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勇者、追い出される

ソーサヨリに来た僕は、僕のメンツを破壊した呪剣旅行団と交戦し、奴らを半魔に仕立て上げようとした。しかし…


「なに?この近くで半魔が?バカバカしいの。」


「ここ20年は半魔のはの字も見ていませんわ。」


クソッ!王も女王も全く相手にしない!仲間がいくら言っても聞く耳を持たない…半魔なんて神出鬼没の化身のようなものだろうが!


「あのぅ…王様?」


後ろに控えていた兵士が恐る恐る手を上げる。僕たちを見つけた兵士の一人…だったはずだ。たかが兵士風情が僕たちの話しを遮るなど…憤りを顔に出さぬようなんとか抑える。


「この羽根が落ちてきたんです…」


燃え盛る炎のように赤い羽根…それを頭の少し上に掲げている。今更そんな物に何の価値が…いや、待て!それは―


「ほほう?これは興味深いのう?」


兵士から受け取った羽根を光に透かすように掲げる。


「この魔力。この輝き…不死鳥様の物じゃ。そういえば、お主たちは途中で翼が生えて逃げ去った。その翼は燃えるような赤じゃった…そう言ったの?」


僕たちは何も言えずに黙ってしまう。折角謁見の間まで来たというのに、まさか追い出されるのか?勇者パーティである僕たちが?


「勇者と聞いてはしゃいでおったのが馬鹿みたいじゃ。もうよい。出よ。」


「し、しかし、僕たちは…」


「よいと言っておる。それとも、もっとわかりやすく言ってほしいと申すか?なら言おう。出て行け!!!!」


室内の魔力が乱れ、突風が吹き荒れる。王の魔法だ。魔法を売りとする国なので、おのずと王に就く人間も魔法が達者な者になる。僕だって、その威力には驚いたさ。感情が高ぶって隙が出来ていても、吹き飛ばされたのは事実なんだし。


「クソが!もういい。王都に行こう…少々実力不足とも思えるが、聖剣を手に入れるには試練が必要なんだ…それに聖剣は勇者しか抜けないはずなんだ…」


「…」


「…」


「ま~、試練の途中であっしらのレベルも上がるだろーしね。」


異様な執着を見せる勇者に反応したのは狂戦士のみであった。国に居られなくなった勇者は王都へと出発。ただ、そこにも呪われた剣を持った少年はいるのだが…それはさておき、その呪われ少年は王都近くに位置する町にいる。勇者と少年では移動手段が異なる故、勇者が先に王都を目指そうとも、少年が先、勇者が後となってしまう。


「悩ましいけど…これにするわ。」


視点を戻して少年側。彼の同行者、ギリアラは三つのナイフを前に悩んでいた。ここは貴族街の中心部であり、


「ほう…双頭竜の延髄ですか。」


「ええ。持った感じ、取り回しやすいですし。」


骨をナイフ形に切り出した風貌のそれを手に取ると、他のナイフは使用人が持って行ってしまう。しばらく刀身を眺めていたギリアラは、セバスに尋ねる。


「セバスさんはナイフの扱いに慣れているのよね?ぜひ指南してくれれば有難いのだけれど…」


「ええ構いませんよ、しっかり指導させてもらいます。貴方がたは戦い方を知らねばなりませんし、良い機会です。」


キリヤたちの戦い方は粗削りにもほどがある。何せ二人はつい最近まで一般人で、多少の実戦経験はあるが、所詮はそれまでなのだ。


ナイフを持って行った使用人と入れ替わる様に、本を大量に積んだ使用人が部屋に入ってくる。ドサっと机に置かれ、丁寧に並べられる。セバスはキリヤに向き合い、説明のために口を開く。


「武器図鑑と…貴重な魔法の書です。どれも逸品ぞろいです。」


「本は貴重やからな…めっちゃ悩むわ。」


「これなに~?」


「それはカメラと呼ばれるスキルを持った男が作成した図鑑です。多くの魔剣やら、少数ながら神剣も写真と呼ばれる絵に記されている書物です。その便利さからカメラの効果を模した魔道具が出回ったこともあったそうですが…」


