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いざ王都へ

貴族街を見事救い、しばらく遊んでも全く痛くないほどの多額の金と金に換えがたい貴重な品を受け取ったキリヤ一行。貴族街を出て、例の馬車をかっ飛ばす―


訳ではなかった。出て少し歩いたところにある湖にて腰を下ろしていた。


「のんびりやなぁ…キリヤらしいっちゃらしいけど。」


「いいじゃない。こんな湖畔なかなか無いわよ?」


大きさをホホジロと比べるのも烏滸がましいが、そよ風の吹く暖かい草原に靡と水面、小動物たちがまったりと水を飲む様は美しい。


「お魚だ~!」


ぴょんぴょん飛び跳ねる魚を目で追うキリヤ。凄く平和だ。どうせならと少し昼寝して出発した。木漏れ日気持ちよく、眠れた。


「は~、結構いいとこやったなぁ。」


「だよね~。」


のんびりと歩きながら雑談する。魔物はノヴァの一振りで大抵消し飛ぶので大した脅威ではない。ただ、


(戦ってる時無表情なのよね…ノヴァは戦闘中ノリノリだから気付いてないけど。)


襲ってきた狼型の首を鎖で締め上げながら思う。キリヤは集団に向かってただ淡々とノヴァを振り、血の雨を降らせる。戦闘は数回あったのだが、全てこのようにひたすら斬るだけになってしまっている。戦闘が終わればまたいつものキリヤに戻るだけに不気味なのだ。ナイトメア討伐以前はこのようではなかったのに。


「ふい~。魔物の数多いなぁ。せや、ワイ進化したんやったらステータス変わってたりするんちゃうかな。」


「見てみよ~。」


フッと現れる文字やら数字がかかれた半透明の薄い板。ノヴァの情報が細かく書かれた武具のステータス。本来は武具のステータスは武具と長年寄り添い合ってきたものでしか見れないある名誉な数値表。鑑定で十分な話だが。


呼禍ノ呪剣 ノヴァ


攻撃力187 属性 祟り


スキル

呪い-装備が外せなくなって、体の自由がきかなくなる。呪い耐性が上がると緩和される


吸収-【LEVEL9】敵を倒すたびに攻撃力+4とHP回復


魔力貯蔵【LEVEL18】-敵を倒すたびに剣に魔力が貯槽され、剣から魔法を出せるようになる。レベルアップで使える魔法が広がる


タタリ二シキ スベテヲニクシミ、ヒカリサエムシバミネジマゲルノロイ。


「エッグ…呪いに目ぇ瞑ればかなりの業物やな。」


「すご~い!」


「攻撃力だけ見たら伝説級なんだけど…如何せん他が常人には扱えないのよね。どうして強い剣は一癖二癖あるのかしら?」


「そりゃあ、人間もおんなじやろ。強い冒険者は変人が多いやないか。」


魔剣聖剣図鑑を合間合間見ているが、どの剣も扱いにくい特性や性質を持ち、普通の人が使えない仕様になっている。作り手が、悪用されないようにと付けたセキュリティなのかもしれない。


「そういえばキリヤのステはどうなんや?」


「私のステータスは無視なのね。まあ私はレベルの上り幅が気になるから取っておくのだけど。」


[キリヤ] 人間ダンジョンマスター

LEVEL

能力数値  

体力 20 力1 素早さ1 防御1 魔力1 賢さ30

属性耐性

火0 水0 風0 土0 雷0 毒0 麻痺0 やけど0 裂傷0 気絶0 呪 error

スキル

呪われ上手‐呪われてる状態だと、全ステータスに+70。力は3倍の補正がかかる。


ダンジョンマスター‐ダンジョンの主。ダンジョンを組み上げることができる。


血二飢エシモノ…呪いの武器を装備し、完全に正気を失った者が得るスキル。永遠と血に飢え、求め彷徨う。


「変わってないな…ん?んん!?」


「どうしたの~?」


「え、いや、スキルの最後…」


「呪われ上手とダンジョンマスターだけだよ~?」


「鑑定でも特に目立つ点はないわ。何か見えるのかしら?」


ノヴァは絶句する。見えていないからとかではない。血二飢エシモノの効果に対してだった。サーヴァントの鑑定結果は共有済みなのでノヴァも一言一句違えず覚えている。だが、キリヤのスキルには呪いの武器が原因とありありと書かれている。それはもちろんノヴァ自身の事を指し、無意識にも自分が与えていた呪いが今キリヤを確実に蝕んでいることが恐ろしく感じた。


(そもそもなんでワイはキリヤなら大丈夫と思ってたんや…キリヤはいつもと変わらへん。そんでも、ワイは進化という形で変化して強くなってく。呪いの強さが変わらんわけないやんか!まずいで…呪いは抑えられへんからワイを使わせへんようにしな…)


「どうしたの~?」


急に黙り込んでしまったノヴァに心配そうに声をかけるキリヤ。


「いや…何でもないで。」


「そっか~。」


良かった~というように無邪気に笑うキリヤ。その笑顔がどこか恐ろしく思った。いくらキリヤ自身の呪いの耐性が常識外に高くても、全てを防ぎきれないし、呪いが強くなっていけば限界は早まる。性格に影響はないように見えるが、キリヤがキリヤでいられる時間は殆どないのかもしれない。


「そ、それより、王都まではもうすぐやっけ?」


「そうね。今ぐらいのペースなら、だいたい二日で着くわよ。」


「え~、そんなにかかるの~?」


キリヤが文句を言う。ステータスの突出したキリヤなら歩き続けるくらいじゃほとんど疲れないのだが、キリヤがめんどくさがるのでゆっくりのんびり歩いているのだ。おかげで薬草やら魔物の素材がたんまりバックに入っている。売ればそれなりの金額、使うにしても余るほどの量だ。


「なら馬車使うか?」


「そうする~」


マジックストレージから木で組んだ馬車が現れる。どこか草臥れた様相をしている。まあ、高速で動くジェットパックに引っ張られてるから当たり前だが。


「じゃあいこ~!」


「はいはい。多分半日もかからないわよ。」


こうして昼からブーストのかかったキリヤ一行は馬では到底出せないスピードで丘や草原を駆け、貴族街よりもさらに立派な街壁に囲まれた物流、人、権力の集中する国の中枢地区にたどり着くのであった。

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