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放たれる、疑似滅星崩砕風砲

キリヤが不死鳥に意識を預け、不死鳥騎士となり敵を蹂躙してゆく。味方も回復しながら殲滅していく中、悪夢の母であるナイトメア・マザーが出陣する。


「くそう、相手の巣がダンジョンなら早く向かわねば…だがこのガーディアン硬すぎる!俺の剣戟を防ぐとは虫にしては中々にやるな。一匹一匹確実にやろうか。」


そう言うとマクラ―ゲンはガーディアンに向かって上段斬りをかます。今度は一刀両断出来た。重力をも使った一撃は流石に耐えきれないらしい。


一方後方。


「ふむ…これはこれは。少々防御の穴を突くのは難しそうですな…」


「ならば私が屋敷に戻り、準備をしましょう。分身の二人、時間稼ぎは任せましたぞ。」


「「御意。」」


「ということです。任せましたよ。ギリアラ様。」


「へ?ちょ、ちょっと!…あ~」


ギリアラが止める間もなくセバスは行ってしまった。何をするつもりなのか見当もつかない。でも蛇の如く易々と人ごみを抜けて行けるのは何故なのだろうか。


「キリヤは変になっちゃうしセバスさんは屋敷に戻っちゃうし…もー!」


周囲に火が降り注ぎ、虫と人が混ざり合って火を被っている戦況に頭をかきむしりはしなかったが、普通に頭を抱えたくなるギリアラ。


「マザーが出ただと!?突破されぬには…仕方あるまい。総員、戦線を維持しながら下がれ!」


無茶ぶりではあるが、アジカの号令で戦線を維持したまま前線が下がってゆき、密度が上がる。突破されにくくはなった。不死鳥騎士の殲滅能力もあり、まだまだ戦える。


『…む?』


不死鳥騎士がふと動きを止める。そして首を捻って後方を確認する。ノヴァは相変わらず振りっぱなしだ。


「皆さーん!」


急に戦っている全員に声が届く。この声と言えば。


「私はハナサ・ゴイムです!いきなりですが今風魔法で声を乗せて話しかけてます!」


冒険者や騎士にハナサってテンペス様の娘さんでは?と思い浮かぶ。次いで、困惑。街を作った人の娘という雲の上の人物が何故?という顔に。


「あと数分したらこの屋敷からすごいのが飛んでくるので射線上にいないでくださいねー!」


ノヴァは思う。こんな口調やったっけ?と。燃えて辛い思いをしながらも浮かんだ、最初ハナサは高圧的でTHE・お嬢様だったはずやで?という思い。もしかしたら性格を使い分けているのかもしれない。


「じゃ、警告しましたよー!当たって死なないでね!」


そう言うと声が途切れた。ハナサさんは何を言ってるんだ?戦う人は皆思った。屋敷の方から轟音が聞こえ、屋敷の天井が割れ、中から生えるように筒のようなものが出てきた。ソレがゆっくりとマザーの方へ向けられる。ここからマザーまでは数キロあるが…


『…なんだこれは?ッ!まさか!』


先ほどより妙な魔力の高まりを後方より感じていた不死鳥騎士は思わず目を見開く。冒険者等はナイトメアと戦いながらチラチラ筒を見ていた。そして屋敷の方から感じる魔力が爆発的に増大する。


『おい!指揮官!今すぐこいつらを射線上から退けろ!死ぬぞ!』


不死鳥は激しい口調でい言うものの、指揮官であるアジカは言われなくてもアレの危険性はすぐわかった。背中にゾワッとする魔力を感じたから。


「至急、館より直線上に居る者は退避しろ!今すぐだ!」


その鬼気迫る気迫に押されて直線上にいる騎士冒険者は即座に離れる。しかも余分に避けておく。何も起こらない…誰が思ったかそんな考えをした時、遠くの方でかすかに声が聞こえた。


