第五話 子供の俺もチートだった
んで、それから十五歳になった。
幼少期の出来事のおかげで、喧嘩をふっかける馬鹿はおらず。
周りにいるのは気持ちの良い少年少女ばかり。
保育園・幼稚園(にあたる施設)の頃からの友達とも仲良くできていた。
馬鹿ガキに絡まれてた女の子なんぞ、何かにつけて俺と一緒にいようとしてくれて、本当に幸せだった。
彼女は、成長するにつれてドンドン美しくなっていった。
いやもう、びっくりするくらいに。
二次元最高が俺の変わらぬ信条だったけど、それがぐらつくとは思わなかった。
しかも、成長するにつれて、態度や仕草が女の子らしくなるというか。
なんで俺を見つめる目が潤んでるんですか?
なんで俺を見るときの頬は桜色に染まってるですか?
なんで俺が振り向くと、顔を背けちゃうんですか?
なんで顔を背けながらも、上目遣いにチラチラ俺を見るですか?
もうね、勘違いしちゃいますよ、本当に。
しかも彼女だけじゃないのにびっくり。
他にも、ストレートロングのクールビューティ系なキレイ系女子とか。
ふんわり柔らかおとなしめ系女子とか。
快活元気運動系女子とか。
内気インドア知識系女子とか。
ちょっと不思議デンパ入っちゃってる魔法使い系女子とか。
よくもまあこんな娘達が周りにいるもんだと思うくらいの人口密度。
何この恋愛シミュレーションってな具合ですわ。
さすがにエロゲー的な展開にはできんかったけど。
誘えば頷いてくれただろうけど。
いくら俺でも、そこまではできんかったですよ。
まあ、いわゆるバレンタインみたいな、気持ちを伝える系行事では、全員から告白されたけど。
もう、俺の気持ちは有頂天。
このまま死んでもいいやと思ったくらい。
罰ゲームで告白の対象にされた前世と大きな違いですよ。
あれは酷かったなあ。
おかげで三次元に見切りをつけたけど。
二次元に進む決断が出来たけど。
それもこれも、俺が順調に美形に成長してるからだろう。
父ちゃんと母ちゃんの遺伝子は見事に仕事をしてくれました。
ありがとう、美形の父ちゃん。
ありがとう、美女の母ちゃん。
二人とも、実年齢より十歳若く見えるくらいだもんなあ。
その血を引いてる俺も、恩恵に浴してます。
ただ、もったいないけど、全員に「ごめんなさい」と言っちゃった。
嫌いじゃないのよ。
むしろ全員ものにしたかったよ。
ハーレムルート突進だと思ったのよ。
でもね。
俺、やりたい事あるんだ。
十五歳で教育機関(学校の事ね)を出たら、成人扱い。
そしたら仕事につくでしょ。
普通は家の仕事を継ぐんだけどさ。
俺、自分の実力を試したかったのよ。
だから、世間で最底辺の一つといわれてる冒険者になりたかったの。
そんな所にあんな良い子達を連れてけるわけないじゃん。
…………三次元だし。
裕福な商人や、中央の官僚や、魔法学院の一族や、元老員議員の娘とかをつれてけるわけないじゃん。
将来を考えろっての。
…………そもそも、三次元だし。
そんなわけで、俺は教育機関卒業と同時に、町に飛び出して、冒険者になった。
誤算だったのは、女の子達がついてきたことかな。
しかも俺と組んでくって言い出して。
おかげで、男一人に女が何人もっていうハーレムパーティだよ。
やったね、って喜ぶべきか、どうしてこなったと嘆くべきか。
神様教えて、ってほんの少し本気で思っちゃった。
その他にも語ると、それこそ文庫何冊もの大冒険とか学園物語とかになっちゃうのだろうけど。
それを語り出したら時間がどれであっても足りないから省略だ。
ついでに、夢に描いた【大人専用】な展開にまで突入。
もう、最高。
超最高。
やりたい事のために後回しって思ってたけど。
本能には勝てませんでした。
勝とうとも思いませんでした。
よくぞ負けた、俺の理性。
いやー、生まれて初めて…………前世から数えて初めての体験だった。
生きてて良かったよ、本当に。
一回死んでるけどね。