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呪われた剣と町へ


初戦闘を勝利してから数時間後、キリヤは家でのーんびり寝ていた。


「なあ、あんたいつまで寝るんや?」


呪いの剣が痺れを切らして話しかける。


「男なら冒険とか旅とかに憧れるもんなんちゃうんか?」


無駄だとわかってはいるがつい話しかけてしまう。そんなことよりも心配なのが…


「こいつホンマに寝てんねやろな…死んでないよな?もしかしてワイ持ってたら体力取られるんかな…」


大丈夫。普通に寝ています。

結局キリヤが目を覚ましたのは明日の朝で、本人は早く寝たから早く起きれたと嬉しそうだった。


「キリヤ、そろそろあんたに甘やかすのはやめにします!ある程度旅の準備はすましておいたから成長するまで家には戻らないこと!いいね!」


キリヤのお母さんが朝一番に宣言した。いきなり独り立ちすることになったキリヤ。突き放すような母の言葉の裏には、キリヤに強い男になってほしいという想いがあった。


「…わかった~じゃあ行ってきま~す。」


お母さんが準備してくれたバッグをもって外に出る。追い出されたというのになんとも危機感が無い。お母さんは心配でたまらないけどキリヤのためと思って追い出してくれたのだ。呪いの剣は、

「あんたええんか?追い出されてもうたで?」


と声をかける。キリヤは何も答えないが、ほんの少しだけ涙が頬を伝っていた。呪いの剣は村を出るまで何も言わなかった。


「さて!村出たしなにしよか!ワイからするとそこらへんの魔物蹴散らして血を吸わせてもらいたいもんやけど…戦闘訓練も兼ねてんねんけど、どうや?」


呪われた剣が提案をし、他人に合わせることが主な行動のキリヤは魔物を探しにいった。

適当に歩いていると、スライムが現れた。決して強くはないが、レベルが低い者が油断するとやられてしまう程の戦闘力はある。


「ザコやな。ワイが指揮したるからそのとうりにすれば力加減がうまくいくはずや。」


「は~い。」と返事をしたキリヤはスライムに対して剣を向けた。スライムはビクビクして怯えている。今にも逃げ出しそうなほどに。


「まずは軽くつつく程度にしてみ、それで後々判断するわ。」


「じゃ~あ…これくらいかな~?」


スライムを剣でツンツンしてみると、剣の先が触れた瞬間スライムはぶしゃあと音を立てて破裂してしまった。色付きの水たまりみたいなものになったスライムを剣が吸収した。


「スライムでこんなもんか…まあええ感じやとおもうで?」


「じゃあこの調子でどんどんいこ~」


こんな感じで周辺の魔物をつついていると、剣の吸血回数が10になったことでスキルが解放された。


「やったで!ワイのスキルが解放されたんや!早速ステータス見てみよ!な?な?!」


興奮しながらステを見ることを促し、キリヤがそれに応じてステータスを表示した。


呪いの剣


力 37 属性 呪


スキル

呪い-装備が外せなくなって、体の自由がきかなくなる。呪い耐性が上がると緩和される


吸血【LEVEL2】-敵を倒すたびに攻撃力+2とHP回復


魔力蓄積【LEVEL1】-敵を倒すたびに剣に魔力が蓄積され、剣から魔法を出せるようになる


「おお…これがワイのスキル…」


呪いの剣は思わず感嘆の声を上げる。誰であれスキルが解放されると大喜びするものだ。


「じゃあ~もっと頑張って魔力ためないとね~」

といってもキリヤの魔力は70。この数値まで近づけるのは中級の中でも上の方なので、あまり蓄積させる意味が無い。魔力数値が15以上であることと、呪文を知っていれば誰でも初級魔法は使えるが、中級以降は魔力が30以上かつ杖が無いといけない。


もう少し詳しいことは後々キリヤが学ぶので割愛する。


「ワイのスキルも解放されたし町へ行こか。詳しくは着いてからや。」


町へ行けば依頼も受けれるし宿もある。


「でも~ほとんどお金ないよ~?」


「まあワイのスキルのせいで売れる素材が少ななってまうからな…」


スキルの吸血は全てを吸収するわけではないが、下手したら希少な素材も吸収してしまうかもしれない。仮に依頼をこなしても財布が寂しい日が続くだろう。それを防ぐにはスキルのレベルを上げて吸血量を下げるしかない。


「こっから町まで12分ってとこやな。急げ急げ!」

「は~い」


―30分後


「まだ半分も進めてないやんけ!まだ魔物に襲われてるわけちゃうのになんでこんなかかんねん!」

「だってこの花とかきれいじゃ~ん。あ!薬草だ~とっとこ~」


「まったく…日ぃ暮れてまうから早よ行け!」


―さらに30分後


「よーやくついたわー!こいつヤバいわ。もう夕暮れになってもうたで。」


「で~町で何するの~?」


一時間程歩いてようやく着いた町。ド田舎から来たキリヤにとっては見るもの全てが目新しいものであった。


「きょろきょろしてないで冒険者登録しにいくで!割とここでかい町やから登録できるはずや。途中の小さい村は無視して正解やったな。」


冒険者登録するために登録所を探す。看板があったのですぐわかった。


「では、ここに住所や名前などを記入してください。」


登録所にて受付のお姉さんに手配(てはい)してもらう。キリヤは母親の指導で少しだけ字の読み書きができる。しかしこの世界の識字率は割と高い。10歳にもなればほとんど読み書きはできてる年齢。要はキリヤは勉強をサボっていた。


