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亜人

「私、少しなら過去が見れるんですよ。無意識なのが難点ですが…」


少し話にくそうに打ち明ける犬の亜人。犬の血が濃いために、若干鼻が高い。犬耳も微かに見える。不安そうに垂れ下がっているが。


「面白い力やな。自分で制御できひんのは不便やけど。」


「見えました。私の兄が、死ぬところ…」


「えう…」


キリヤの背に冷たいものが走った。この手で殺したのはキリヤ本人だ。まさか、目の前のこの人が親族だとは夢にも思わなかった。


「あ、気にしなくて大丈夫ですよ。兄は…魔物の血を多く受け継ぎすぎました。」


事前知識として、獣人の始まりは魔物と人間の混血であり、魔物の血が強い方は獣人。つまり魔物として、薄い方は亜人として認められていると教えられた。


例:エルフはドライアド、人魚は魚型の魔物、ドワーフはおそらくサイクロプス等の混血と言われる。


やはりその出自故、特殊な能力を持つ者も多い。だから彼女も過去視を持っていたのだろう。


「あいつは、私たちを捨てました。私と母が生きていたのは、兄の最後の情けなのでしょう。むしろ、あいつを倒してくれて嬉しいくらいですよ?」


「そ~なんだ~…」


儚いにこやかな笑顔を見せる彼女だが、キリヤは引き攣った笑みしかできない。彼女はそれじゃあと言うとどこかへ去っていった。


「…聞かなかったことにする。」


ただでさえ渋い顔を渋くしている八百屋のおやっさんに印見せつつ代金を払って、王女の元へと戻る。


「はふう…美味しいですう…」


ゆるみ切った表情でリンゴを頬張るネイク。公園のベンチで顔をさらけ出していても、通行人が違和感を持たないのは性格的に民衆に顔を出さないからだろう。


「なんだかお城で食べるリンゴよりも美味しく感じますぅ…」


自分の世界に入っている時は、どもりながら話している時とは違い語尾や話し方がしっかりとわかる。むしろおどおどしていないほうが可愛い気もする。一方キリヤは先ほどのを引きずっていた。


「気にしすぎもアレやで…キリヤ。」


「解ってはいるんだけどね~…」


何かを察したギリアラがなんとなく話題変更。こういうときは話を変えるのが一番だと考えているのだ。


「次はどこへ行きましょうか…あ、魔術学校行ってみない?」


「私、不安です…」


「大丈夫よ。」


「ピ!ピー!ピピ!」


話をしている最中に、妙に甲高い鳥のような音が聞こえる。ノヴァが視線を移すと、変な飛行物体を目撃した。姿は鳥のようだが、魔法陣のようなものが刻まれた木版や金属などで構成されている。


「ピィィ!」


ひと鳴きして足に掴んでいたものをキリヤの膝に落とす。キリヤが封を開けると、手紙が入っていた。


ふっふっふ!ついに僕は契約の指輪の契約数を増やすことに成功した!今すぐにでも来てもらいたいところだが、どこにいるのかわからないから、この届ける君一号に持ってって貰ったのさ!こいつはソーサヨリ王国くらいまでなら一日で飛べる優れものだ。これが普及すれば僕はもっと有名になって、魔道具学も人気の科目に…おっと、ついつい書きすぎた。じゃあ、返事は届ける君一号に持たせてね。 

                                ソウゴより

「ふ~ん…」


手紙の裏には昨日の日付が書いてあった。高速で動けるというのは本当らしい。速すぎるような気も。


「今からソウゴの所に行ってくるから~、ちょっと待っててね~。」


「いや…でもこっからバシロ町までは結構あるわよ…この鳥だって一日かかってたのよ?」


「フレイム・ウィング!」


さっと指輪に手をかざし、魔力を与えて力を解放する。すると、キリヤの肩甲骨辺りから不死鳥の翼が躍り出た。


「じゃ、すぐ戻ってくるよ~」


そう言い残し、キリヤは消えた。いや、赤い軌跡を残しながら音速に迫る速度でバシロ町の方角へ飛翔した。さらに飛び立つ際、物凄い風圧がした。王女、ギリアラや草木が風を受け、同時に熱波も食らった。


