第七話 青年期の俺もチートだった。
冒険者として名を高めていった俺は、十八歳になる頃にはもう一流と呼ばれていた。
神とかいうあの屑の力があったればこそだが。
それでも、根性も心魂も心根も腐りきってるあんなドアホな存在が用いるより有効活用していた。
どうやってそれを判断するんだ、なんて野暮な事を聞かれそうだな。
もちろん、この俺が決めた。
異論も反論も認めん。
俺が、俺こそが、俺だけが正義だ!
そんなステキ理論をふりかざす俺だが、どういうわけだか周りは、
「それもそうか」
なんて言ってきやがる。
以前は、それが俺の社会的地位や見た目や能力から、周りがそれを認めてると思っていたが。
どうもおかしいと思って神の力を使って調べてみた。
なんの事はない。
無意識に神に全員が従ってただけだった。
神の力というか、無意識に発動してる常時魔法みたいなもののようなのだが。
これが、無制限に周囲の精神を支配していくというものらしい。
元々が、支配や制圧という力をもってる神とかいう存在の力らしい。
「らしい」とはっきり断定できないのは歯がゆい。
でも、これを調べたのが自分がふんだくってきた神の力によるものだから信憑性がもてない。
それが一番高い可能性だと思うのだが。
だが、こんな力で周囲が勝手にひれ伏してるのは納得できなかった。
そりゃあ、既に両手両足の指の数では足りなくなった押しかけ彼女達はありがたい。
何度理性を蹴飛ばして襲いかかってやろうと思ったことか。
だが、エロゲーの主人公ならともかく、俺はそこまで鬼畜にも割り切ることもできなかった。
だって、こいつら三次元じゃん。
二次元の彼女に、画面を越えて会いに行くならともかく。
何が悲しくて現実の女とアンナコトやコンナコトしなくちゃならんのだ?
そりゃあ美人でスタイルもいいよ。
性格も頭も良い子が揃ってるよ。
でもさ、俺が欲しいのは二次元なんだ。
すぐ傍にいるからって、三次元で妥協してどうするよ?
しかも浮気だぞ。
本命にたいして申し訳ない。
前世から変わることなく俺の傍(のパソコンの中)にいてくれた心の嫁達を裏切る事などできない。
操を立ててるわけじゃないが、俺は俺を裏切らなかった者達を大事にしたかった。
まあ、やる事はやってたんだけど。
だってもったいないじゃん。
話がそれたな。
元に戻そう。
冒険者としての活躍は、まあ順調だった。
ゴブリンやオーク、それとヘルハウンドや妖樹なんてあたりから始まったモンスター退治などだが。
この頃にはモンスター軍団との戦いに身を投じる事となった。
何でか知らないが、やたらとそれらの動きが活発だったのだ。
おかげで国の中を右から左へ、大陸のあちこちに西に東にと文字通り奔走した。
移動手段も、最初は足だったものが、馬に。
それから天馬に。
そして転移魔法に。
最終的には、高速飛行船にまでバージョンアップしていった。
本当にそれほど動きが活発だったのだ、モンスターの。
そんで、その背後にいた邪神とかその教団とか、邪神の眷属である魔物だとか。
それらとの戦いに身を投じていった。
言っちゃなんだが、楽しかった。
被害にあった皆さんは気の毒だったし、義憤もおぼえた。
だが、世界のためにモンスターや邪神と戦うというのは、スリルがあって爽快感があって。
俺がここに生きている事と、ここにいて良い理由を与えてくれてるように思えた。
そんな冒険が三年ほど続く。
俺が二十一歳になった時、最後の決戦が行われ、俺たちは勝利した。
相手は邪神であったが、こっちも神の力(の一部)を持っている。
負けないまでも対抗は出来た。
ごめん、本当の事を言う。
相手より俺の方が強かった。
いやね、さすがに邪神の本拠地に乗り込むときは覚悟を決めたよ。
間にいる、デビルドラゴンや、デビルロード、デビル将軍なんて幹部あたりはの雑魚はともかく。
さすがに親玉であり、神である邪神は楽にはいかないだろうって思ってた。
うーん、強いは強いんだよ。
他の雑魚なら一ターンで終わる所を、五ターンも粘ったんだから。
そんなわけで世界を救った俺は、冒険者から英雄にクラスチェンジした。
故郷に錦を飾り、家を飛び出して以来久しぶりに家族の所に帰った。
家を継いでしっかり守ってた弟と、幼なじみの良い男の所に嫁いでいた妹も含め、皆が温かく出迎えてくれた。
こんな良い家族を俺は捨てたのかと思うと涙が出そうになった。
家族だけじゃない。
一族だけじゃない。
かつての友人も、おかえり、おかえり、と口々に言ってくれた。
前世と正反対・真逆・百八十度ターンな対応だ。
俺は幸せもんだなあ、とあらためて思ったよ。
例えそれが、神の力による相手への精神干渉だったとしても。
…………ああ、中にはいるだろうね。
「そんな操られたもんに何の価値がある」とか言う人が。
じゃあ、本心であろうと暴言罵倒を聞いていたいのか?
横暴な暴力の的にされたいのか?
俺はごめんだ。
作り物でもいい、優しく接してくれる二次元を求めた俺だ。
例え作り物でも好意に包まれてる方が幸せだ。
苦痛しかない真実の何がいい。
優しい嘘にまみれて生きた方が断然マシだ。
女の子達に、裏で陰口叩かれる事もない。
前世とえらい違いだよ。
温かく迎えてくれた家族や友人と久しぶりの交流を楽しみはした。
それ以上に、身についた冒険者の習性が、再び旅に出るように促したが。
そしてまた色々あるわけだ。
もうお分かりと思うが、説明してる余裕はない。
なので、ここまで述べた主要な部分以外は大幅に省略。
大変申し訳ないが、ご了承を願う。
ただなあ…………。
なんで魔王や悪魔の幹部とかも女なんだろ?
で、どうしてそいつらが俺の押しかけ女房的なもんになってんだろ?
まあ、全員美人だったし(人間形態になれば)。
もったいあいなあ、とか思っちゃったし。
倒した後に、「命まではとらん」とか格好つけたくなるじゃん。
で、こっちが笑顔を浮かべたら、なーんかくっついてきちゃって。
しょうがないから女の子達の中に加える事にしました。
これで何人目、いや、何十人目だ?
面倒くさくて数えてもいられない。