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海賊少女  作者: 夏
月の下で
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医務室の謎の生命体

訓練生の手により、ピカピカに磨きあげられた廊下に異様なオーラを放つドアが1つ。元々は普通のドアだったのだろうが、怪しげな装飾品がびっしりと取り付けられ、木の部分が全く見えない。そんなドアを見ながら、深く深くため息をついた。

ここの部屋―――――医務室の長は、この船の長さえ恐れるような変人だ。と誰もが言っているし、実際その通りだ。そのせいか、というか、そのせいで、毎年医療班に入る人が極端に少ない。しかし腕利きであることも確かなのだ。そのお陰で、昨日の戦闘で怪我人やら見舞いに来ていた人やらでごったがえしていたこの部屋も、あっという間に普段の静けさを取り戻した。

意を決してドアをノックする。コンコン、と硬質な音が廊下に響く。


「アル姉さーんブルーノのみ「やあティカ君!やっと私の死体コレクションになり「んな訳ねーよ!」


ノックをしたとたんに勢いよくドアが開き、ギョッとしていると、中から恐ろしい色をした白衣を着て、赤と紫のストライプの仮面をつけた人間かどうかすら怪しい生命体が飛び出してきた。


「先生、何回も言ってるでしょうが!死体コレクションなんてまっぴらごめんですよ。」


「いやいや!私は諦めないよ!」


「諦めてください。」


こんな会話を何回繰り返しただろうか。まったく懲りない人だ。(そして変人)


「まあ入りたまえ!ようこそ私の城へ!」


「ハイハイ」


適当にあしらって中に入る。それと同時に薬草や消毒薬のつんとしたにおいが鼻を掠めた。中は広々としていて、大きなベッドが並んでいる。その横のデスクに何人かの人が、薬草を乾燥させた物を広げてすりつぶしている。


「ああ、ティカちゃん、いらっしゃい」


びっくりする程生気の無い声が聞こえた。バーナー先生だ。自由奔放な医務長と副医務長に振り回されている苦労人だ。ドルン教官と同じくらいか、それ以上だろう。


「ブルーノ君ならそっちよ・・・」


また恐ろしく生気の無い声が聞こえた。こちらはメリュアさん。美人なのになんだか顔色が悪い。アル姉さんもラウさんも一体何してるんだ。


そう思いつつ、メリュアさんに促され、右から二番目のベッドに近づく。他のベッドにも何人かの人が眠っている。


「よう、ブルーノ。」


他のベッドで寝ている人を起こさないように、小さいな声で声をかける。

ブルーノは目を閉じていたものの、眠ってはいなかったらしく、パチリと目を開けた。薄暗い部屋に、褐色の目がよく映える。


「ああ、ティカか…見舞いに来てくれたんだな。ありがとう。」


掠れた声で礼を言うブルーノを見て、不謹慎だけど日頃麻痺させている死への感覚がざわざわと蠢く。


「礼なんて言うな―――――アイツ等も来てたんだな。」


ふとサイドテーブルの上に置かれた果物の籠に気付いた。恐らくリフェとポポだろう。


「ああ、アル姉さんに絡まれていたがな」


ブルーノはおかしそうに目を細めた。私も軽く目を細めた。





しばらく他愛ない話をしてからブルーノに別れを告げ、医務室から出た。ぐう、と腹が鳴り、朝から何も食べていない事を思い出し、食堂に足を進めた。




食堂に入ると、柔らかな匂いがふわりと漂ってきた。何かのスープだろうか。そう思いながら、何か頂こうとカウンターに近づくと、横からすい、と誰かが身を乗り出してきた。


「よおティカちゃん!」


コック見習いのイアンだ。戦うコック(見習い)として有名。そしてナンパ師としても有名。


「退いてくれないか。腹へってんだ。」


ぶっきらぼうにそう言って、横を通り過ぎようと身を返したものの、サッと進路を阻まれた。


「俺とたーべよっ!」


言うが早いかガッチリ腕を掴まれ、ずるずると引っ張られる。離せ、と言おうとしたけれど、どうせ無駄に終わるのだろうと諦めた。


「お姉さーん!俺のまかないとティカちゃんのご飯くれー」


「あいよー!」


おばちゃんに対する、「お姉さん」が効いたらしく、おばちゃん・・・いやお姉さんは快くご飯を作ってくれた。今日のメニューはベーコンと野菜の和え物とスープとパンだ。基本的に船の食事は保存が利くものが多い。長い航海の間に腐ってしまうからだ。肉類は、甲板の一角にある鶏小屋で賄っている。故に牛肉と豚肉はほぼ陸でしか食べられない。商船を襲ったときにたまに食べられる事でさえラッキーだ。



まだちらほらと人の残っている食堂の一角。イアンは自分の仲間の居るテーブルに近づき、「皆知ってるよな?!ティカだ!」と言ってからどっかりと椅子に腰掛け、自分の横の椅子を指差して座れ!とニシシと笑った。大人しく座ると、イアンの横から声が聞こえた。


「おい、ティカが迷惑そうだろうが。何やってんだよ」


その言葉に激しく同意し感謝した。戦闘員のマルコだ。


「いーじゃん!なあ!」


「迷惑だコノヤロウ。」


「ひどおい!俺っちないちゃう。」


「あーご飯冷めちゃう。イタダキマス。」


「無視?!」


こんなやり取りを繰り返しつつ、野菜を頬張る。美味しい。流石おば・・・お姉さん。




「おーい!」


大きな声と同時に、縄が飛んで来た。そして私に絡みついた。そして引きずられた。幸いご飯は食べ終わった後だったのでこぼれる事はしなかったのだが、一体何なんだ。


「オイ!大変なんだよ!ちょっとこっち来てくれ!」


「お前かパウル。」


「おう!・・・ブホアウっ」


私をナメるな。咄嗟に縄抜けをして踵落としを食らわす。


「なんなんだよお前!用件あるなら先に言え!」


そう言って床に突っ伏したパウルを引っ張り起こす。


「ハッ!そうだ、こんな事してる場合じゃねえ!」


「だから何なんだ!」


パウルはゆっくりと息を吐き出して私の目をじっと見据えた。鋭い三白眼に動揺の色が混じっている。




「ポポが行方不明になった。」

















気付いたら私は走り出していた。




















「クソッタレ!何処行きやがった!」

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