掃討作戦
短いです。さらっと読んでください。
少し時間は戻り、ギリアラとシラクスがキリヤと別れた直後。
「私たちは私たちで頑張るわよ!」
「もちろんだとも!」
二人とも、活を入れて戦闘に備える。ギリアラはややくたびれた鎖を取り出すが、シラクスは無手のまま。魔法を使えると言っていたが、杖や魔導書などの媒体を出していないのだ。
「えっ、武器は?」
「もう出している。」
ギリアラがシラクスを何度見直しても何も見えない。本当だろうか…疑う間もなく狼っぽい魔物が飛びかかってくる。戦闘開始。
「多い!!圧倒的に多い!」
背後から奇襲してきたゴブリンをあしらいながら喘ぐ。いくら鎖で叩きのめしてもわんさかやってくるおかげで、鎖の方がやられてしまいそうになる。おまけに呪いで弱化もしているのだ。一方、シラクスは涼しい顔。
「そっちは大丈夫そう!?」
「少々出力は落ちるが問題はないな。」
ちらりと見れば、シラクスの半径1メートル以内には一切敵がいない。というより、何かに阻まれて近づけないと言った方が正しいだろう。
「え?え?」
「ふふ…?驚いているな…?まだまだこれからだぞ?」
ニヤリと笑って見せると、我先にと押し寄せていた魔物が一斉に吹き飛ぶ。依然、何かをしたようには見えない。だがギリアラはあまり見れていない。自分の方で手一杯なのだ。
「…まあいいか。」
暫く、ギリアラとシラクスは黙々と魔物を狩っていった。途中から、シラクスの方に行った魔物はスパスパと斬られるようになった。かといってギリアラの方へ行くと撲殺or絞殺だが。
だんだん、魔物の数が減ってゆく。それと同時に辺りが屍の山になる。無心で狩っているうち、魔物がきれいさっぱり一掃された。
「うむ。ここはこんなものでいいだろう…こっちだ。」
「うへ~、広い…」
シラクスが道案内のために先導し、その後を追う。東の教会の前や西の商店街。魔物を倒すために東奔西走。道は亡骸で埋め尽くされ、ちょっと見るに堪えない状況。
それでいて、魔物を倒すために国中を走り回っていても、薄くしか人の気配を感じられない。不気味も不気味である。
「ふう…よぅし。これで一周できたか。」
「はあ…はあ…思ったより早いのね。」
「抜け道などはそれなりに網羅している…自分の国だしな!」
全速力で駆け回り、ぐるっと一周してきた次第である。つまり、ここは城に続く階段の前だ。休みなしで突っ切ったので、二人ともかなり息切れしている。自然と、腰を下ろして休憩をする。
「それにしても、どういうタネ?」
「む、興味ないと思っていたが?」
「戦ってたら聞く余裕なかったわよ…で、何をしたの?」
シラクスが不可視の攻撃で魔物を切り裂いていた原理が知りたいギリアラ。シラクスは顎に手をやり、ちょっと考えた後、答えた。
「うーむ、ちょっと機密に触れるのだが…でも、君たちは信用できる。単刀直入に言うと、私が使っているのは結界術だ。」
「結界術?」
「ああ。詳しく言うと長くなるから簡単に言うと、ほぼ透明の硬い壁を作る魔法だ。結界があるところをよく見ると、ちょっと景色が歪んでいるだろう?」
シラクスが手を前に突き出してみせる。手の周りの景色が少し歪み、陽炎のようになっている。
「触ってみてもいい?」
「もちろん。」
シラクスの手に腕を伸ばすと、確かに壁のようなものがある。人差し指で叩いてみると、コンコンと音が帰ってきた。手と手の距離は約2㎝。
「すごい…」
「ま、これのおかげで魔物にも襲われず、むしろ弾き飛ばしたりしたのさ…あと、横にして振れば切れ味の良い刃物にもなる。逃げてきたときはそんな余裕なかったけれど…」
「それに、これでもかなり訓練した方なんだ。師匠は射程が3mはあるんじゃないかな?結界の厚さも尋常じゃなかったし…」
「強すぎないかしら?」
敵だったらと考えるとなかなか恐ろしい。しかしシラクスはいやいやと首を振る。
「そうでもないよ。結界を厚くしようとすると精神力も魔力もかなり使う。ずっと出そうとすると余計にね。
あと、一点集中型の攻撃に弱いんだ…ハンマーとかなら得意分野なんだけど、槍とかレイピアで一点に負荷がかかる武器で来られると、抵抗はするもののパリンと割れるんだよ。」
この世に万能というものはない。どれだけ強くとも、何かしら欠点があるというわけだ…
「それはそうと…どうして魔族の兵士がいない?今まで狩ってきた魔物は国周辺で普遍的に見かけるものばかりだ。魔族が服従させている魔物とは違う…」
眉間にしわを寄せ、口元を押さえ思案するシラクス。シラクスの言う通り、普通国を落とすなら兵士を何百人も要するはずだ。たとえ国全体に呪いをかけられる術者がいてもそれでも兵士は必要だ。
「私が逃げている時、ちらりとだけだが数十はいたのを見た…それが全員撤退?あり得ない…」
急なガチ考察に何も言えないギリアラ。目を点にしながらただただブツブツとした独り言を聞くしかなかった。
「あ、掃討が終わったなら、キリヤの方へ行きましょう?あの子だけじゃ心配だし…」
「そうだった…彼はまだ子供だ。急ぐぞ!」
ギリアラの言葉にハッとしたシラクスは、すくっと立ち上がり、階段を駆け上がる。それにギリアラも付いて行く。
「大丈夫~?キリヤ~!こっちは片付いたわよってヤバ!」
「キリヤ殿~!うっ、今までとは比べ物にならない…!」
こうしてキリヤと合流したのである。




