魔道具が渡せるか!」

「遅いか早いかの違いでしょ?」

「大違いだ!しかも、見習いには15歳まで魔道具は渡さん!!」

「ちえー」

「良い年をした大人が可愛い子ぶるな」


 マイペースなバルトサールに、ついにランバルドが切れた。見事に敬語が取れている。


「まぁ、でも。エディ君にはぜひ魔獣の研究に付き合ってほしいなぁ。……それに、自分自身の価値を上げることで助かるのは君自身だ」


 エヴァの手を握ってぶんぶん、上下に振りながらバルトサールは言う。


「…自分自身の価値を上げる」

「そう。君は、魔獣を使役する孤児から、公爵家の養子になり、アンナリーナ様の婚約者候補となった。妬まれる要素は十分だ。このまま出る杭として打たれるか、多方面に影響力を持ち尊重されるかは君次第だよ」

「……」


 バルトサールは声の調子はそのままだが、何かすごく大切なことを言っている気がする。

 しかし、ちょっと待って。エヴァには聞き逃せない言葉があった。


「……婚約者候補?」

「あれ?確定だった?」


 バルトサールとお互いに向き合って首を傾げ合う。

 さらには、ランバルドとウルリクまでも、決まったのか?と聞いてくる。

 エヴァはラーシュを見る。ラーシュは大きくため息を吐く。


「……王女と噂になるというのはそういうことだ。噂になっているのが分かっても、お前、王女と会う頻度を減らしていないだろう?」


 確かにエヴァは、稽古がない日は毎日のように王城に上がり、アンナリーナとのお茶を続けている。

 噂が広がるのはアンナリーナの意図通りなのかと気にしていなかったが、婚約はどうなのだろう。

 アンナリーナには好きな人がいるらしいし、何より自分は女である。結婚はできない。


「照れなくてもいいんだぞ、エディ。王女も予定が空いている時には頻繁に稽古の見学も来られるしな。仲良くやっているんだろう?」

「…仲は…いいですけど」


 確かにアンナリーナは、騎士団の見学によくやってくる。しかし、その際エヴァと声を交わすことは多くない。エヴァは、アンナリーナの好きな人は騎士団にいるのではないかと思っていた。

 アンナリーナに確認したことはないし、ここでその予測を口にするのはアンナリーナへの裏切りになると思うので、言いはしないが。


 エヴァは、途方に暮れた顔をする。

 大人たちは何やら慌てだし、とりあえずバルトサールを追い出した後、稽古を再開した。

 バルトサールは、「また来るねー」と朗らかに手を振って去っていった。



 そして、その夜。

 エヴァに、アンディシュよりアンナリーナとの婚約内定が伝えられた。

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