隠れ家的な店
他数冊本を読み終えたキリヤは、ソーサヨリ魔術学校の見学を終えることにした。次の目的地はもちろん未定のまま。校長に挨拶をしようとキリヤは思ったが、教頭は顔を曇らせ、こう耳打ちした。
「申し訳ありません…魔族襲撃の日から姿が見えないのです…あの方は強力な重力魔法の使い手、死んだとは考えられませんが…」
どうやら校長は生徒を守っていたらしく、ヒイルドも参戦していたものの、途中で姿を消したそうな。また、関係あるかどうかは不明ながら、在国している有名な魔法使いも数名姿を消しているとのこと。
「きな臭いなぁ…覚えといて損はないかもな。」
「今日は~、一日ありがとうございました!」
「ほほ、いえいえ。またいつでもお越しくださいな。」
にこやかな笑顔を浮かべ、ソーサヨリ魔術学校から送り出してくれる教頭。
「それでは、また会える日まで。」
「ばいば~い」
さてと、とりあえずギリアラ達を探そう。とノヴァが言おうとした途端、何かが学校を区切っている柵を越えて飛んできた。咄嗟に手に取るキリヤ。
オレンジ色の袋のようなもの。中には硬い箱のようなものが…紐が通されていて、首にかけられるタイプだ。
「ん~?なんだろうこれ~…」
「お守りよ。」
いつの間にか柵を挟んでヨモギ委員長がキリヤの目の前にいた。
「ま、気休め程度だけど。それでも守ってはくれるんじゃない?」
何気ない言い方だ。でも…キリヤは気づいていないが、耳の端が真っ赤になっている。あ~青春やな…とノヴァは思う。
「ありがと~う!」
「んッ!」
キリヤの光が溢れてきそうなくらいのスマイルを受けて空を仰いでしまうヨモギ。彼女は耐えかねて学校へ駆けていった。そこへ、どこへ行っていたのやら、ギリアラ達が戻ってきた。
「あら、どうしたの、その袋。」
「貰ったんだ~。」
「わわ、なんかすごい魔力内包されてますよ!?」
王女は何かしら感じたようだ。キリヤはお守りを首にかけ、減った腹を満たすためにぼちぼち商店街へ歩き出した。
城下町の商店街
「これ美味し~ね~。」
「熱いです…」
ここに来る前に買った、長くカットされた切り身肉を串に刺し、焼いただけのシンプルな料理。しかしなかなか美味しい。
「お、そこのボウヤ、姉ちゃん。あんたら旅人かい?なら一本このナイフを携帯したらどうだい?」
成り行きで商店街にやってきたキリヤ達。言い方が悪いがむさ苦しいようなおっさんたちが声を張り合って客の興味を引こうとしている。どこも魔族襲撃でカツカツなのだろう。ほぼ露店祭りである。
「…同じ刃物やからかなあ、なんとなく良し悪しが分かる気がするで。あのナイフ、見栄えはええけどすぐ刃こぼれしそうやな。でも耐久自体は高いか?」
行く先々でノヴァが批評してるのを片耳で聞きながら、ふと裏路地らしき場所にある看板が目に入る。
「う~ん?」
「どうした?」
「なんか~お店があるように見えるんだ~。行ってみてもいいかなあ?」
「私は良いわよ。そこで新しい鎖売ってるかしら。」
「わたしは…キリヤ様に任せますぅ。」
合意が得られた。キリヤは裏路地っぽい場所に入り込み、看板を読む。かなり擦り切れて読み辛いが、どうやら鍛冶屋のようで。
「とりあえず~入ってみよ~。」
ドアノブに手をかけるが…開かない。キリヤがめっちゃ力を入れるとバキッと音を立てて開いた。開く時点でギギギと擦り切れてはいたが…
「それ壊してないやろな…?ほんで、閉店してるとか…ないやろな!?」
ようやく入れるようになったのでキリヤとネイク様が細い体を活かして滑り込む。ギリアラは胸が…まあ時間がかかるだろう。
「あ?だれだあんたら?」
「あれ~?バシロの方にいたおじさん?」
「おい、誰かと勘違いしてんじゃあねえのか?」
おやっさんの第一声はともかく、そこにいるのは確かにバシロ町にいた鍛冶屋。しかしゲッソゲソに痩せてるし無茶苦茶エグイ隈がある。服装も体型も違うが、顔は確かにバシロ町の彼そのものである。
「…もしかしてあんたが言ってたそいつはバシロ町最高の鍛冶師とかほざいてなかったか?」
「え~?なんで知ってるの~?」
「ああ、あいつは俺の弟だ。ったく、店を持つんなら連絡しろよな…ま、バシロ町に用事があったし、ついでに見てやるか。」
あ、弟思いの人なんやな。とか思ったけれど踏みとどまるノヴ
「おいそこの剣、てめえ変なこと考えてんだろ。」
「うわ、ワイの考え読まれとる!」
「俺には武器と話せるスキル持ってんだよ。考えも、話してりゃあ察し付く…」
