あの子は何処へ
ティカが船長室からジルヴァを連れ、あの夫婦の部屋をたずねる。ジルヴァは、まだ眠そうだが、流石に子供が行方不明となってはのんびり眠っていられなかったらしい。さっさと派手な刺繍の施された服に着替えてやってきた。
ティカが部屋のドアをノックすると、震えるどうぞ、という声が聞こえてきたのでさっぱりした木のドアを開けてみるとドアのすぐ傍にロイが立っていた。どうやら弟が行方不明になったと聞いておきたらしい。黒髪が所々跳ねているが、寝巻きからは着替えたらしく、シャツにっだぼっとしたズボンと腰巻という格好だ。
「父さんは向こうだ。母さんは他の兄妹をあやしてる。」
そういって突き当たりの部屋を仏頂面のままクイと指差すと、子供の不安そうな声のするほうへさっさと歩いて行ってしまった。
ロズの指差した部屋のドアを開けると、不安そうな、血の気の失せた顔の父親――――エルドがいた。普段ならきっちりと整えている黒髪はくしゃりと軽く乱れている。
「ああ、お待ちしておりました。どうぞ」
そういって頑丈な造りの椅子を二人に勧めた。じゃあ失礼して、と二人が腰を下ろす。
「さて、」
ジルヴァがすっとエルドの顔を見つめる。それに気圧されたようにエルドが一瞬たじろいだがキッと顔を引き締めて自分も腰を下ろした。
「ロイといったな?その子が攫われた可能性がある、という事をティカから聞いたのだが」
部屋に来る途中、ティカが粗方説明しておいたのだ。
「はい。あの子は内向的で、自ら進んで外に、しかも夜になんか出て行くはずは無いと思うんですが・・・」
はあ・・と盛大なため息をつきながら米神を押さえるエルド。幼い息子の事が心配で堪らないのだろう。
「とりあえず船内を探させよう。夜が明けるまでは少人数でしか無理だが夜が明ければ増員しよう。」
「ありがとうございますっ!!」
エルドが思い切り頭を下げて礼を言う。ジルヴァが双眸をティカに向ける。
「今起きている者を探してきてくれぬか?捜索班として探してもらいたい。」
その言葉にティカはこくりと頷くと失礼しました、と一言言ってから部屋から出て行く。
ガチャリとドアを開けるとドアの前にロズが立っていた。
「俺も行く。人数があるほうが探しやすいだろう。」
そう言うと無言でティカの後ろを着いて行く。ティカも何も言わずにさっさと歩き出した。
絶対見つけてやるからな。ロズがそう呟いたのをティカは知らない―――――