「疑似滅星崩砕風砲…発射ァ!」


刹那、嵐より惨いモノが吹き荒れる。筒の経口と同じ直径の乱気流が館より直線上のナイトメアも地面も死骸もガーディアンも全て巻き込んで飛びぬけていく。地面がめくれ上がり、通り道にいた死骸や蟲は塵も残さず消え去える。唯一残ったのは体半分が消し飛んだマザーのみ。どうやらガーディアンを全て盾にして辛うじて生き延びたようだ。


『ぐお…なんという威力だ…死ぬかと思ったぞ。だがチャンスでもあるな。一気にマザーを叩き切る!』


「お前ようあれギリギリで躱したな…ワイは嵐の余波で死にそうやったで…まてよ、キリヤあれ撃てるんやっけ?あれをキリヤが…ヤバいな。乱用せんように言わな。」


『魔力開放!燃鳳斬!でぁぁぁぁぁ!』


ノヴァに纏わりつく炎が大きく、長く伸びる。その姿は長大な炎の刃。ノヴァを上段に構え、マクラ―ゲンのように一気に振り下ろす。マザーの体はさらに真っ二つに切れ、それぞれは高熱により一瞬で灰になり、さらさらと空気に溶け込んだ。


「おおう…えげつないなあんた。死骸も残さへんのか。まあ魔石もカスやし甲殻も大して強くもないなんで存在してるか分かんない魔物の死骸残す意味ないか。」


そう、ナイトメアはマザーでもナイトでも通常種でも素材も魔石もカスすぎるのだ。唯一ガーディアンの堅殻だけちょっと需要あるかなーくらいなのだ。そも、誰がゴキブリの装備や飾りを好き好んでつけるのだ?


「な、なんとか…なったのか?」


「あ、おいアジカ、それはフラグってやつ…といっても後はナイトメアだけやから消化試合か。」


マザーが敗れたことで討伐隊は一気に巣に進行する。ゆっくり、確実に残党を倒しながら進軍する。


「ほっほっほ。何とかなりましたねぇ。」


「あれ、セバスさんいつの間に…?」


気が付くとギリアラの隣にセバスがいた。セバスは館から突出している赤熱した筒…大砲に目をやっている。


『ふむ。もう良いか。おい、小僧。魔力を少しだけ分けてやる。あとは自分でやれ。はあ。慣れない体を動かすのは疲れる。』


「んあ…不死鳥さん、ありがと~。」


「おお!キリヤ!気を失ってしまうなんて情けない!ホントに心配したんやからな!キリヤなんやよな?な?」


「ごめんね~。」


炎の鎧が弾け、キリヤが目を覚ます。ふわふわゆっくりと地上に降りていく。体の内には燃えるような魔力が巡っている。魔力を譲渡され、魔力不足は解消された。キリヤもノヴァもニッコリ笑顔だ。


「さーて、ワイらもいくか。ダンジョンは一番乗りがもっとも得やで!はりーあっぷ!」


「は~い。」


キリヤは素早く前線に飛び出し、ぐいぐい巣の方へ進んでいく。


「な!抜け駆けだと!まてーっ!」


マクラ―ゲンが叫ぶが、子供相手にムキにならないの。と仲間に止められている。あの苦労性の二人である。制止されたマクラ―ゲンは仲間と共に渋々残党狩りに勤しんだ。


「…あれ、なんか順調やと不安になってくんな。こういう時って安心したら凄い強い奴が現れる―」


ノヴァがフラグを立てると、即行で回収された。キリヤの進路を断つように、なにかが空中から落ちてきた。


「わ~、なに~?」


「…」


がしゃんと音を立てた主は、全身鎧を着こんで、右手に盾を持ち、左手に剣を持っていた。装備しているものは全て錆びついていており、武器防具を覆う鉄臭い錆びの臭いが鼻をつく。


「血ヲ…寄越セ。」


いつだって強敵が現れるのは突然だ。錆びた金属が擦れる音を鳴らしながら騎士は動き出す。

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