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ぼくと契約してよ

「不死鳥様が来てくださったならば5年はこの国は安泰じゃ!」


夕暮れのようなものはだんだん国へと近づいており、それに伴って熱気もじわじわと上がっていく。とはいえ春の陽気のような優しい温かさである。


「あの…不死鳥様っていうのはなんですか?」


「不死鳥様は不死山という岩山に住む魔物です。といっても魔王軍から追放された身故、非常に人間に協力的です。また、ソーサヨリ王国建立前からずっと見守ってもらっておられるのですよ。」


夕暮れの中心に、真っ赤な炎を纏った巨大な鳥がいた。鳥は熱波と火の粉を巻き起こしながら、国を超スピードで通り過ぎた。


火の粉が城下町に降り注ぐと、各所から紅蓮の柱が立ち上り、城も巻き込まれた。だがこの炎は熱くない。暖炉の前にいるように暖かい、というべきか。


「うきゃあ!」


「?」


「はっはっは!驚くのも無理もない。私も初めてだがなかなか心地よい!」


当然辺りが火の海なので慌てるギリアラ、特に意に介さぬキリヤ、狂喜しているシラクスと王夫妻。火柱が消えると、呪いで衰弱していた人々は失われた健康を幾分か取り戻した。


そして、空中に静止している不死鳥に泣きながら感謝の言葉や祈りを捧げていた。それは、神話の切り抜きのようであった。まさに人智を越えた神業である。


「ほっほっほ。わしらの国が壊滅に陥る度、不死鳥様は力を惜しげもなく使ってくださるのだ。もちろんワシらだって対策はしている。不死鳥様にばっかり頼ってばかりでは堕落する一方じゃよ…」


「やって、キリヤ。ん?聞こえとるか?」


「僕!あれ仲間にしたい!」


キリヤは目をランランに輝かせて不死鳥を指さす。ここから50メートルは離れているが、不死鳥はキリヤの言動をしっかり認知しており、不死山の方向へと方向転換している。え、マジで?と言いたげである。


「あ、逃げるな~!」


「諦めるのじゃ少年。ワシらかて全技術を投入しても不死鳥様には追いつけんかったんじゃ。まず空なんぞ飛べんし、住処にしとる山は険しすぎる…」


しかし王様の言葉には一切耳を貸さずに、バッグからストレージを引っ張り出す。さらに、魔法陣に手を突っ込みジェットパックを引きずり出す。


「むむ!それは!」


女王が目を見張り、興味深そうにキリヤがジェットパックを装着するのを観察している。ようやっと本来の使い方をするのだ。遅い…


「よ~し!はっし~ん!」


キリヤが魔力を込めると、耳をつんざく轟音を鳴らしてキリヤが飛び立つ。白熱した炎を吐き出しながら圧倒的なスピードで不死鳥に近づく。


「キュイイイイ⁉」


自分に追いつかれたことに驚き、不死鳥はぐるりと宙返りして撒こうとするが、キリヤ―いや、文明の利器は余裕で食らいついてくる。仕方なく不死鳥は戦闘態勢に入り、翼から無数の火の羽根を出現させる。


「おい!キリヤ!どうすんねん!まだ間に合うからはよ謝れ!話通じるタイプやから!」


翼を前に羽ばたかせると、無数の火の矢が一斉に放たれた。灼熱羽根の地獄絵図の中、ノヴァが叫んだ。しかしキリヤは高速旋回や一回転などで器用に躱していく。どこでそんな操縦技術を身に着けたのだろうか。


下で見ている国民達には赤い鳥が白く小さいハエを追い払おうとしているように見えた。だが、それよりも守り神的存在に対する不敬な輩に驚いている。


「むう~、簡単にはいかないか~」


「そりゃそーやろ。相手は何時から居たんかもわからん手練れやで…」


不死鳥は翼を大きく振って豪熱波を放出する。しかし突っ込んで来るキリヤどころかジェットパックさえ負傷していない。ジェットパックは使用者とステータスを共用してる説浮上。


