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始まり

ここはロッズナイト王国と魔軍帝国まぐんていこくが土地の奪い合いをしている大陸、オールドシア。

両国の境目さかいめでなければほとんどの場所が安全地帯の大陸だ。そんな奇跡も魔法もあるような世界で、アホ面で寝ているマイペースで呑気のんきな少年がいた。


カーテンを閉め切り、薄暗い部屋。床や机には道具やら本やらが散乱している。にもかかわらず部屋に汚れの欠片もない。定期的に掃除がされている証である。部屋の主は…起きるきざしもなく延々と寝ている…


「キリヤー!起きなさーい!もう昼の1時よ!」


母親が声をかけてもキリヤという少年は起きない。これはいつもの事なのだが…

「2時から試験があるんでしょ?早く来なさい!」


この村には儀式というか試験というかそんな感じの伝統があり、10歳になった子供は村の近くにあるダンジョンの中に入って武器とかを持ち帰ってくるというものだ。安全地帯といえども魔王の魔力は大陸の端っこに位置するこの村まで微弱だが届いてきている。だから最低難易度だがダンジョンや、そこらへんに低級の魔物などが沸いてくるのである。


「わかった~…」

と気のない返事をしながらキリヤという少年が二階から降りてきた。


「ちゃんと朝ご飯食べないとレベルもやる気も上がってこないわよ!」


というが、彼にだけはレベルの概念がいねんが無かった。普通の健康な男児なら既にレベルは4か5になっているはずだが、キリヤはレベルが上がる気配が全くない。なぜだろうと皆不思議がっているが、呑気な彼にとってはそんなことはどうでもよかった。


「んじゃあ行ってきま~す」


支度を終え、ふらつきながら家を出て目的地を目指すキリヤ。特に何も起こらずにダンジョンに着く。ダンジョンの前には説明をする係の人と、もしもの事のためにある程度戦闘ができる人が配置されていた。参加者がそろったところで説明が開始された。が、キリヤは全く聞かずに数分眠っていた。親から何回か聞かされていてルールはだいたいわかっていたので聞かなくても平気である。


「それでは…スタート!!!」


薄めのシャツに動きやすそうな長ズボンを履き、ホイッスルを咥えた男が開始の声と同時に笛を鳴らす。


「負けないぞ!僕が一番乗りだ!」

生意気そうな茶髪の男子。


「あたしだってやる時はやるんだから!」

気の強い細身の女子。


スタートとともにそれぞれの思いを抱きながら各々ダンジョンへ進んでいく少年少女たち。横で眠っているキリヤを置いて。


「良く寝たしそろそろ行くか~」


10分遅れてキリヤもダンジョンへ進んで行く。周りの大人はかなり心配していることにも気づかずに。レベルが4か5くらいになると、力や防御に俊敏さ、魔力などに偏りが見えてきて、それで将来どんな職業(ジョブ)が向いているかが予想しやすくなっている。

この世界は自分の意思でステータスを出せるが、キリヤが出す意思を全く持たないのでレベルがあるかの判断はレベルアップするか否かで決めていた。レベルアップするまでの経験値がバカ高いだけかもしれないが。


「みんな速いな~もう武器持ってきてる人もいるな~僕も急がなくちゃ~」


言葉ではそう言うが、急ぐ気配はない。ダンジョンには勝手に武器とかアイテムが補充されていくシステムがあるが、そこまで早く補充されないので探しても探しても見つからない。


「う~ん?なんか入れそうな穴があるぞ~?」


たまたま誰も通ってなさそうな抜け道を見つける。地形や石、草の配置によって巧妙に隠されたギリギリ大人が這って入れるかなくらいの穴に入って奥に進む。こんな小さな穴は強く意識しないと見つけられないだろう。穴を抜けると大きな空洞に出て、辺りを見回していると…


「あ!やった~剣だ~!これで試練は終わりだ~」


その見つけた剣はというと、剣身が紫に染まり、S字に曲がりくねっていて黒いオーラが立ち上がっている。どっからどう見ても普通の剣ではないはずなのにキリヤは持っていこうとする。ある程度剣に近づくとおどろおどろしい声が聞こえてきた。


「フッフッフ…この我を手に取ろうというのか…よかろうここから持ち出してみるがいい。呪いで身体を操って人を切りまくってやるわ!」

とか言ってる間にキリヤは剣を持って来た道を戻ろうとする。と、いきなり剣が震え始める。


「いやいや待て待て待てい!何普通に持って帰ろうとすんねん!え?めっちゃカッコつけたのに!てかなんで呪い効かんねん!オイ!聞いとるか!」


「うるさいな~。ちょっと黙っててよ~」


「だってワイ呪いの剣やで!なんで普通に持てとんねん!普通精神イかれて死んでまうはずやで!?」


呪いの剣がさっきまでの脅しはどこへやら、早口な関西弁でキリヤに問いかける。どうやら二ホンという小さな国の西の方で使われる言葉のようだ。この大陸にも方言はあるが。


「へ~、これ呪いの剣なんだ~すご~い^^」

「すご~い^^やないわ!せや!ステータス見せてみ!はよ!」


「やだよ~出し方わかんないし~」


今までステータスを出したことが無いキリヤはそもそもステータスの出し方すら知らなかった。


「あーもうしゃらくさいわ!あんたのステータス勝手に見るで!ええな!一応装備扱いになってるから見れるはずや!あんたも一緒に見ーや!」


呪いの剣がステータスを開き、キリヤの前にステータスが表示される



[キリヤ] 人間

LEVEL

能力数値  

体力 20 力1 素早さ1 防御1 魔力1 賢さ30

属性耐性

火0 水0 風0 土0 雷0 毒0 麻痺0 やけど0 裂傷0 気絶0 呪 error

スキル

??? 解放条件???



