陸から来た騎士と海に生きる戦士
星の明かりが灯る濃紺の空。その空が見下ろすのは海賊が治める海、「ディクロアイト」。美しい宝石の名前にふさわしい海。静かな漣が遮られることなくどこまでも響いて消えて行く。空と海の交わる場所は遠く、見る者はどこまでも永遠に続いているのではないかと錯覚しそうだ。
そんな海に、大きく豪華な船が停泊していた。立派な船体は、一目見ただけで上質な材料が使われていることが伺える。甲板は微かな月明かりにさえ輝き、重厚な印象を与えていた。大きなメインマストには薔薇と紅の宝石が描かれている。風に煽られ、バタバタと靡くマストは風を捕まえ、ぐんぐん前に進む。海中の魚たちはその巨体を見つけると、興味深げに眺めるか、そそくさと逃げて行くかしながら、夜の海をたゆたう。
甲板にちらりちらりと人影が動く。この船の者達は海上兵団と呼ばれる海賊や罪人を取り締まる、海上の警察だ。全員が国所属の兵団で育成され、しかもその中でも一二を争うような実力者ばかり。何処の船室にも、狭い寝台の上で体を縮こませる筋骨隆々と言った風貌の男たちで溢れ返っていた。
その海上兵団は今、ある海賊達を追っていた。子供さえ、恐ろしいほどの戦闘能力を有する海賊だ。時に残虐の限りを尽くし、島の住民全員を拷問した末殺したかと思いきや、難破した船を救助し、近くの島まで送り届ける。ある者は、彼らをまるで、というか悪魔そのものだと言う。ある者は海賊でありながら、優しさを持ち、親切心溢れる態度で介抱してくれたという。そんなちぐはぐな証言は、より一層彼らの正体がわからなくさせる。
「クソッ、こいつらの行方はまだわからんのか!」
三十代後半から四十代前半と思しき男が部下を怒鳴りつける。顔に刻まれた皺が、彫刻のように一層深くなる。机に叩き付けた拳は剣を扱うせいか、あちこち傷だらけだ。その傷の多さが彼に蓄積する経験値を物語る。
「アルベリック大佐!!!」
若い男が一人、アルベリックに駆け寄った。事務処理にでも追われていたのか顔にインクが散っている。本人も気づいているのだろうが、それさえ構わないようだ。
「何だ?この忙しい時に!」アルベリックは苛々と返事を返した。
「セレスティン海賊団の偵察に向かっていた船2隻が落とされました!!」
若い兵士の言葉に周りの兵達もどよめく。
「本当に・・・こいつらは何なんだ・・・」
そう問いかけたアルベリックに誰も答える者はいなかった。各々が彼らについて語り、剣や銃の手入れに勤しむ。近々戦闘になるかもしれない。誰もがそう予想する。
ただ、金色に光る満月はじっとそれぞれの道を行く者達を照らしていた
明るく、冷たいほど清く、優しく。
歯車は回りだした。踊れ、出演者よ




