貴族街へ
「お馬さん、可哀想…馬車も使いものにならないよ~。」
「ちょ、ちょっと!無視しないでくださいまし!」
上から目線に話してきたハナサを、怪我がないことを確認すると護衛に当たっていた騎士たちや馬車に目を向けた。つまりキリヤは無視したわけではないのだ。
「ムキー!」
上質で艶のある若草色の髪を振り乱し、地団太を踏む姿はどこか子供じみている…実際ほとんど子供と変わらぬ年齢ではあるが。
「うるさいなぁ、そんな喋る元気あるなら大丈夫やろ。」
「きやああああ!武器が喋ったあああ!」
「騒がしいわね…貴族の娘なら気品とかを大事にしなさいよ。」
とかなんとかあったが、寡黙な護衛を除いて話を聞く。
「私はお忍びでソーサヨリに来てたのですが…その後すぐにばれて連れ戻されてたら、いきなり襲われてしまって…」
「へ~。そうだったのね。王都から来たのかしら?」
「いや、確か王都の近くに貴族たちが住んでる街があったはずや。そっから来たんちゃうか?ちなみに王都は多額の資金が得られるし、貴族は優遇されてWINWINらしいで。」
「そ、そうなのよ。そ こ で、この私を助けてくれた王子様には恩返しがしたいわけですわ。だから貴族街に一緒に来てくれませんこと?」
しかし…ハナサの乗っていた馬車は破損し、負傷した護衛と馬もいる。この状態は到底貴族街に行けるものじゃない。普通は、だが。
「よし行こ~!」
「そうですわね…いくら近いと言っても流石に貴族街までは…へ?」
呆けるハナサは置いといて、ストレージから馬のいない馬車のような物を取り出す。そう、ソーサヨリに行くときに使ったあれである。
「貴方馬車を持っていらしたのね!し、しかし馬は一体…?」
「いないよ~。それより早く乗ってよ~。」
困惑するハナサ御一行。それもそうだ。動力もない物に乗るなんて気が触れてるのか?と正気を疑うだろう。だが、立ち往生してる中では仕方がない。乗り掛かった舟だと乗り込む。ハナサ御一行は護衛が三人、そしてハナサ。どう見ても入らないが…
「護衛を先に乗せて、余ったスペースに入ればいいと思うわ…もともと人乗せる用じゃないから、かなり狭いけれど…」
「ふ、ふふ!それくらい私でも耐えられますわ!我慢も時には大事と父上も言っておりましたから!」
絶対今はその時じゃないと思うのだが…とキリヤ以外の内心が一致した。護衛さんは言葉なくとも顔に表れてる。毎回こうやって振り回されてたのだろうか。
「う~ん、前は僕たちだけだったから大丈夫だったけど~、今は人乗せてるし~…落ちちゃうかな~?」
「なら柵でも作ればええんちゃう?」
そっか~と頷き、そこら辺の木をスパっと切って少しだけ頑丈な柵を手早く作って設置。あまりの速さにハナサたちは口を閉め忘れている。余った木材は括って一個判定にしてストレージへ収納した。また何かに使えるだろうから。
「う…狭いですわ…」
「我慢なさい!」
ぴしゃりと言うと、ギリアラは鎖を取り出していつの間にか現れたジェットパックに鎖を巻きつける。そして急加速!
