妖精の生きる島
カイは古びた本の表紙をめくった。
少し黴臭い臭いがふわっと広がった。
1ページ目。不気味な女?の絵が載っている。緑色の皮膚にブツブツとイボができている。ニヤリと嗤った顔が醜いことこの上ない。キルアがうえっと顔をしかめた。
2ページ目。どうやら目次になっているらしい。カイがページをつうとなぞり、ブリュム・ニュアージュ島の名を探し出し、記されたページを開いた。
「ん?どれどれ・・・」
リンヤが声に出して読み上げる。
『ブリュム・ニュアージュ島の裏側のジャングル、オンブルには妖精の住まう泉がある。その泉にはジャングルの中に眠る女神像の両目にあたるブルーサファイアが沈んでいる。妖精達はその宝石を、ジャングルに迷い込んだ悪霊から宝石を守る役目を果たしている。・・・』
読み上げたリンヤはそこであっと声を漏らした。
「ココになんか書いてあるぞ」
リンヤが指差したのはページの端。小さくかすれた文字なのでよく見えなかったのだ。
『女神像の両目が填め込まれた時、この島の第二の出口が開ける。』
そこまでリンヤが読み上げたとき、訓練生全員が首を傾げた。
「色々気になるとこがあったよな」
「うん」
「出口ってのが気になるな。何で『出口』なんだ?出られるが、其処からは入れないってことか?」
「確かに」
ティカの言葉に全員が頷いた。出口とだけ記してあるのはどうも不自然だ。
「それに此処って島だよ?崖とかもあるし何とも言えないけど四方は海だし入り放題じゃない」
ポポの発言にカイがうー、と犬のように唸る。
「何処か別のところに出る、という事だろうか」
「あー!成る程ー」
「そういうことかも」
「・・って兄様?!」
珍しく大きな声を上げるティカ&訓練生ズ
「ハハハハハッ!いや、面白そうな事を話していたのでつい!」
豪快な笑い声を上げる灰色の頭の船長(兄)、ジルヴァ。
「いや、ついじゃなくて兄様、航海日誌が溜まってるって言ってましたよね終わったんですか?」
少し怒っとような声のティカに、船長はニカッと笑いかける
「ドルンの書類にこっそり混ぜておいた。大丈夫だ」
「いや、大丈夫じゃねーよ!!!」
普段の丁寧な口調を崩したティカのイラついた声を無視し、カイの持ってきた古い書物に目を向ける。
「おや、それはシャルマンの書物か?」
「あっ、はい。」
シャルマンとはカイの父親だ。優秀な航海士で、常に周りの天気や空気の流れ、時には海流の動きまでを読み取る大変な仕事を嬉々としてこなしているすんごい方だ。
「シャルマンにたまにはゆっくり休むように言っておいてくれ。あれでは体を壊してしまうと俺が言っていたと」
そういってふっと笑う顔は優しかった。
「はっ、はい!」
カイはおどおどしながらもしっかりと返事を返した。
「女神像が気になるのか?」
ふうん、と独り言のように呟いたのをティカは聞き逃さなかった。
「何を考えていらっしゃるのですか。」
ジルヴァは睨むように見つめてくる妹を見てふっと笑った。
「やはりお前には敵わぬな」
「それより兄様。後ろ。」
「あ」
ジルヴァがその時見たものは笑顔ながらも恐ろしい殺気を放つドルンだった。
「やっぱり俺の書類にコレをいれたのはあんただったんですね。」
嫌に丁寧な口調のドルン。彼はジルヴァの幼馴染なので普段はタメ口を認めているのに。そして手には航海日誌と思しき書類。彼の後ろからゴゴゴゴとでも言うような音が聞こえる。(気がする)
そしてジルヴァはバタバタ抵抗しながらも、ものすごい殺気を放ちながら歩くドルンにひきずられていった。通路で出くわした可哀相な方々がギョッとしたように道を空ける。
あなたのいくみち




