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私、アイドル目指して頑張りますっ!  作者: 笹井結奈
アイドル下積み時代
3/21

3話 武器の確保頑張りますっ!


「ハッハー! まだまだいけるぜ!」


 妙なテンションで叫ぶな? 痛いやつだって? うるさいな。今更だよ。

 こんなんテンション上げてかなきゃやってけねぇんだよ。

 だって、起きたらいきなりゾンビパニックだぞ?

 しかも周囲には誰もいないときたもんだ。

 私じゃなかったらパニックになってジエンド事案だぜ。これ。


 それにしても、CDの一枚でも積んでくるんだったな……

 走行音しか響かない車内とか味気なさ過ぎるってもんだ。


 現在私はバイパスを北上中。

 すでに二十分は運転し、ここはすでに隣の市。

 たまに止まっている車を上手くかわしながら、ここまで無事故無違反。誰か私にゴールド免許を頂戴な。スピード違反してるだろって? バレなきゃ違反じゃないんだよ。


「おっと」


 皆んな律儀にその場に停止して、エンジンを切ってからどこかに行ったようで、ところどころに車が乗り捨てられている。

 たまにあるそれを華麗なハンドルさばきでかわしながら邁進中。


 ある信号で右折し、しばらくの間迷いながら進む。


「えっと……確かここら辺、だったか? ……おっ、あったあった」


 よし。ついに到着したぞ、鉄砲火薬店。待ってろ私の銃!


 車から降り、壁にぴったりと張り付いて、窓ガラスを裏拳で砕く。

 小気味いい音を立てて落ちていくガラス。

 そして、窓に残ってしまったガラスを丁寧に取り去り、窓から店内に侵入した。


 降り立つと、足元からパキパキという音。

 まるで冬の水溜りを踏んづけているようだった。


 忍び込んだ私はベルトに刺してあった懐中電灯と千枚通しを抜き、腕を交差させるように正面に構えた。


(一回やってみたかったんだよなぁこういうの)


 懐中電灯の光に照らされ、浮かび上がった銃の数々に私はうっとりと嘆息した。


 早速ガラスを打ち破って持って行こうと思ったが、ガラスまみれになってしまうことが許せなかったので、まずは鍵を探すことにした。


 手始めに、カウンターの内側を探してみた見当たらない。


 どうやらここにはないようだ。まあ、確かにこんな簡単に盗れるところに置いてあったら危ないもんな。

 他にあるとすれば、奥の部屋か……


 そう。この店舗部分の奥にもう一部屋あるみたいなのだ。

 カウンターの奥、つまり私の後ろには一枚のドアがある。

 その奥が事務スペースのようになっているのだとしたら、そっちにあるかもしれない。


 でもなぁ……こういうのって大抵扉の奥にいるんだろ? ほら、お約束ってやつだ。

 狭い室内で槍は使いづらいし、かといって今は布がないし……おっ、新聞があるじゃん。これでいいか。


 懐中電灯を口に咥え、ノブに手をかける。

 じっとりと手が汗で湿る。心なしか息も荒くなってきた。

 でも、やめるわけにはいかないんだ。なぜなら、私はドミナントだから! ……すいません調子乗りました。

 すぅー、はーと深呼吸。

 そっと、できるだけそっと音を立てないように、ノブを捻り。ドアを開けた。


 その甲斐虚しく、キィッーと掠れた金切り声のような音を立ててドアはゆっくりと開いていった。


 店舗部分とは違い、こちらには窓がないのですごく暗かった。

 懐中電灯を持ち直し、ゼットを描くように照らしていく。


「……死人(ゾンビ)はいないみたいだな」


 カウンターから取ってきた新聞を少し裂き、ドアの下にかませた。

 そして、警戒は怠らずにゆっくりと部屋に入っていく。


 右のほうを見るとベッドがあった。

 シーツは慌てて飛び起きたかのように乱れており、掛け布団は床に落ちている。

 一つベッドに置かれた枕には血が滲んでいた。


 サイドテーブルを照らすが、何も見当たらない。

 そのまま懐中電灯を上に向けるとそこにあったのは赤い手形。


 無作為に乱雑につけられたそれから読み取れる意味はなく、それはただ視覚的な恐怖を催すだけだった。


 カタリッ――


 背後でナニカが動いた気がした。


 振り返れば目の前に、顔を失った男が立っていた。


「ひっ――⁉︎」


 驚きで酸素が漏れる。

 男はあらぬ方向を向いたま私の肩に手をかけようとしてきた。

 咄嗟にかがみ、後ろへと回る。


 標的がいなくなったことで前につんのめった男の腰に蹴りを加えてやった。


 尾骶骨あたりに接触でもしたのだろう。

 しっかり振りぬけたが脛が痛い。


 もちろん、態勢を崩した死人にすぐに飛び乗り、後頭部に千枚通しを打ち込んだ。

 新聞紙をかけることも忘れない。


 千枚通しはするりと刺さっていった。

 脳幹を貫いたらしく、痙攣することはなかった。

 脳幹はストッピングパワーが高いからな。


 さて、ボディチェックのお時間だ。

 うん? 何か硬いものがあるなぁ……寝ている男の下半身を弄る私。

 べ、別にやましいことをしているわけじゃないからな!

 っと……? おっし、ビンゴだ!


 丸カンに通された幾つかの鍵が手に入った。

 さ、ショーケースと弾薬保管を開けにいこーっと。


 まずは弾薬の方から車に積む。

 保管庫の中にあったものをとりあえず全部トランクに詰めた。

 後部座席をたたむと、やっぱりいっぱい入るな。 さすがアカエイちゃん。


 さて、弾薬も全部積み終えたし、次はいよいよメインディッシュの銃の番だ。


「とぅーとぅーとぅとぅ」


 歌なんか歌いながらショーケースを一つ一つ開けていく。

 実に気分がいいぞ。今ならゆりかごだって落とせる。


 まず手に取ったのはジャムらない信頼のM。

 ショットガンって言ったらまず思い浮かぶのがこれだろう。

 さすが世界のR社だな。


 でも、これは12番だし、対死人用だな。

 もう少しデカイのも欲しいとこだ。

 おっ、SMがあるじゃないか。

 20番だし、対哺乳類用に使えるんじゃないか? もってこ。


 ライフルの方のMもあるじゃねぇか! .308winが撃てるぞ!

 対死人に対熊……これは捗るぞ!


 最後に適当に水平二連と、使うかわかんないけど、上下二連を適当に引っつかんで車に戻った。


 でも、結局全部の銃を持ち帰っちゃいました。てへっ。

 ……だって仕方ないじゃないか。欲しいんだもの! それに使わなくても備えあればってやつよ!

即席の槍の出番はない。

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