第四話 幼児の俺はチートだった
さて、五歳か。
この年齢までくると、更に分かる事もあるな。
まず、俺。
今回、有力な家に生まれた事もあって、生活環境がメチャクチャいい。
そのおかげで栄養失調や医療なんかも充実してる。
技術や文明レベルは中世っていうか、日本でいう江戸時代くらい?
そんな程度なんだが。
魔法がある。
この魔法のおかげで、怪我や病気の治療もかなりできるようになってる。
もっとも、魔法使いの数が少ないから、全員に行き届くわけではない。
その恩恵を受けることが出来る階級というか地位にいるから問題ないが。
で、そんな階級階層というだけでなく。
俺自身もかなり優れた存在みたいだ。
まだ五歳なんではっきり断定できないが、頭や身体能力はかなり良い方みたいだ。
見た目も、周りにいるお子様達の仲では群を抜いている。
この先どういう風に成長するかは分からないけど、今の段階では、俺が周囲で一番の美形だ。
同じ年齢の幼女から、そのお母様方まで、俺に釘付けにならない女はいない。
このあたり、はぎとった神の力なのか、両親および親戚一同に共通する遺伝子のおかげなのかは分からない。
だが!
俺は今、前世で決して得られなかったモテ期を迎えてる。
なんというすばらしい状況だ。
ありとあらゆる者達から好意を向けられるなんて。
…………上っ面の綺麗事と、裏で話される汚い本音に比べるべくもない。
でまあ、それなら男からの嫉妬とかもきそうだが。
意外とそれは少ない。
周りも周りで、「しょうがないな」という雰囲気になっている。
どうも、俺に対しての好感度はかなり高いみたいだ。
例外はいないでもないが、本当に少数だ。
そんな周りの声を集めてみると、
「顔が良くて、頭が良くて、性格が良くて、非の打ち所がない」
となるようだ。
誰だよ、それ?
こっちは特別何かをしてるわけじゃないんだが。
これも神の力?
それでも例外はいる。
そいつらは、こんな地位や階級にいるにも関わらず、何とも人間の小さい奴らだった。
前世でいうところの、不良とかチンピラに近い気がする。
で、そいつらがまあ、俺に絡んでくるわくるわ。
子供ながらに大人げない(いや、子供なんだが)と思ったのだが。
さすがにやりすぎだな、と思った。
おまけに、俺の友達の一人である女の子(友達の中では一番かわいい)にちょっかいというかからかってるというか。
イジメてるとしか思えない事をやり続けてる。
かわいいから手を出したくなるんだろう、たぶん。
あと十年したら、鬼畜系のエッチな展開になってたかもしれん。
なので、キレた。
みんなの見てる前で、殴る、蹴るの連続。
いや、自分でもびっくりしたが、凄い凄い。
殴れば吹き飛び、蹴っても吹き飛び。
数メートルどころか子供の遊び場的な、前世でいう保育園や幼稚園みたいなところ部屋(といっても体育館くらいの大きさ)の壁まで飛んでった。
で、当然ながら相当な重傷。
急いでやってきた魔法医者のおかげで命はとりとめたようだが。
それでも、そいつと取り巻き連中は、俺への恐怖を目に宿していた。
おかげで、それ以降俺の目の前でふざけた事はしなくなった。
俺のいない所でやらかす事はあったが、その度に俺にその情報が口コミで流れるようになってきた。
「何かやられたら俺に言いに来てくれ。すぐにやってやるから」
と言っていたせいだろうけど。
ただ、その事でやりすぎだ、といわれたり先生(に近い立場の大人)に叱られたが。
気にしてもいられない。
だいたい神に文句を言ってる俺に、先生の言葉程度がきくわけもない。
「うるせえ」と言って「あの馬鹿の肩を持つのかよ」と言ったら黙りやがった。
困った事に、馬鹿ガキの親とか一族がそれなりに力を持ってる連中だったらしい。
だからガキもそれを笠に着て平気で悪さをしてたとか。
親も親で、たいがい屑らしいが。
力をもってるのはいいけど、力を悪用すんなっての。
だから、神の力を悪用しました。
馬鹿ガキの一族についての情報を調べようと意識を集中すると、まあ出て来る出て来る。
テレパシーっていうのか?
馬鹿ガキと一族関わる色々な情報が頭の中に流れこんで来やがった。
賄賂の送付先とかも含めて。
でも、そいつらはその後にとっておくとして、まずは馬鹿ガキとその家族だ。
使用人や護衛を含めて何百人って屋敷に、転移(テレポート)して、入り口から突進。
魔法のある世界なので、それっぽく魔法みたいにして神の力を使用。
門を吹き飛ばし、その中にある魔法を用いた監視・迎撃装置を破壊し、護衛の戦士を吹き飛ばし。
警備についていた魔法使いも、魔力合戦で押しつぶし。
屋敷の使用人で、無理矢理働かされてる人以外も吹き飛ばし。
屋敷も破壊して。
その奥に逃げ込んだ馬鹿ガキとその家族に、
「ふははははは!
どこに逃げようというのだぁ~?」
と悪役みたいな台詞を吐きながら。
お約束通りに呪いをかけてやった。
いや、他の使用人や護衛(どう見ても裏社会系の風体の連中でした)みたいに、床や壁に叩きつけてシミにしてもよかったんだけどさ。
悪事が出来ないような呪いと、暴力や暴言を吐けないような呪いをかけておく事にしたのよ。
破ったら激痛が走るようにしておいて。
それしかない連中みたいだから、大変だろうなあ、と思った。
一年もしないうちに一族の別荘(つーか、牢獄?)に放り込まれたけど。
表沙汰にしたくなかったんだろうね。
生きてはいるけど、死ぬまで幽閉……じゃない、じゃない。
死ぬまで長閑な田舎でスローライフらしい。
いや、便利だね、この情報収集機能。
テレパシー最高。
そんな事まで手に取るようにわかるんだから。
おかげで俺の幼年期と子供時代は実に平和なものになったよ。