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ノヴァ、魔剣と間違われる

勇者と戦いをすることとなったキリヤ一行。さてさてどうなることやら…


「ゼアああ!」


キリヤに素早い動きで突きを繰り出す勇者。その姿はまるで一本の槍のよう。


「愚かな者よ…賢者と呼ばれる所以(ゆえん)、しっかり身に焼き付けるのですぞ!」


「支援しますわ!」


「ま、子供を相手にするよりは楽しめるかなァ!」


ギリアラに二メートル弱ある大剣が縦に振るわれる。横っ飛びで回避するとそこに魔法弾が放たれる。色々な属性を纏った危険な技だ。


「舐めないで欲しいわね!」


日は浅いものの、戦闘経験はある程度積んでいるギリアラ。こんな舐め腐った攻撃くらい、易々と躱せる。


「ノヴァ~、サポートお願いね~。」


このまま黙ってやられるわけにはいかない。ギリアラは良く見て避けるを徹底。キリヤはノヴァと共に勇者の対応をする。


「右!左!跳べ!さすが勇者やな。なかなか隙を見せへんで…」


「まだノヴァは抜かないかな~。魔法だけで様子見で…」


突きを躱し、そこから繋がれる連撃をノヴァの指示に従って避ける。


「どうしたどうしたあ!避けてばかりとは、話題の少年なんて大したことないなあ!」


「む~!熱線!」


イラっと来たキリヤは、頬を膨らませながら熱線を出す。当たれば万物を即溶かす熱線を掌から放出する。


「えい!えい!」


キリヤが手を振るごとに連動して熱線が動き、勇者も思わず動きを止める。触れるもの全てを焼き尽くす熱線を剣の様に扱う。例えるならばビームサーベルと言える。実はノヴァに、


「魔法に大事なんはイメージや。キリヤはそのイメージを実現させんのに十分な魔力を持っとる。やからキリヤの思うように魔法を創るんや!魔力効率は後でもええしな。」


と宿に泊っている時に言われ、自作魔法 ビームサーベルを今創り出したのだ。何と言うか、キリヤは天才肌だ。大抵のことはできてしまう。


「くっ面倒な!!」


悲鳴に近いような声で悪態を吐く勇者。熱線は太いので、どうしても回避に体力を使ってしまう。一方ギリアラは三対一でやや苦戦を強いられていた。


大剣の一撃を避ければ魔術が追撃し、こちらの攻撃を当てても僧侶が回復する。さらにその僧侶が身体強化の魔術を仲間に施しているからさらに厄介だ。彼らの強さの秘密はバランスの良さで、足りないところを補っていく戦法がかなり強力だ。


「鎖術 円!」


鎖術 円は防御型の鎖術。鎖を振り回して円を描き、いなしたり弾いたりする。それでもキツイが。


「む~。あっしの大剣がうまく決まらない…」


「負けるわけにはいかないんですよ!」


「補助 速…補助 力…」


「ぐ!鎖術 煙!」


鎖で地面を払い、砂埃で攪乱する技。


「シルウィンド!」


しかし風の魔術で簡単に払われる。賢者の魔術は出が早い。


「鎖術 炎!」


鎖を引きずりながら間合いを詰める。狂戦士の横薙ぎを躱し、摩擦で鎖を発火させながら叩きつける。疑似的な炎鎖を再現する技。この三つは同レベル時に覚えた。中々汎用性高そうである。


