目覚めと悪死デント
死闘を繰り広げるマクラ―ゲンと錆びた木枯らし騎士。その一方、防壁に衝突し、気を失っているキリヤは退避してきた騎士団に治療をされながら、奇妙な夢を見ていた。
「アハハハ!アハ!アハハハハハァ!」
その光景は異様の一言。辺りは赤だったり青だったりの液体が池を作っている。その池に小島のようなモノが―それは死体が積み上がった丘。ヒトの体の部位だったり魔物だったりが捨てられた様に重なっているのだ。その上で自分は空を見上げ、笑っている。
「気持ちがいい…最高ッ!アハハハハハ!」
池にナニカの残骸が浮かぶ中で、キリヤは不思議な快感に酔いしれていた。乾いた喉に水を垂らしたような…渇望してたものを手に入れた時のような…血よりも紅い空の下、キリヤは笑っていた…その光景にノイズが入ってゆく…
――ヤ!――
キ―――!―
―リ
―
「うん?ん~?」
「キリヤ!大丈夫か?」
「僕~…どうしたの~?」
「目を覚ましたか!キリヤ君!ふう。ポーションが無くなる前に目を覚ましてくれて助かったよ。」
目を覚ましたキリヤの顔を覗き込んでいたのは、兜の隙間から心配と安心が半々混じった目が覗くアジカだった。
キリヤはアジカから状況を聞いた。キリヤが吹っ飛ばされた原因が前方でAランク冒険者のマクラ―ゲンと戦っていること、巣穴からナイトメアが出てくる気配がないことなどを聞いた。既にキリヤは夢のことを覚えていない。あれが異様でも、夢は夢…
「ん~、なんか大変そうだね~。あ、刺された~。」
「NOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!マクラーゲン殿がーーー!」
なんとなくマクラ―ゲンVS錆び騎士を見ていると、急にマクラ―ゲンの動きが鈍り、錆び騎士の刺突が腹を貫通した。剣が引き抜かれ、血が噴水のようにあふれ出る。その成り行きをアジカは頭―もとい兜を抱えて見ていた。
「うっわ。痛そうやな…。」
心なしかノヴァの剣身が震えてる気がする。さて、なぜマクラ―ゲンの動きが鈍ったか…視点を変えよう。
「お、頭の錆が取れたじゃねえか!」
マクラ―ゲンの血を吸い、錆び騎士の兜の錆が一部取れて口元と目元が確認できるようになった。
「どうせならその面拝んで―なッ!お前は!」
錆び騎士との鍔迫り合いに持って行き、顔を近づける。口元は少年の様相を残している。目は、かなり珍しい赤と金のオッドアイ。それを見たマクラ―ゲンは距離を取る。
「サーバント…なんでお前が?」
苦々しく言った。サーバント。かつて同じパーティーで苦楽を共にした仲間の名だ。魔族の集団との戦闘中、彼以外の仲間を救うために囮となり、命を落した。はずだが、現にここにいる。そこから導き出された答えは、
「そうか、拉致されてその呪いの武具を…クソ!」
剣を構える手が震えている。サーバントを囮に逃げた後に、振り切ったと思っていた後悔や悲しみが迷いを産み出している。殺さないといけないのは分かっている。でももしも助けられるなら…頭を振って考えを押し出そうとする。それでも葛藤が続けられる…
「ああああ!」
上段斬りをするが簡単に避けられる。数度打ち合いをするが思考が体の動きを阻害する。斬りつけは甘くなり、回避もままならない。その状態は隙だらけ。隙を突かれて鋭い突きを許してしまう。
「ぐ…かはぁ!」
腹を貫かれて口からも腹からも血を吐き出す。その血を浴びて錆び騎士―サーバントの纏う鎧の錆が剥がれ落ちる。この時点で少し使った武具と変わらないほどにまで錆が落ちている。腹から剣を抜かれたマクラ―ゲンは膝から崩れ落ちる。
「あれ、まずくない?」
「私が囮になりましょう。さすれば時間が稼げるかと。」
「そうですな…自分が危険に飛び込む様を見るのは奇妙ですがな。」
分身のセバスがそう言って本物が渋々ながらも了承する。分身を残して二人も撤退した。このようにしてマクラ―ゲンは敗北した。
「う~ん…まずないか?あの錆び騎士どうすんねん?」
「ね~、どうするの~?」
険しい顔でサーバントを見るアジカの鎧を、キリヤがちょんちょんと引く。
「何がだい?」
「あの人~、どうやって倒すの~?」
「今王都に手紙を送った。Aランク冒険者三人とSランク冒険者一人を要請しておいた。確かSランク冒険者が王都に滞在中だった筈だ。奴はかなり手ごわいからな。我々にできるのは応援が来るまで耐えるのみだ。」
「なんでSの人も~?」
Sランクだけでも十分かもしれんが、一応Aもな。と答えながら厳しく今の状況を見る。
「ふ~ん。でも、マクラ―ゲンさんがやられて黙っていられないよ~。」
そう言うとセバスの分身に翻弄されているサーバントの元へと走る。キリヤを止める騎士たちの声は無視する。
「え~い!」
丁度サーバントが背を向けたところでキリヤの横薙ぎが胴に当たる。
「うわ!気持ち悪!粘っこいつーかねっとりしとるっつーかそんな感じの魔力や…そんなもんが流れて来とる…」
ほんの少し鎧が欠けただけで途轍もないほどの魔力が吹き荒れる。最も近くにいたノヴァにその弊害が来る。
「オォォォ…血ヲ減ラサセルナ!」
欠けた部分が再生する。言葉からして血を使って再生したのだろう。しかしかなりの血を使うようだ。
「わ!ワイちょっと塵になっとる!消えろ!呪い!しっし。」
魔力に曝されてかノヴァの剣先が塵になっていた。進行しかけてる呪いを自分の呪いで中和して呪いを祓った。目には目を歯には歯をということだ。何気に凄いことである。
「オ前モ同類カ?」
「そうや。でもあんたとワイらは違うってことを教えたるわ!いくで!」
「おっけ~。」
「そうやキリヤ。本気でワイ振ってええで。そうでもしんと倒せんやろし。」
ノヴァの許可が出たためにフルスイングでノヴァを振る。サーヴァントは盾を構える。マクラ―ゲンがオーガーを叩きつけたのと同じような衝撃が走る。そこから流れるように激しい剣戟が繰り広げられる。
一進一退を繰り返し、相手の錆びはキリヤの攻撃で全て取れ、キリヤはマクラ―ゲンと同じように小傷を負っている。
「鎧は結構普通な感じみたいやな。まんま西洋鎧って感じや。おっと、横から来んで。」
錆が取れたので鎧の見た目がはっきりする。ノヴァが言った通り、見た目は一般的な西洋鎧そのものだ。能力がえげつないことを除いては。
「う~ん、色んな面が同等すぎて決定打がないんよな…でも、そういうときって大体どっちかが超強化して片方を圧倒すんねんよな。」
その兆しがキリヤ達にあるかサーバントにあるか…それが勝負の鍵だ。