「「「「うわあああああああ!?」」」」
馬には決して出せない速度を叩きだし、石などの乗り上げた衝撃で少し浮遊したりなどしながら貴族街の方向へ向かう。乗せられている人はあっちこっちへ揺さぶられ、ガッタンゴットン柵や天井にぶつかる。勿論乗せられた人間は全員リバースしたいる。
「うえええ…まさか貴族の私がこんな目に合うとは思わなかったですわ…」
「ま、まったくです…」
「柵に捕まってれば良かったじゃない…それについたわよ。」
「柵に捕まれっていわれましても…急に走り出してそれは…うっぷ」
出会ってから何も言わなかった護衛達の一人が口を開く。訓練された私兵なのだろうが、地獄より地獄な馬車シェイクに耐えられなかったようだ。そして顔といわず全身をオークリーダーのように青くしたハナサが出てくる。
「む、貴様らは何者だ?」
貴族街の門の前で検問をしていた騎士が、猛スピードで走ってきた馬無し馬車を疑わしそうに見ている。それもそうである。
「わ、私は…ハナサ・ゴイムです…わ。」
「こ、これは御失礼を!直ちに門を開けましょう!」
馬車を仕舞い、貴族街へと踏み出す。キリヤは平民+子供なので礼儀作法は全く知らない。まあソーサヨリの王様が細かいことを気にしない(?)人だから良かったが、一般的に貴族は傲慢だとか態度がでかいとかなんとか。
「あ、あまり他の貴族の方を見ずにしてくださいまし。嫌がる貴族も多いのですわ。(まだ気持ち悪いですわ…)」
「は~い。」
「ワイ、眼閉じとこっかな。」
「ノヴァは武器の装飾扱いになりそうね。(装飾だったら悪趣味だけどね)」
「なんか馬鹿にされてる気がすんねんけど?」
そしてキリヤ達は貴族街を進む。まだ進む。まだまだ進む。どんどん街の中央部へ。それと同時に見た目からして金持ちそうな人も増える。
「え、そんな中心なの?あなたの家。」
「中心どころかこの街を立ち上げたのは私のお父様ですわよ?」
「うっそぉ、マジで?じゃ、ハナサの父さんはテンペス・ゴイムか?」
「ご名答ですわ!剣にしてはやりますわね!」
うざぁ…と思ったけど我慢するノヴァ。そこから十分ほど歩いて、
「着きましたわよ!ここが私の家ですわ!」
無茶苦茶広い庭に、ソーサヨリ魔術学校とほぼ同じくらいの館。門は格子になっており、その門も大人二人分合わせてようやく届くくらい大きい。ハナサは護衛の内二人に目配せをして合図すると、門を開けさせた。ギイイと音がした。ハナサが屋敷に入るように促す。
「うわ~、広~い!」
中もデカい。玄関だけでキリヤの実家が丸々入りそうなくらいだ。キリヤの実家も、それなりには大きいが…
「ワイ、この家居心地悪いわ。キリヤがなんか壊したら思うと無いはずの胃が痛いんやけど。頼むでホンマに…」
「それよりもお父様に私の恩人を紹介したいですわ。セバス!」
「はい。何の御用で?」
「お父様の所へ案内しなさい。」
いきなり現れたセバスに少し驚くキリヤ達。セバスからは気配が全く感じられなかったからだ。
「承知いたしました。ではこちらに。」
淡々と事を進めるセバス。かなり鍛えられた執事なのかもしれないが、どこか引っかかる。そこで、ギリアラがこっそり鑑定を使う。セバスがギリアラの方をちらりと見るが、すぐに前を向きなおした。かなり慎重に鑑定した筈なのに、気付かれている…?
[セバス] 人間 固有職 アサシン執事
LEVEL 鑑定拒絶
能力数値
全鑑定拒絶
属性耐性
全鑑定拒絶
スキル
アサシン-気配遮断、暗器マスター、影隠れ、素早さアップの複合スキル。
執事-執事の仕事を潤滑にこなす方法が分かる。ナイフの扱いも上手くなる。
収納術-物を収納する技術が大幅に上がる。その気になれば体中に違和感なく物を携帯できる。
体術【LEVEL6】-基本的な体術を習得できる。このスキルのレベルを上げるには、基本的な体術から学び鍛錬すべし。
投擲術【LEVELMAX】-最大まで成長したこのスキルは、投擲したものを標的に命中させ、標的を穿つ為に投擲が強力をより強力にする。
…強すぎるのではなかろうか。




