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OWL

謎のナイトメア大量虐殺勝負を挑まれたキリヤ。結果は引き分けのようだった。


「すげえな!俺の愛剣とタメはれる剣なんて早々見れねえぜ?しかもお前のは片手剣ときた!悔しい!俺の鬼剣オーガーは破壊力が取り柄だからな…」


「ワイとしてはAランクとかいう人を辞めた奴の持つ剣と比較せんといてほしいんやけどな。」


普通、Aランクは人間じゃない。そう呼ばれても仕方ないくらい強い。とはいってもマクラ―ゲンは人間じゃなくオーガ(鬼人族)だ。燃えるような赤髪から一対の角が見える。


「こらー!マクラ―ゲン!また一人で突っ走て!」


「そうじゃぞ!全く。お主は魔物と聞くとすぐ走るんじゃから!」


「わりーわりー、でも面白そうじゃねえか。スタンピードとかよ。それに将来の有望な冒険者も見つけたしな!」


老齢で長い白髭を備えた魔法使いと、軽装で両手に小盾を装備した女性がマクラ―ゲンに近寄る。どうやら勝手に動き出したマクラ―ゲンを追ってきたようだ。


「あら、子供?なんでこんなところに?スマッシュ!」


「こんなところで話ができるくらいじゃ。ただ者ではなかろう。ファイアーアロー!」


「はは!俺はこいつを気に入ってるんだ。なあ坊主、後で模擬戦しようぜ?」


「いいよ~。」


と蟲が今も襲ってきてるのに気にも留めない四人。ナイトメアを片手間で倒しながら話す余裕があるくらい戦力の差があるのだ。一方、全く余裕じゃない女性が一人。後方部隊にて。


「イヤー!キモい!来ないで!」


鎖を振り回しながら決して近寄らせまいとしている女冒険者ギリアラ。この戦いでは蟲が嫌いとか苦手な人は参加していないのだが、巻き込まれたギリアラは必死に鎖をぶん回していた。嫌悪感を増幅させるナイトメアとは、すこぶる相性が悪かった。


「もー!折角こいつらとなるべく戦わないように後衛職の防衛をしてたのに!何で来るのよ!最悪だわ!」


そう、ギリアラは長距離から広範囲に攻撃する魔術師をナイトメアから守る役職に就いた。しかし間を縫ってナイトメアは攻めてくる。身の毛もよだつあのカサカサ動きで肉薄され…


「あ、しまっ―」


「気持ち悪いのは分かりますが、怪我をした理由にはなりませぬぞ?」


落ち着きを失い、ナイトメアに隙を見せてしまったギリアラ。迫るメガゴキブリを音もなく一刀両断したのは、執事服を着て、ナイフと言うには少し大きい刃物を両手に持ったセバス。その顔は散歩をしているかのように穏やかだ。


「ほい。ほい。害虫駆除は面倒ですねぇ。」


手に持つ大きいナイフとは別の普通サイズのナイフをどこからか取り出し、投げつける。少なくとも三体を貫通し、刺さった相手はピクピクと痙攣している。そう、毒ナイフだ。


「す、すごい。ただのナイフであれだけ…」


「要は使いようですよ。ふむ?お嬢さんのダガー、あまり使ってませんね?そうですね…鎖にでも繋げてみては?」


腰に下げてたダガーを見つけたセバスは、それだけ言うと前線と後衛側の中央で侵攻を防ぎに行った。早速ギリアラはナイフに鎖を巻きつけ、振り回した。面白いほどスパっと斬れる。気持ち悪さは鎖で殴殺してた時ほど無い。殴殺すると中身が飛び出てしまうから。今も全身が粟立ってはいるとはいえ。


「あの人…ほんとに何者なのよ…」


入り乱れる戦場の中、ピシッとした背筋のセバスは良く見える。しかも何かするつもりのようだ。


「敵が多いなら、私も増えれば良いのです。忍術、影分身の術!」


不思議な手の動きをすると、煙とともにセバスが増える。総数は本体合わせて三人。


「「「さあ、いきますぞ?」」」


分身したセバスが苦戦してる冒険者を助けたりしている。それを見た冒険者たちは驚いている。彼らは、セバスが執事服という戦闘向けでない服を着ていることではなく、別のことで驚いている。


