血を飲め、勇者よ
1-2
全ての死体から貴重品を取り出し終わった青年は、近くの川で服や金品に付いた血を洗い落とし始める。
「心臓か…」
青年は洗い終わった金品を再び袋に入れる。
心臓が1体1体の死体から抉り抜かれた理由、青年はそれに着目点を置いていた。
「同じ人間にこんな真似はできない… そして部位を回収するその習性…」
青年は状況を整理していく。
建物は焼かれ、中は確認できない。死体は全て野外に出されている。そして全ての死体からは心臓が抉り抜かれ、全ての部位が切り離されていた。
そこで辿り着く1つの答え……
「魔獣兵…」
『魔獣兵』魔王軍の中では最も多い戦力。
通常の魔物や魔獣より知能が高く、武具を装備している。
身体能力は魔獣、魔物同様、人間の身体能力を遥かに上回っている。
つまり『魔獣兵』は村1つを殺戮し、「特定の部位の回収」を可能とする種族ということだ。
「血の匂いは新しい… まだ近くにいる可能性があるな…」
青年は強く劔を握りしめる。
呼吸に乱れは無く、目に恐怖は一切写っていない。
「にしては… 静かすぎるな…」
青年は周囲を確認しながら、ゆっくりと立ち上がる。
ガサガサッ
背後から聞こえてきた音に青年は素早く反応する。
バッ
勢いよく大地を蹴る青年。一気に音の方向に接近する。
「なっ…!」