第二話 死んだら神に喧嘩をふっかけた
「聞き間違いじゃねーよ」
おう、やっぱり声がする。
こんな何も無いところで。
誰だ?
お化けか幽霊か?
「いや、その発想どうにかしようぜ」
つってもな-。
声はすれども姿は見えずって、典型的なお化けや幽霊じゃん。
他に何があるってんだ?
「だから、そういう方向で考えるなっての。
もっとあるだろ。
崇高で遠大で偉大なものが」
知らん。
自己紹介ならはっきり言え。
「ええい、お前のような不心得者に名乗る名前などあるか!」
じゃあ、いちいちつっかかってくんな。
俺はこれから極楽浄土にいって、ウハウハのムフフのゲハゲハな事をせにゃならんのだ。
「出来ると思ってるのか!」
思わない。
「思ってないのかよ!」
でも、やる。
「どういうこった!」
可能性としてゼロだろうと、必ずやってやる。
出来るかどうかなんて関係ない。
「ぬうううう。
変なところで強情だな」
伊達や酔狂で死ぬまでゲームをしてたんだぞ。
それくらいの根性がなくてどうする。
「すげー嫌な説得力だ」
分かったなら邪魔すんな。
俺はこれから3Dで出来なかったエッチでエロエロな事をあの世で楽しむんだからな。
「だから、そうはさせねえって言ってんだよ」
なんだと、どういうつもりだ。
「ええい、話しが進まねえから黙ってろ。
まず、俺だが……」
最初からそうしておけよ。
変にもったいぶるから話しがこじれるんだ。
ネットでもいたぞ、そういう奴。
「だったら、黙ってろ!
いいか、俺は神だ」
だからなんだ。
「てめえ…………いや、それよりも説明をする。
いいな、よく聞け」
…………
…………
…………
…………
「何で黙ってんだ?」
静かに聞いてやろうとしてんだろうが。
何か言えばうるさいって言って、黙って聞いてりゃ文句を言って。
どうしってんだ?
言っとくけど、この二つに間や中間点は無いぞ。
どちらか一つだ。
どうしろってんだ?
「ああ、分かった分かった。
説明が終わるまで、とりあえず黙ってろ」
…………
…………
…………
…………
「そうだ、それでいい。
で、だ。
とりあえずお前の待遇だが、天国には入れん。
これは俺たちのルールだ。
お前に分かりやすく言えば、入国制限とかと同じだ」
…………
…………
…………
…………
「……黙ってるのも、ちゃんと聞いてるのかどうか分からなくて不安になるな。
ああ、だからって口を開くなよ。
そもそも魂に口はないが、言いたい事は分かるな?」
…………
…………
…………
…………
「そうそう、そのままもう少し黙っててくれ。
それでだ、だからと言ってお前を地獄に落とすってわけにもいかん。
そこまでする程の罪も犯してないからな。
なので、お前は転生して再び人生をやり直してもらう」
…………
…………
…………
…………
「お前だけじゃない。
修行が足りない魂は、再び地上で人生を全うしてもらう。
その中で、大切なことを会得してもらう事になってる。
いいな?」
…………
…………
…………
…………
「ああ、もう沈黙はしなくていい。
とりあえず返事を聞かせろ」
断る。
「ふざけんな!」
ふざけんじゃねえ。
せっかく死んだんだぞ。
ようやく三次元から解放されたんだぞ。
あの、クソみたいなイジメや無視から解放されたんだぞ。
くず共の陰口から解放されたんだぞ。
友達の振りした連中に、裏掲示板で馬鹿にされる事から開放されたんだぞ。
なんでまたあんな所にもどらにゃならん。
「…………まあ、お前の言いたい事は分かる。
けどな、このままお前を天国に迎えるわけにゃいかねえんだよ。
こっちにも受け入れ基準てのがあるんだ」
しけてんな、それでも神か。
「神ってのはな、信仰心のある奴しか救わないんだよ」
分かりやすいほど現金だな。
「お前、さっき言ってた連中と一緒にいたいか?」
冗談は声だけにしろ。
「むかつく言い方だが、言いたい事は伝わったようだな。
つまりそういう事だ。
俺だってふざけた奴を招き入れたくない。
だから、条件をクリア出来た奴だけ仲間に入れる。
分かったな?」
腹が立つがよくわかった。
悔しいが、俺じゃあハーレムに入れないんだな。
「ハーレムから離れろ。
つーか、エロゲーみたいな展開を期待すんな」
他にも、エロ漫画にエロ小説にエロアニメもあるぞ。
あ、実写関係のエロはいらん。
あんなもん気持ち悪いだけだ。
「つくづく偏ってんな」
そんな人間を大量生産してる地上を作ったのはどこの誰だ?
「追求すんな。
俺だって色々あるんだよ」
神のくせに全能でも万能でもないじゃねえか。
「ほっとけ。
それよりも。
そういうわけだから、お前は転生だ。
次の人生がんばれよ」
だったら何かくれ。
「やると思うか?」
くれなきゃ天国に押し入るぞ。
「どうやって?」
どうやってもだ。
さっき言っただろが。
頭悪いのか?
「あ-、はいはい。
さっさといけ…………って、あれ?」
だから、そんな勝手な話しなんぞ承諾するわけねえだろ。
どんだけ神を恨んで生きてたと思ってんだ。
「おわー!
何しがいみついてんだ。
さっさと離れろ」
天国に行くまで離れるかよ。
「だー、いい加減いしろ!
さっさといかんか」
ぐおふっ!
なんだ、凄い衝撃が。
「…………ようやく離れたか。
まったく、手間をとらせやがって。
…………
…………
…………
…………
…………
…………
…………
…………って、あれ?
なんか足りないような」
ちくしょう、おぼえてろよ、神!