「く、首狩り梟のOWLじゃねえか!なんでこんなところに…?」


「は?なんでここで朧梟の名前が出てくんだよ?」


「ほっほっほ。懐かしい名前ですねえ。まあ嫌な思い出なわけですが。」


「あのころと違ってまだ今の方が生き生きしてますからな。」


「あの時期に暗殺者ギルドを抜けてよかったですなあ。私の希望ができてからはもう人は殺したくありませんでしたし。」


冒険者の声に反応して三人のセバスが口々に喋る。同時に喋るのが驚きだ。基本、スキルの力では残像が限界だ。しかも本体とリンクした動きしかできない。


だが、ニンジャには分身という技が使える。各自バラバラに動け、なおかつ実体を持っている。それは、戦略に幅ができるということ。囮作戦などもしやすくなる。


「すごい…経験も技も桁違い。まあ数年宿の店主をやってた私と比べるのも烏滸がましいけど。あれほど…は無理でも、もっと強くなりたいものね。」


前線で熱狂、中線で混乱となった。戦い続けて数時間。キリヤやマクラ―ゲンなどの強者以外はだんだん尽きぬ蟲の軍団に疲弊していった。たとえ士気が上がっても、普通は何時間も戦えないのだ。


「ぐわ!」


「おい、大丈夫か?」


「まずい!そっち行った!」


「ああ、クソ!どんだけ湧き続けるんだこいつらは!」


終わらぬ悪夢に押され始める冒険者や騎士。それでもまだ保ってられるのは意地か根性か。だがこのままでは負けるのは確実。キリヤは切り札の一つを切る。


「ちょっとマズイね~。不死鳥~、力を貸して~!」


キリヤが指に付けた指輪を掲げる。肩甲骨あたりから炎に包まれた翼が現れる。広範囲に影響を及ばせ、回復も使える不死鳥は本当に切り札なのだ。


「バーニングウェザー!ファイアウェーブ!」


翼から羽の矢を飛ばし、羽ばたきで熱波を送る。これだけでもナイトメアがバタバタ死んでいく。そしてキリヤは発砲する、が。


「あ、弾切れだ~。もう撃ち切っちゃったの~?」


カチンと引き金の音がするだけで、まったく弾が発射されない。


「もう追加の弾丸もないみたいやな…」


「仕方ないか~。あ、暇だし~、名前つけちゃお~。」


炎をまき散らしながら考える。キリヤなりに頑張って考える。ノヴァはちょっとジェラシー。メインウェポンはワイやし。と思い直す。


「よ~し、ジュライザーにしよ~!」


「お~、ええと思うで?」


名付け完了。そしてあることに気付く。


「このジュライザーって~、魔力流せるみたいなんだよね~。」


「魔弾ってのができるかもしれへんな。構想はあるみたいやけど使いづらいとかんなんとか。銃の中に弾を作るイメージでやるらしいで?あのおっちゃんの設計図で読んだわ。実はチラ見しとったんやで。」


「やってみよ~。」


グリップから魔力を送り、固めて弾の形にする。そして魔力を破裂させて打ち出す。簡単なようで難しい。細かい魔力調整を沢山しないといけない。デメリットとしては結構魔力を消費することか。


「わあ~すご~い!」


炎の魔弾がナイトメアに命中し、爆発。しかもしばらく着弾地で燃え続けた。魔力が続く限り、これが撃ち続けられるという恐ろしさ。


「これは…またえげつないの作ったなぁ。こいつ才能すごいわ。」


キリヤは意外と才能タイプなのかもしれない。キリヤははしゃいで魔弾を撃ち続けた。


「う~…」


しかし炎をまき散らして飛んでいるキリヤが急に墜落する。不死鳥のこの翼。維持するだけでかなり魔力を食う。不死鳥がキリヤを掴んで飛ぶわけではなく、あくまでも力を借りているだけ…頼めばやってくれそうだが。


「お、おい!キリヤ!どうしたんや?…あ、アカン!魔力切れや!」


魔力切れとは、魔法やスキルに使う魔力が底を尽き、一時的にステータスが下がる現象の事だ。理屈としては、普段無意識に使っている肉体を補助する魔力の分まで切れた魔力を回復させる方に集中させるかららしい。逆もまた然り。


この状況での魔力切れは非常にまずい。キリヤのスキルは今は発動しない。しかも下は飢えた蟲だらけ。即座に群がられ、脚や腕に腹を喰われ始める。


『全く…仕方のない小僧だ』


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