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短編

超健全VRゲーム

作者: 相浦アキラ

(内容は健全ではありません)

「おいケンジ。新作のVRゲームやろうぜ」


「何てタイトル?」


「ユニバースオンライン。略してユニオン!」


「あれ買ったのかよ姉ちゃん。それネットでクソゲーとか叩かれてたぞ」


「ネットの評価とかアテにならねえよ。それに他のVRゲームは全部サービス終了しちゃったし」


 法改正でフルダイブVRゲームがガチガチに規制されて、半年になる。

 色々と事件が起きたり、VRゲーム内で変態行為を働いたりする輩が出て社会問題になったせいだ。

 鹿児島デスゲーム事件とか、ワドワル洗脳事件とかもニュースになってたな。

 まああれだけ問題になれば規制されるのも仕方ないが。

 しかし……


「……あんだけガチガチの規制をよく擦り抜けられたもんだな。そのゲーム」


「あまり期待はすんなよ」


「まあ……俺も久々にVRやりたいとは思ってたけど」


「よっしゃ! じゃあやろうぜ!」


「おう。待ってて」


 自分の部屋に戻ってヘッドギアを取り、姉ちゃんのベッドに座った。


「いくぞケンジ! スタート!」


 暗闇に落ちて行く感覚。懐かしいな。この感じ。


 ユニバーサルオンライン、とカタカナのロゴが出て来た。

 何かフォントが丸っこくてしょぼい……。


 まあいい。キャラメイクだ。


 名前はいつも使ってるコンチマタンキ。


「エラー。卑猥な単語が使用されています」


「はぁ!?」


 仕方ないので、リーゲーコンウにする。


「エラー。卑猥な単語が使用されています」


「何だよこれ! クソゲーだろ絶対!」


 もう知らねえ。適当に「ふぇおら」でいいや。


「エラー。卑猥な単語が使用されています」


「何なんだよもう! どこがだよ!」


 開き直って、「大真面目太郎1192」にしたらやっと進めた。

 クソ……覚悟していたとはいえ規制がきつすぎる。


 続いてのキャラメイクも、全然面白くなかった。

 いくら頑張っても精々フツメンのおっさんにしかならない。

 極限までキモ顔のおっさんでプレイするのが俺のポリシーなのに。


「絶対クソゲーだなこりゃあ」


 やる気が失せながらも、適当に設定していく。

 クラスは戦士でいいや。

 ……よしこれで完了。


「同時接続有線プレイヤー『清純派杉子48億歳』さんのエリアに転送します」


 どうやら姉ちゃんも、俺と同じ苦渋を味わったらしい。


 光に包まれ、気付いたら中世ヨーロッパ風の村に立っていた。

 前評判が最悪だったせいか、全然人の気配は無い。

 あ……姉ちゃんいた。


「ケンジ。……お前どうしたんだよ。全然キモくねえだろ」


 はあ?


「……姉ちゃんこそ何だよそのおっぱい。Gカップくらいしかねえだろ! いつも超乳にしてるだろぉ!?」


「Gまでしかできなかったんだよ! やっぱクソゲーだわこれ!」


「マジかよ。俺も全然キャラメイクでキモくできなくてさあ。ほんとクソゲーだな……早くGE〇にでも売ってくれば?」


「待てよケンジ。クソゲーにはクソゲーなりの楽しみ方ってのがあるだろ?」


「はあ?」


「禁止ワード言ってみろ」


「――――」


 覚悟はしていたが、規制のせいで声が出ない。


「雑魚過ぎだろお前! 聞いてろよ……! スゥウェエエエエックス!」


 おお……すげえ!


「姉ちゃん天才だろ!」


「当たり前だろ! お前も言ってみろ!」


「スゥウエエエ……あ……駄目だ出ない」


「下手だなお前! こうやんだよ。スゥウェエエエエックス!」


「スゥウェエエエエエックス! おお! 出来た!」


「やるじゃねえかケンジ」


 やばい……


「……なあ姉ちゃん」


「ん?」


「なんか逆に楽しくね?」


「私も思った! もっと色々やってみようぜ!」


 姉ちゃんもウキウキになっている。

 それにしても……普段より小さいとはいえ、十分巨乳ではあるな。


「姉ちゃん。いつものおっぱいプルダンしてくれよ!」


「悪いけどやる気出ねえよ。この――じゃなかった……うぉっぷぅあぁい固くって全然揺れねえんだよなあ」


「マジで? 触らせて……うわっ!」


 何か見えない壁がある。


「ケンジ。何かいいアイディアねえか?」


「……いい事考えた!」


 俺は民家の庭に勝手に入り込んで、落ちてる木の枝を回収して戻った。


「姉ちゃん。一回うぉっぷあいプルダンしてくれ」


「いいぞ」


 姉ちゃんが高速でスクワットをしてくれた。

 当然おっぱいは揺れない。

 しかし俺の狙いはここからだ……!


