ダンジョンの支配者
サーバントが息絶え、遺体を運ぶマクラーゲン一行と別れる。キリヤはナイトメアの巣でありダンジョンでもある土造りの穴を攻略していく。そしてゴキ三銃士を瞬殺した。本来行き止まりのはずの壁にはどこかへ続く細い穴があって…
「なんだろうね~。」
「たま~にダンジョンボス倒したら隠し部屋が開くっちゅうやつはあるけど…それかもな。まあ行ってみたらわかるんちゃう?」
キリヤがギリギリ入れるぐらいの横穴をキリヤが窮屈そうに進む。つまり、とっても狭い。
「あ、光が見えてきたよ~。」
ぐぐぐ…っと体を押し出してダンジョンの最終地点にたどり着く。その部屋は異質で、部屋全体から濃い魔力を感じる。そして部屋の中央にほぼ完璧な球形が存在している。鈍い銀色をしており、うっすら青白い光を放っている。
硬質な質感に思えるが、心臓のように鼓動しており、ドクンドクンと音を立ててダンジョンに膨大な魔力を送っていた。
「すごいな…ダンジョンは生き物のようなもんやって言う学者もおるけど、ホンマかもやな。でもこれどうすればええんやろ?」
「とりあえず触ってみよ~。触るだけなら~、大丈夫じゃな~い?」
無邪気に鼓動するダンジョンコアに手を伸ばす。触れるか触れないかの寸前で、キリヤの指に電流が流れるような感覚が。電流は指を伝い、腕へ体へと流れていく。
「いた~い…」
「どうしたんや?」
「なんかピリッとした~…」
指をしきりに気にするキリヤだが、どこからか声が聞こえてくる。
≪対象との周期を同期中…≫
「?なんか聞こえな~い?」
「そうか?」
≪同期、完了。対象、キリヤ・ミラージュ。条件の確認を行います≫
「これ、頭から聞こえるよ~?」
キリヤは頭を触って、何処から聞こえて来るのか確かめようとした。
「そうなんか?あれを触った影響やろか。なんて言ってるんや?」
頭に響く声を聞いて、それをキリヤの口から出すことでノヴァに伝える。尚声は無機質で無感情であり、とても機械的なものだ。キリヤにそれを表現する語彙が無いため、ここで明かしておく。
≪条件1、本ダンジョンのダンジョンマスターを討伐――クリア≫
≪条件2、他ダンジョンのダンジョンボスの討伐――クリア≫
≪条件オールクリア。対象をダンジョンマスターに登録します――完了≫
「だって~。」
「ダ、ダンジョンマスター!?」
ノヴァが叫び声を上げる。ダンジョンマスター。それはダンジョンを支配する者。存在はするらしいが、あまりにも情報が少なく、謎の多い存在である。
≪ダンジョンマスター特権をインプット―成功。コアルームへの侵入をキリヤ・ミラージュ様以外の生物を拒否いたします。≫
「わ~。ダンジョンマスターになっちゃったよ~?何かわからないけど~。」
「ぜ、前代未聞やで!」
公言すれば間違いなく拉致られて研究対象として過ごす羽目になるレベルの存在に、キリヤはなってしまった。ノヴァも元はダンジョンに居たのだが、ダンジョンマスターに会ったことは無い。だからこそ新鮮そうな声をあげたのだ。
≪キリヤ・ミラージュ様。私はダンジョンガイドです。ダンジョンマスターの行動をアシストします。よろしくお願いします≫
「よろしく~。」
頭の中の声に、軽く返事をするキリヤ。なんかすごい存在になっても、やっぱりキリヤであった。
≪ダンジョン経営チュートリアルを開始しますか?≫
「ちゅーと…?」
「まあやった方がええんちゃう?」
とりあえず開始してみることに。頭の声が、キリヤに指示を出した。
≪マスターの承認を確認。チュートリアルを実行します。まずはコアに触れてください≫
「は~い。」
触れるが、ピリッとした感覚は来ない。次いでキリヤの目の前に半透明の板のようなものが現れる。ステータスを表示するものにそっくりであった。これはノヴァにも見え、一緒に眺める。