「仕方ない…魔式機関砲起動!」


「へぁ?いつの間にそのジェットパックのステータス見たん?というか鑑定無いのに何で見れるん?」


両翼に取り付けられた砲身が不死鳥へと向けられた。砲身は猛烈な動きで火の羽根を避けるキリヤをものともせずに不死鳥を狙っている。


「魔砲発射!ファイアー!」


不死鳥に超高圧縮された水が発射された。ピシャア!と不死鳥の翼に命中する。命中した部分は貫通してしまったが、即座に炎に包まれて完全に治癒した。不死と言われる所以の一端、超再生能力である。


「だったら連続で撃つまで!」


「性格変わってない?え、ワイがおかしいん?」


氷や風や水。火以外の属性を弾としてありったけぶち込む。破壊するたびに炎を纏い、回復を試みるも、圧倒的な連射に対応できなくなってきた。まさかの超再生を上回る連射である。


そんなことを数時間続けると、不死鳥の体力が削れ、高度が下がってきているのが目に見える。


「ふう、ふう…これだけ弱らせれば十分かな~。」


「キュィィ…」


「まるで命乞いやな…」


体力の限界間近に達している不死鳥は余力で飛んでいる。キリヤは左の人差し指に嵌めている指輪に魔力を込めている。


そして弱っている不死鳥に向かってジェットパックの勢いを利用したストレート腹パンを繰り出した。


「グエェェェ!」


キリヤの指輪から光が発せられて、不死鳥がみるみる小さくなっていく。光に包まれていき、最後は…消えた。一瞬、不死鳥が認めたかのような顔をしていた…気がする。


「ふ、不死鳥様が…」


玉座の間にいるメンバーも見物していたが、全員が口を大きく開けて唖然としている。その後、王様が無茶苦茶頑張って不死鳥に関することを認めさせたのは言うまでもない。数日間胃がキリキリしたそうだ。


「ふ~。」


玉座の間に戻ったキリヤに、いつの間にやらいた兵士や王様が駆け寄る。真っ先に王が問いかける。


「不死鳥様は…無事なのか?」


「うん!契約かんりょ~」


試しに指輪をさすってみると、約10分の1の大きさの不死鳥が手のひらに現れた。


「なんか~、僕の魔力をもらう代わりに力を貸してくれるみたい~。」


「ピイ」


偉大なる不死鳥が今では鳩程度の大きさに。というより可愛い。


「ねえ、キリヤ…触ってもいい?」


ギリアラが触ろうと手を出したが、触れる前に手を引っ込めてしまった。そう、不死鳥は依然燃えている。


「あっつ!ふー!ふー!」


指に必死こいて息を吹きかけるギリアラ。キリヤは熱いかな~?とか言いながら灼熱の不死鳥を撫でている。


「そりゃキリヤの耐性じゃ、あったかいくらいやろ…」


ミニ不死鳥を観察している兵士達をかき分けて、女王が進み出た。


「キリヤ・ミラージュ!その…あなたが使ったじぇっとぱっく?でしたっけ?それを研究させてほしいのですが…あの…ほら…」


「ほんと、そういうのが好きじゃの。そんなにもったいぶることでもなかろう。で、我が妻は魔武具の熱心な研究者である故、そいつをどうしても寄贈してもらいたいそうじゃが?」


「いいよ~。ジェットパックの方が早いけど便利なのは不死鳥だし~。」


「キュィィ…」


すんごい不服そうな不死鳥。自分が飛行勝負で負けたことを気にしてるのだろう。


「やったあ!ふふふ…まずは分解して魔力を燃料に変える機構を見つけ出し、その次に魔術をどうやって発射するかを解析しなくては…」


完全に自分の世界に入っている女王をよそに、王は報酬について相談する。


「むうう…何がいいだろう。金は治療費分を渡せるな…勲章なども授与したいところだが、それの判断はおぬしらに任せるとしよう。」


「う~ん、よくわかんな~い。勲章とかはいらないかな~?とりあえずお金だけ貰っとく~。」


「ふむふむ…そういうの()いらないんじゃな。それじゃあ金額とかのことは後日に…今日は城でじっくり休みなされ。召使も戻ってきたしの。」


「は~い」


「あっつ…」


ちなみにギリアラはまだ不死鳥に触れられないか格闘していた。

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