残念ながら製法は途絶えてしまったそうです。と締める。ちょっと開いてみると、そこはソノヒノカブカと題されたページだった。正に実物を四角く切り抜いたかのような紙が右上に張り付けられており、数字が書かれた紙を何重にも重なり、剣の形を成している武器が写っている。それを取り囲むように、剣の能力や由来に関する説明が載ってある。


「おおおお!すごいなぁ!これ欲しいわ!」


「じゃあ、これにする~。」


「お目が高いですな。どうぞお受け取りください…さて、魔法の書はどれにしますか?」


基本属性である火水風土を取り上げた本は無く、マイナーだったり習得が困難な魔法の使い方が綴られている本が多い。亜空魔法や魂転移魔法などは、習得しようとすると人の一生では短すぎる。故、強大で長寿な種族のみが使える特権だ。本の偏集ぶりから、収集をした人物の目的が透けて見えるような気がする。


「錬金術~?」


ざっとそれらを見渡し、キリヤは本の一つを手に取った。題名は、『誰でもできる高度錬金極意書』。高位の錬金術を取り扱った本である。それを見たセバスは嫌な顔をする。


「それですか…?誰でもできると題されていますが、全くタイトル詐欺も良いところですよ…この本の著者がマスター錬金術師のヤガラですからね。」


マスター錬金術師ヤガラ。彼の発明や既存の錬金術の派生は今日までの錬金術の礎を作り、人々の生活水準を一段階押し上げたとも評される程の天才である。生前質問攻めを嫌った彼が大量の紙を錬金し、その紙に錬金のコツを書き留め、纏めて本にしたのが本書である。


「まず、回復ポーションを魔力だけでハイポーションに昇華させられる魔力量を用意します…馬鹿じゃないのこれ?」


ギリアラが一ページ目を開く。ポーションをハイポーションにできる魔力量は、おおよそ一般的な魔法使い二人分の全魔力である。個人により差があるといえど、凄まじい魔力量である。全魔力。つまり人二人が魔力切れで死ぬ計算である。


「でもわかりやすいよ~?」


内容は難解で複雑。というわけではなく、とても分かりやすい表現と図で説明してくれているので、理解自体は非常にスムーズに出来る。実践しようとしても常人には出来ないレベルなだけである。痒いところに手が届く素晴らしい錬金レシピもあるが、素材や必要な魔力の確保が不可能に近い。


「そうかもしれませんが…」


「これがいい~!」


「…。本人が言うのなら良いのでしょう。他の本を戻してくだされ。」


本が重ねられていくのを背景に、セバスが一礼をする。


「さてさて。確か、王都に向かう途中なのでしたね?」


「そうだよ~。聖剣っていうのを見に行くんだ~。」


「良い心意気ですな。ですが、あまり熱中しすぎるとその剣が嫉妬しますぞ?」


微笑みをノヴァに向ける。ノヴァはセーフやな。と思う。実は聖剣とキリヤが交わることを無意識に嫌がっている…とはいえ聖剣は勇者が抜く物だと相場が決まっている。見るだけなら何ら問題はない。


「さて、聖剣を見るというのなら、試練があるということはもちろん知っておりますね?」


「え~?そうなの~?」


「当たり前やろ。そこらへんに落ちてるどこの馬の骨が使ってたんか知らん剣とは違うんやぞ…」


無知を無邪気に表わすキリヤに、ノヴァがしっかりと突っ込む。出鼻をくじかれたような形になったセバスは、


「…まあ、滞在の間、皆様それに備えて特訓といきましょうか。」


モノクルに手を遣りながら締めた。と、ここで気絶していたハナサが目を覚ます。


「ハッ!私は…あ、キリヤさ」


トス。セバスがブレた。そしてハナサは再び寝た。慈悲は無なかった。


「寝室に運んでおきます…」


「なんで…?」


「終わったことをほじくり返されては困ります。すこし落ち着くまで隔離するのがベストと思ったので。では。」


ハナサをお姫様抱っこして食堂を出るセバス。なんとも言えない空気感だが…


「なんか、とんでもないとこに来たな。」


「同感ね。」


「眠い~」


キリヤは平常運転であった。

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