「な…なんやこいつ!レベルが無い!属性耐性の呪いがエラーってなんなんやこれ!」


今まで見てきた中でもっとも異端なステータスに驚く呪いの剣。


「問題はスキルやな…普通はレベルアップとかで解放されるんやけどな…」


「でも~、君を持ってたら力が湧き上がってきたよ~」


呪いの剣を数分持っているとスキルが解放された。そのスキルの内容は…


「ホンマに解放されよった…えーっとスキル、呪われ上手。呪われてる状態だと、全ステータスに+70。力は3倍の補正がかかる…って強すぎるやろ!」


圧倒的数値。属性耐性は20あったら高い方であるが、今のキリヤは耐性オール70である。

攻撃力は力と同等なので攻撃力が71×3で213になり、中級の魔物どころか上級の魔物さえ一撃で倒しかねない威力となっている。


「へ~強~い。」


「ワイの数値と合わせたら230…バケモンやな。一応ワイのステも見とくか?」


「気になる~」


キリヤが剣に手を触れると、ステータスが現れた。


呪いの剣


攻撃力17 属性 呪


スキル

呪い-装備が外せなくなって、体の自由がきかなくなる。呪い耐性が上がると緩和される


吸血-【LEVEL1】敵を倒すたびに攻撃力+2とHP回復


??? 解放条件-吸血を10回する


「まあこんな感じやな。なんで最低難易度のダンジョンにいるかっちゅーと、捨てられてから長い年月経ってもーてな…腹立って呪いの力に目覚めたんや」


「へ~…まあとりあえず外に出よっか~」


「はあ…こいつなんか疲れるわ…」


そしてダンジョンから出てきたキリヤの前に大人たちが集まる。でも手にしているモノを見ると皆一斉に距離をとった。


「キリヤ…その剣は一体…?」


「知らな~い。まあ強いからいいじゃ~ん」


眠そうな声でキリヤが話していると、一人の少年が折れた武器を持って走ってきた。スタート時に、一番を目指していた生意気そうな少年で、さっき儀式を終えたばっかりの子供だ。


「助けてえ!レベル上げしてたらオオカミの獣人が襲ってきたんだよー!!!」


狼の獣人は魔族の中では血の気の多い魔物で、人とか家畜を見つけるとすぐに襲ってくる。滅多にこの付近には現れないのだが、おそらく獲物を求めてやってきたのだろう。


「こんな時に中級の魔物が現れるとはな…キリヤはそこで待ってろ!」


戦闘経験のある大人達が次々と獣人の元へ走っていく。


「おお!魔物や!早速行くで!カモがネギしょってやってきたとはこのことや!血ぃ吸ったるでー!」


と剣が話しかけてくるが、キリヤは行く気がないので帰ろうとする。


「いや帰んな帰んな!なんで反対方向に行くねん!」

「だって~待ってろって言われたも~ん」

「ワイは腹減っとんねん!飢えてんねんで!?」

「剣なのに~?」

「気持ち的な面でもあるんやけどな…ワイ呪われてるし強くなりたい願望あるし。」

などと言い争いをしていると何かがこちらに飛んできた。


「弱っちいなァ…やっぱ端っこの村じゃザコしかいねえなァ…あー、つまんね。適当に腹掻っ捌いて食うか。」


飛んできた物はやられた大人だった。獣人は村の方へ近づいていく。


「ね~え~おじさん誰なの~?」


「あ~ん?誰だア?俺様を呼び止めてんのは?」


獣人は声の聞こえる方向へ顔を向ける。そこには10歳ほどの人間がいた。手には剣を持っている。


「ほぉ。いいだろう。こんな糞雑魚しかいない村にいるお前の質問に答えやろう。」


明らかにこちらを見下して、ねちっこい話し方で喋ってくる。


「俺様はなぁ…クライムっていう名前だァ…どうせ死ぬんだから地獄で俺様の名前を広めておけよ?無いとは思うが死んだときに恐れられてぇからなあ。」


「なんやこいつ。きっしょい喋り方すんなぁ…まあええわ。キリヤやっけ?さっさとこいつ切り裂いてやったれ!」


呪いの剣が声を出すが、どうやら所持者以外に声は聞こえないようだ。


「めんどくさいな~…でもおじさんを懲らしめないといけないからやってみよ~と」


「はっはっは!お前おもしれえなァ…いいだろう。一回だけお前の攻撃くらってやる。」


そう言うと、手を大きく広げて目をつぶり、完全に無防備な状態になる。


「完全に舐めとるで、あいつ。まあええわ。お前、剣の使い方はわかって―

「え~い!」


剣が話し終える前に適当な斜め切りをする。普通の剣ならへなちょこすぎてコンニャクすら斬れないであろう。しかし、その一撃は敵の肩から腰まで斜めに切り裂き、それに加えて獣人の上と下が両方吹き飛んでいった。振った剣から衝撃波が出て、体を吹き飛ばしたのだ。さらに衝撃波は10メートル程離れた大きな岩も簡単に切り裂いた。


「なんやこれ…予想以上の破壊力やな…キリヤ、しっかり制御できるようになるまで斬るというより軽くたたく程度で振りーや…」


敵は粉々になってしまったが、剣が残骸を引き寄せて吸収し、攻撃力が2上がった。


「やった~。初戦闘勝利~」


こうして呪われた少年と呪いの剣の物語が始まった…



初投稿で、わからないことも多々ありますが、一話目です。至らぬ所もあるかと思いますが、この作品、ひいてはキリヤと呪いの剣のことをよろしくお願いします。

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