「クハッ!おもしっれえ!だがこれを捌けるかなア!『バーサーク』!」


なにやら赤いオーラを纏った狂戦士。そして超スピード斬りかかってくる。避けよう地面を踏むと、グチョっと音がした。


「ハハハハ!泥化魔法だよ!」


地面が泥だと滑ったり足を取られたりで回避できない。


「ギリアラ!」


それを見たキリヤがカバンから魔法陣が描かれた布を取り出す。ストレージだ。


「ジェットパック!間に合ってぇ…!」


ジェットパックを召喚し、魔力を注ぐ。しかしなかなか加速しない。それでも十分に早い。勇者の「僕を無視するな!」という声が聞こえたが無視する。


「ノヴァ、いけるっ?」


「安心し。あれくらいの剣でワイは欠けたりなんかせえへんわ!」


タイミングを合わせて魔力を切る。慣性を利用して丁度狂戦士の前で止まる。


「うっ!!!!!!」


凶悪な振り下ろしをノヴァで受け止める。地震と見紛うほどの衝撃が走り、キリヤが杭さながらに地面に刺さる。ダメージはゼロに等しいが、地面が耐えられなかったのだ。


「「「「な…魔剣ッ!」」」」


ノヴァを見た勇者パーティが一様に叫ぶ。追いかけて来た勇者は足を止め、狂戦士はオーラを切らす。僧侶も賢者も詠唱を中断した。


「魔剣じゃないよ~?ただの呪いの剣だよ~?」


「魔剣…?て何かしら?」


「まあワイの見た目は邪悪やからな。忘れがちやけど能力も邪悪なはずやで…」


勇者達は顔面蒼白に、一人生き生きした顔で叫び声を上げる。


「貴様…人でありながら魔族に魂を売ったか…!」


「穢れた者の武を持つとは…そこまで腐っていたなんて…!」


「いつかその身、滅ぶことになりますぞ…!」


「魔剣持ち…俄然ワクワクしてきたッ!」


なにやら勘違いしてるパーティ。そもそも魔剣の定義とは、上級の魔族が持てる特殊な武器のことを言う。剣とあるが、槍でも弓でも何でも魔剣と一括りにしている。魔剣の真価は所有者に利のある効果を生み出し、他に害をなす力。暗行がソーサヨリ全域に呪いを掛けれたのも、魔剣のおかげである。


魔族との戦闘ではそれが非常に厄介で、おそらくノヴァの力で知らず知らずに能力低下させられているとでも解釈しているのだろう。


「だ~か~ら~、ノヴァはただの呪いの剣だって~!」


「呪いの剣だったとして、人が所持していて正気を失わないなんてありえないだろう!」


「確かに(ボソッ」


「おい、ギリアラ…」


「貴様、何の魔族に魂を売った!答えろ!」


「いや、売ってないし~。」


「シラを切るつもりか…」


魔剣は基本上級魔族しか持てない。だが、上級魔族と契約することで契約元の裁量で魔剣を使えるようになる。人族はこの上級魔族との契約を“魂を売る”と呼んでおり、契約者のことは“半魔”と呼ばれている。教会の働きにより、半魔の数は減っているらしいが…


「ええい!半魔に言葉など必要あるまい!」


剣を持ち直した勇者が切りかかって来そうなところで、複数の足音が聞こえてきた。


「何事ぞー!」


おそらく先ほどの衝撃を感知したであろうソーサヨリの騎士団の声。勇者と交戦した、なんて知られれば、さすがにこちらの分が悪くなる。


「逃げるで!キリヤ!」


「う~、フレイム・ウィング!」


「わわっ!待ってよぉ!」


キリヤが飛び立って姿を消す。足をギリアラに掴まれながら。


「おや、勇者殿でしたか。なにかこの辺りでありましたね?」


「ああ。半魔が出て、襲われたんだ。」


「なんと!急いで報告せねば…」


ザワついている中、一人勇者はニヤリと笑う。まさか国を救った英雄が半魔だと知ったらどんな顔をするか…そんな考えを秘めた邪悪な笑みだ。


「ん?不死鳥の…羽根?」


その頃、周囲を警戒していた騎士の一人が紅い羽根を見つけた。一方、雲より上にて飛行していたキリヤ達はもう大丈夫だろうと思って高度を落とし始めた。雲を抜けて早々目についたのはゴブリン数匹に囲まれて襲われている華奢な馬車だった。



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