「え~と…住所はヒガシアビ村の、キリヤ・ミラージュ…これでいいですか~?」


「オッケーです。では少しお待ちください」


受付のお姉さんが奥に入っていき、近くの椅子で座って待つ。登録所は狭いがちゃんと手入れされている様子。


「ねえ~、君はどうしてそんなに詳しいの~?」


「ふふん。これでもワイは世界を回ったことあるんや!それくらいちょちょいのちょいやわ!」


「すご~い」


と話していると登録が完了した模様。呼び出しがかかって受け取りに行く。


「こちらが登録証明書になります。こちらを持っていれば色々便利ですよ。紛失にはくれぐれもご注意くださいね。」


登録証明書と言ってるが、実際カードみたいなものだった。まだキリヤは10歳だが、特に問題はなく、3歳とか5歳でも登録はできるようになっている。名前と出身地が書ければだが。登録が緩い理由は、脛に傷を持つ者は少なからず冒険者になるからだ。


「さてと、登録はできたから依頼こなしに行くで!」


「依頼貼ってあるところどこかな~。」


近くにいる人に聞いてみるとまっすぐ行って左にあるらしい。ここはギルドの設備が飛び飛びに配置されている珍しい街なのだ。ギルドとは、冒険者の管理とかをしてる団体である。


「ようこそ!バシロ依頼受付所へ!」


言われたとおりに道を進むと受付の方が挨拶をした。とりあえず依頼が貼ってあるボードに案内してもらって、依頼内容を読んでみる。


「う~ん…あんまりええ依頼ないなあ…ホーンラット10体で銅貨3枚はしょぼいし…お!このミニワイバーン討伐はなかなかええけど遠いな…キリヤ、あんたはどう思う?」


「これにしようかな~。」


目に留まった古ぼけた依頼書を指さす。


「うわふっる!汚い依頼書やな…なになに?依頼者はバシロ町で、対象はトラップラントか…町から依頼が出てくるだけあって報酬金が高いな。銀貨二枚もあれば今日の宿に泊まれるで。どうする?」


キリヤは即依頼をカウンターに持っていく。受付の方は不安そうな顔でこちらを見る。


「こちらはCクラス討伐クエストとなっていますが…本当にこの依頼を受けますか?」


どうやらさっき登録したばっかりなのを知っているらしい。そりゃ真新(まあたら)しいカードを持ってるから…


「は~い。これ受けま~す。」


「承知致しました。ではいってらっしゃいませ~!」


少々迷ったが無事に目的地につく。そこには大きめのほら穴があって奥は真っ暗になっている。


「もう夜になってもうたな…ほんでここどうやって照らすんや?」


「大丈夫だよ~。松明(たいまつ)あるし~」


バッグの中から松明を取り出し着火する。


「それあるなら安心やわ。じゃあ行くでー!」


ゆっくり慎重に進んでいくキリヤ。


「それで~、なんで受付の方はあんな顔したんだろ~?」


「そらそうやわ。登録したてのEランク冒険者がCランクの魔物を討伐しに行くんやから。」


この世界にはEからSクラスまでの魔物がおり、それに倣って冒険者のランクもEからSランクまでとなっている、今回のトラップラントはCランク昇進試験としても用いられる魔物で、名前通り自身の体が罠のようになっている植物である。


「ここが最奥か~…何もいないね~。」


「変やな?綺麗な花を(おとり)にして捕らえるはずなんやけどな…」


とはいえ流石に何もないわけでもなく、隅っこの方に宝箱があった。


「わあ~宝箱だ~」


トテトテと宝箱へ近づくキリヤ。


「ちょっと待てキリヤ!怪しすぎる!近づいたらアカン!

静止を聞かずに宝箱まであと数センチというところでいきなり地面が揺れて巨大な植物が

キリヤを飲み込んだ!


「わ~なにここ~あったか~い!」


「アホか!ここは胃の中や!はよ出んかい!」


バッグに入ってる呪いの剣を取り出し、なでるように振るう。ズパッという音をたて、胃が割れ、中から脱出する。


「でっか~い!こんなに大きいんだ~。」


全長5メートルはあるかと思われるトラップラントが現れた。さっきの宝箱が頭と思しき高い位置へあるのが見えたが、一瞬で花弁に覆われ見えなくなる。


地面から数十本の触手と二本のぶっとい花が現れた。その花は非常に美しく、腕としての機能もあるのか、胃を裂かれた怒りで花を叩きつけている。


「んなアホな…こんなでかいトラップラント見たこと無いで!普通はせいぜい大きくても1メートルちょっとやのに…!」


こんな恐ろしい怪物をキリヤは倒せるのか?



もし面白いと思っていただけたなら、評価をしてもらえるとモチベがすんごく上がります。

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