さも当然とばかりに自分のスキルを明かしてくれるおやっさん。どうやら武器と話せるスキルの”武話”を持っているという。長年鍛冶を弛まずし続けねば得られぬ境地らしい。
そういえば似たようなことができる人が同じくバシロ町にいたような。
「で?そこに俺の作ったモンがある。見てけ。」
「ていう割にはあんまええ感じの刃物が無いように見えるんやけどなあ。見た目は良いんやけど。」
雑多に置かれた武器をノヴァが見定める。お世辞にも業物とは言えない。
「ま、当たりだな。こんなモンは阿保が買うものだ。さ、ちとこっち来いや。」
ちょいちょいと手招きして呼ぶ。キリヤはトコトコとカウンターへ。ちょうどたわわとしたものをなんとか押さえつけてギリアラが入店した。一応顔は入っていたようで、会話は聞いていたらしい。同じくキリヤの横へ。
「ははは。あんたにピッタリなもの、あるといいな。」
カウンター裏のボタンをピッと押すと、けたたましい音を振りまきながらガコガコと姿が変わるカウンター。現れしは綺麗、かつ丹念に創られた極みの武器たち。人生を代償に培ってきた技術を持ち手の端まで詰め込んだ業物。どんなに厳重に隠してるのやら。
「からくりをいじるのはシュミ程度だが…客を驚かせんのはいつでも楽しいもんだ。」
呆気にとられるキリヤ達を見て、乾いた笑いを響かせつつ、しっかりそれとなく武器の下見を促す。寸分違わず並べられ、使ってくれ~使ってくれ~とでも言うようにギラギラ光る武器を眺める。
「ねえ、この変な形した四角いのはなんなの~?」
「ん?ああ、海に流れ着いた設計図を俺なりに解釈して造ったモンだ。出所は知らん。そこら辺の火薬草を粉にして薬莢に詰め込んで弾用意すりゃあ簡単に使える。反動が洒落になんねえからそれくらいの大きさで打ち止めなんだよ。」
「銃やんけ!あれ結構複雑やったはずなんやけどな…あんたの腕前が良いだけなんやろな。」
(ん、このナイフ…良い!この曲線、セクシーで、それでいて力強さを感じる!露店で売ってるのより全然イイ!)
「そう言ってもらえて嬉しい限りだな。(変な気を感じたけど気のせいだよな…?)」
キリヤは『銃』とノヴァが反応したナイフを買った。決して安くは無かったが、王より承った金額の三分の一ほど。まだまだ余りはある…
「毎度アリ。あと、これ持ってけ。ベルトとホルダー、予備の弾数発だ。」
「ありがとー。」
ベルトを腰に巻き、銃をホルダーへ。さらに弾を入れておくスペースまである。非常に便利である。
「ぜんぜん凄さが分からなかったです…」
「私もわかんない。でも何か凄みはは感じた。気がする。」
鍛冶屋を出て、何する?というところに丁度よく来るのがご都合展開。一人のポストマンがキリヤ達に活発な笑顔で人ごみをかき分けてやってくる。目印は赤い帽子に手紙の刺繍が施されていること。
「あら?私たちは手紙を出した覚えは無いのですが…」
「うわ~凄い美人…いえ!あなた方に国王様が手紙を配達するようにと!では私はこれで!」
惚けていたポストマンは必死に仕事だと頭に念じることで正気に戻った。で、手紙を読むと…わりと長いため色々端折る。
王様曰く聖剣を見ることを許可するとのこと。さすがに兵装の一端を担っている我が国が言えばさすがのロッズナイト王国も無視出来ないだろう!とのこと。確かに書いてあることは真っ当だが…なんとなく不安な感じがする。
さらに、冒険者ギルドに行ったらクラスアップさせるよ!とも。ギルドに顔出ししてないので不安であるが。
「ま、とりあえず行くとこ決まったし、ギルド行きましょうか。」
といってもやることは受付で話を聞く。
「じゃあCランクです。おめでとうございます。本当は試験とか何やら必要なんですが…」
と。特に話すこともないくらいあっさり上がる。C=割と上位なのだが、ほとんど苦労してないせいか、どーも実感が薄い。最低ランクからそこまで上がれたのだから、大出世である。
「やり残したことは無いし、王に別れの挨拶していかないとね…明日。」
「ふえぇ…キリヤさん達、もう行っちゃうの?さみしいです…」
「また会えるよ~。その時はもっともっと遊ぼうね~!」
「…!はい!」
キリヤの言葉を聞いて、次にキリヤに会う時が非常に楽しみになる。また、彼女は決意する。キリヤと再会するまでに、素晴らしい女性になって見せる、と。そんなことは露知らず、キリヤは三人と笑顔で宿に戻った…
あの鍛冶屋がいた場所は非常に目立たず、被害も無いに等しかったようです。目のクマはただ仕事に熱中してたら出来ただけです。




