03.5.幻獣との邂逅
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『すまない。本当にすまない――』
頭の中で声がする。
リオン自身の声ではない、今まで聞いたこともない厳かな声。
『だれ――?』
たゆたう意識の中で思う。息苦しさはなかった。
直感で、自分の魂がいま生と死のはざまにいることを感じとる。
時間がないのか、声の主はリオンの問いに答えることなく語り続ける。
『魔族に襲われ傷つき、追われるままに我はこの地の上空まで来てしまった。すると地上に、我と相性の良い肉体を持ちながら死にかけている汝がいた故、考えるまもなく汝の体に飛び込んだ。その意思を確認もせず憑依融合したことを本当にすまなく思う。許してくれ――』
『あなたが、助けてくれたの?』
『我は今汝の魂の中で語りかけているに過ぎぬ。まもなく我は消える。力が回復するまでは表に出てこれないだろう。突然汝と一つになった上に、満足な標も残せないこと重ねて謝罪する。代わりに我の力は全て汝のものだ。好きに振るうがいい』
端からほつれていくように、意識がバラバラになっていく。
空間へ溶け出していくような感覚と必死に戦いながら、リオンは叫んだ。
『待って! せめて、せめて君の名前だけでも教えて! 助けてくれたお礼をいつか必ず伝えるから――』
『我か。我が名は――――』
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