数十分後、ホカホカした顔でキリヤが戻ってきた。


「もう一体Sランクの魔物が契約できるようになったよ~。」


「ソウゴすごいわね。あいつこれ商売にしたら儲かるんじゃないの?」


「50個くらいの指輪が無駄になってようやく確実に進化できるようになったんだって~。」


「熱意すごいよなあ。それよりもキリヤが異様に早く来たことにビビってたな。」


ソウゴを賞賛しながらソーサヨリ魔術学校に足を運ぶ。理由は新たな魔術を習得することと、ロッズナイト王国の持つ領土の中でも屈指の規模を誇るという学校を見てみたいと思ったからである。して、その見た目は、


「城、やな。」

「城ね。」

「城だ~。」


完全な城であった。見た目に圧倒されていると絶対学校に入れないので校門へと急ぐ。校門には兵士が警備していた。学生はここに閉じ込められていたが、学校警備の兵士も一緒だったのだろうか。


「なんだおまえらは?ここはソーサヨリ魔術学校であるぞ?」


「えーっと…学校の見学に来たんですが…?」


「名を名乗れ!」


「えーっと、左からキリヤ、私…ギリアラ、ネイクです。」


「なにぃ、ネイクだあ?あの引っ込み思案な王女様がここに居るわけないだろ!王女の名を騙る愚か者め、仲間共々ひっ捕らえてくれる!」


掴みかかろうとする兵士をスラリスラリと躱しながらどう説明するか考えるキリヤ達。しかし、その心配は無用であった。荒げた声を上げる兵士の声を聞いたのか、学校から誰かが出てきた。


「うるさいですよ、モーレイ。まだ生徒たちが授業をしておるというのに…」


「ヒイルド教頭、今は学校に押し入ろうとする輩を捕らえようとしているところでございます!」


勝ち誇った顔でキリヤ達を見ながらモーレイと呼ばれた兵士が答える。ゆったりしたローブを羽織る教頭は、細身で、目つきの鋭い神経質そうな人だ。


「なるほど…て!なんてことをしておるのだ!この馬鹿兵士!」


キリヤ達をチラッと見たヒイルド教頭は素晴らしいほどの二度見をした。そしてモーレイの頭に拳骨をして大声で怒鳴った。正直教頭の怒声の方が奇声よりうるさい。


「お前の目はどこについているのだ馬鹿者!足か?背中か?しっかり見ればそこの少女は正真正銘ネイク王女様にしか見えぬだろう!そこの少年と緑髪の娘はソーサヨリ王国の救世主だろうが!このポンコツめ!…ささ、キリヤ殿、ギリアラ様、ネイク様。本日はどのような御用で?」


血相を変えて唾をあちこちへ飛ばしながら怒鳴るのから一転、にこやかな笑顔を浮かべて尋ねる。


「え~っと、学校が見たいな~と思って。」


「それはありがたいことです!今すぐにでも授業を紹介しましょう!生徒も歓迎するはずでしょう!」


委縮する兵士を睨みつけながら、校門を開けてキリヤに校内に入ることを促す。広い庭を抜け、いよいよ建物内に入る…と、馬鹿長い廊下がキリヤ達を出迎えた。王城ほどではないが、広すぎる…


「ではまず…属性付与(エンチャント)も取り扱う教室へ案内しましょう。結構名誉な学科ですよ?ここを卒業した生徒は防衛の要になっておりますからねえ。」


そう説明しながら階段を登って3階に着いた。この学校は10階まであるそうで、あの長い廊下が十セットもあるということだ。それに応じて教室も増える。如何に力を入れているかがわかる。


「ささ、こちらでございます。」


教室の扉を開けると、今来たばかりと教壇にて準備を進める人と、4、50人くらいの生徒がいた。また、教室は民家が丸々一つ入りそうなほど巨大であった。教壇を中心に、扇を描くように椅子と机が配置されている。


キリヤ達が入ると、水を打ったように静まり返った。しかしそれも束の間、再びがやがやと話し始めた。

新参者三人が入ってこようが、彼らにとっては興味をそそられるものではない。


「うおっほん!どうも、教頭です。今日は新たなるお客様をお迎えしております。」


教頭が後から入ると、皆が口を閉じ、ふざけていた生徒もかなり真面目な顔をした。教頭が顔を出すのは珍しいものだ。ノヴァは生徒をざっと見回し、表情を観察しておく。生徒の中には成人してる者もいる。


「それが!ソーサヨリ王国を救ったお方!キリヤさんです!」


…誰一人声を上げなかった。


ソウゴは初遭遇の時しれっとキリヤの魔力サンプルをかすめ取ってます。届ける君にはその魔力を追うように仕込んでました。活動時間はだいたい二日。

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