第八話 ついに俺はチートを極めた……かもしれない
それから色々あった。
色々で片付けるのは乱暴だけど、それ以外に言葉もない。
世界中はとっくに旅をしたので、違う世界に足を踏み込んでいった。
妖精や神の世界。
悪魔のいる世界にも足を向けた。
神の力があるのでそれはもう好き勝手できた。
行く先々で争いがあって戦いがあって。
それに勝利して。
神や精霊、悪魔の友人や仲間を得て。
お約束通り、色々な美女から言い寄られて。
財宝と呼ばれるものを探したり、新たに作ったり。
混乱してる世情をなおして世の中を立て直したり。
そんな事をしてるうちに、寿命を迎えた。
数え切れないほどたくさんの子孫に囲まれて息を引き取った。。
さすがに同世代の者達は既にいない。
何せ、神の力のおかげで、俺の寿命は150年ほどに伸びていた。
平均寿命が50~60年のこの世界では、人間を超越した寿命だった。
もちろん前世でも、ここまで長生きした者はいないだろう。
少なくとも、記録にある限りでは。
死ぬのは怖くなかった。
既に一度死んでるし、それで神とかいう屑にも出会った。
死んでもまたそこに行くのは分かっていた。
だから、既に先にいった者達にもそこで会えると思っていた。
俺のために泣いてる者達にも、後で会えると信じていた。
だから、最後も笑っていけた。
そしたら、こいつがいたわけだ。
「こいつって言うな、こいつって」
いや、だってよー。
お前なんぞ呼んでもいないし。
どうして来たんだ?
「お前が俺の力を奪っていったからだろ」
いいじゃん、別に。
あんたの力のほんの一部。
それも爪の垢にもならないくらい小さなもんじゃん。
「やかましい!
自分のものをもっていかれて気分の良い奴なんているか」
変なところで世俗的だな。
「そんな事はいい、さっさと力を返せ」
何言ってんだ。
俺はこれからやる事があるんだよ。
「なんだと?」
せっかく手に入れた力だ。
有効活用しないとかわいそうじゃん。
「貴様が決めることじゃ……」
俺が決めることだ。
「ふざけるな」
お前が正しいってわけでもないだろ。
勝手な事ぬかすな。
俺にはやる事がある。
「何をよまいごとを」
これから俺の世界を作らなくちゃならん。
「…………は?」
なんでかしらんけど、ファンタジー世界に飛ばされたが。
今度は違う。
あの世界で使い続けて色々気づいた。
この力があれば世界くらい作れるって。
「おい、何を言って……」
俺は俺の世界を作る。
俺の夢だった、二次元を。
「…………ちょっと待て」
そして、次元の壁に阻まれてたあの娘達に会いにいく。
「…………」
前回もこの力を使えば、そうする事が出来た。
でも、それに気づく事も出来なかった。
けど、今はちがう。
「あの、もしもし?」
俺は、多くの同志が求めた世界を作る。
そして、同志達の楽園を作る。
「おーい、聞いてるー?」
俺が虐げられたあの世界で、それでも自分に正直に生きた同志を。
傷つき疲れ、それでも自分の心を裏切らなかった仲間を。
俺は迎え入れる。
そのための場所を、世界を作る。
「あのー、そのー、ちょーっとイイデスカー?」
俺たちの俺たちによる俺たちのための楽園を。
天国を。
────二次元を!
「ねえ、ちょっと」
そのためにはお前の力が必要だ。
ガタガタ言わずに自分の心(世界)に引っ込んでろ。
この、引きこもりのニートが。
「…………」
嘗めんじゃねえぞ。
俺はな、部屋に引きこもりネットに引きこもっていた筋金入りだ。
二次元の住人だ。
貴様なんかとは格が違う。
「あ、えーと、その、まあ、なんだ」
というわけで、俺はこれから二次元を作る。
邪魔だからこっち来んな。
「…………本気なのか?」
こんな事冗談で言えるか。
見てろ、俺の時代はこれから始まるんだ。
さあ、この身に宿った力よ、世界を想像…………いや、妄想せよ!
光はいらない、萌えよあれ!