「ステータス見るやつみたいな感じやな。項目一杯あるけど…」
項目は、
・ダンジョンカスタマイズ
・ダンジョンポイントの残量
・ダンジョン内の様子
・履歴
・ヘルプ
となっている。どうすればよいか迷っていると、再び頭に声が響く。
≪説明。ダンジョンカスタマイズとは、ダンジョンポイントを使ってダンジョンの構造の変化や、魔物を生成する機能です。ダンジョンポイントは通称DPと表示されます。DPは侵入者が訪れたり、侵入者が死んだり、魔法を使われたり等すると溜まります。魔物を再生するときに減るため、ダンジョンボスを倒されるとその分減ります。≫
「へ~。」
≪ダンジョンポイントの残量はその名の通りDPの残量を確認できます。ダンジョン内の様子は、現在のダンジョン内の映像をリアルタイムで映し出します。履歴は、DPの上がり幅や使用量、何に使ったか、侵入者のログ等が表示されます。ヘルプは、聞きたいことがある時に使用してください≫
「なんか楽しそうやな。ワイもやってみたいわ。触れへんのが残念や。」
ノヴァが柄で触れようとしても反応しない。ひょっとするとダンジョンマスターしか触れないのかもしれない。
≪それでは、ダンジョンを改変してみましょう。ダンジョンカスタマイズに触れてください≫
「は~い。」
文字に触れると、他の項目が左に流れ、新たな項目が出現する。
≪魔物生成、階層追加、罠・施設設置がありますが、まずは魔物を生成してみましょう。魔物生成に触れてください≫
「スライムにゴブリンにオオコウモリ…ザコばっかやないか!」
雑魚の代表格である魔物ばかりが表示され、下げていっても大差ない魔物が連なっている。すると声が説明を始める。
≪魔物は、相応のDPを使うことで生成されます。番を用意すればDPが無くても勝手に増えます。また、魔物は殺されるたびに弱体化し、三回殺されると完全に消滅します。魔物の中には、ダンジョンと相性のいいものもいます≫
「へー、じゃあ学者の説は正しかったんやな。少なくともダンジョン内では。」
スライムやらのザコ魔物以外は文字が暗くなっているが、構わず勝手に下にスクロールされ、一つの明るい文字の場所で止まる。
≪このダンジョンはナイトメアと相性が良いようです。相性がいいと、成長しやすくなったり、進化が起きやすくなったり、必要DPが軽減されたりします。早速生成してみましょう。最小DPで生成できるスライムかナイトメアを選んでください≫
ナイトメアもスライムも1DPで生成できるようだ。ナイトメアは3DPのところ、2引かれて1DPで生成可能なようだ。文字の横に(-2)とついているから分かりやすい。
「ナイトメアにしてみよ~。」
≪受理。ナイトメアを生成します≫
ナイトメアの文字に触れると、ダンジョンコアから数本の光の線が出て、右左に動きながらキリヤの胸元辺りの高さまで上昇する。光の線が通った後には骨組みのような半透明のナイトメアが。
≪生成、完了≫
声と共に淡く骨組みっぽいナイトメアが光る。そしてじわ~っと肉や甲殻が広がる様に出現し、黒光りする翅と甲殻、細くしなやかな触角、鋭い棘の生える足が生まれる。これぞ万人嫌う昆虫を巨大化させたそのものの姿の魔物、ナイトメアだ。
「お~…これが魔物生成なんか。出かたキモいけど。」
≪今はチュートリアル中なのでコアルームに出現させましたが、普段は侵入者のいない階層や部屋に生成出来ます≫
生まれたばかりのナイトメアはキョロキョロと辺りを見回し、己を産み出した親であるキリヤを見つけると、忠誠を誓うように足を曲げてお辞儀のようなものをした。
「かわいい~。」
キリヤが褒めると、ナイトメアは嬉しそうに体を上下させた。まるで腕立て伏せのようだ。その時、ナイトメアが光りだした!