 すかさず木の枝を指でつまんでユラユラしさせ、目の前に掲げる。

 姉ちゃんの揺れないおっぱいの下部分が、木の枝のお陰でグニャグニャ揺れてる感じになった!


「姉ちゃん! すげえ! 揺れてるぞ!」


「マジか! お前天才だろケンジ!」


 それから、ノリに乗った俺と姉ちゃん。ギリギリを攻める変態行為を思いつく限り楽しんで行った。


「見ろ! このハンドサイン! マイナーだけどウェルォい意味なんだぞ!」


「マジで!? すげー!」



「この切り株に座ったらウゥムゥクォしてるみたいじゃね?」


「マジだ! 俺もやる!」


 そんな感じで、何となく港町に向かっていると、


「ケンジ! 何かモンスターが出たっぽいぞ!」


「おっしゃ! 戦うぞ! って……動けねえ!」


 と思ったら手だけ動く。

 ……なんか攻撃コマンドボタンが出て来た。

 押してみる。


「うわっ! 体が勝手に!」


 俺の体が勝手に動いて、スライムを切り裂いて倒していた。


「姉ちゃん……体が勝手に動いたぞ! やっぱクソゲーだな!」


「VRの意味ねえだろ! ほんとクソ過ぎるだろ……ウケるわ……!」


 散々に笑い合った。

 クソゲーだけど、心の底から楽しい。この感じ久々だ。


 それから俺達は、適当に進んで港町に辿り着いた。


「必殺! うぉっぷあいプルダン!」


「くらえ! グニャグニャ枝!」


 飽きもせずにずっと遊んでいると、おっさん二人組が目についた。

 初めて他のプレイヤーと出会った気がする。

 ……何か話してる。


「最悪やなあ。このゲーム。クソゲーオブザイヤー取れるやろ絶対」


「ほんっと。自由度も全然ないし、戦闘もクソだし」


「あの……」


 俺は思い切って声を掛けていた。


「ん? 何だ?」


「俺達とウェルォい事して遊びませんか?」


「……なんやそれ……面白さそうやないか!」


 おっさんは二人とも最高に面白い人だった。

 しかも二人ともモールス信号に詳しかったので、エロいモールス信号を教えてくれた。


「トントンツー! トントンツー!」


「ガハハハハハ! 大真面目太郎さん! 面白いなあんた!」


 やがて、噂を聞き付けてサーバー中から人が集まって来た。

 俺と姉ちゃんは脱法エロの第一人者として、一気に有名プレイヤーになっていった。


「大真面目太郎さん! アレ言ってくれよ!」


「スゥウェエエエエエックス!」


「スゲーっす!」


「まあねー!」


「おいケンジ! 私が最初に言ったんだぞ!」


「マジっすか!? 清純派杉子さんもお願いしまッス!」


「スゥウェエエエエエックス!」


「うおおおお! これが元祖スゥウエエエエックス!」


 港町は脱法エロ祭りで大盛況になった。

 やがてキモ顔キャラメイクコンテストや、うぉっぷあいプルダンコンテストまで非公式に開催されだした。


 そして始まったうぉっぷあいプルダンパレード。


「うぉっぷあい! うぉっぷあい!」


 みんな楽しそうで何よりだ。

 俺と姉ちゃんも木の棒でおっぱいを揺らしたり、適当に踊りながらパレードに参加する。


「なあ姉ちゃん」


「何だよケンジ」


「このゲーム楽しいなー」


「本当だな。初めてケンジとVRゲームやった時も、こんな風に夢中で遊んでたっけ」


 ふと、リミットタイマーが、ピピピと頭に鳴り響いた。


「……そろそろ帰るか。姉ちゃん」


「うん。また遊ぼうな。ケンジ」





 ……俺達は二度とあのゲームを遊ぶことは出来なかった。

 利用規約に引っかかって永久BANされてしまったんだ。


 あれからユニオンでは、偽装エロワードやうぉっぷあいプルダンも規制されてしまったらしい。

 ユニオンは名実ともに、健全極まるVRゲームになってしまったのだった。


 でも楽しかった。

 あの日の事は、多分一生忘れないと思う。


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― 新着の感想 ―
[良い点] うんこんなVRゲームはクソゲーです。 マン湖に沈めてしまったほうがいいとさえ思えるのですが、 しかしっこの姉妹は正しく楽しんでしまえる才能の持ち主。 ガチンコに超健全な快感に思わず何度も声…
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