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ドラゴン VS 魔王

「ガアアアアアアアアアアアア!!!」


 ビリビリと地から体に響いてくる低音に私の体が震えました。

 それは巨大怪獣の鳴き声。

 農民のみなさんが恐れおののき逃げ惑うのが馬車の窓から見えました。

 ですが皆さんやたら避難が早いです。

 鼻水を垂らしながら生まれてから一番頭の悪そうな顔をしながら呆然とするのは私たちだけでした。

 あ、そうか。

 何度も襲撃されてて慣れてるのか!

 これは日常の出来事なのかー!!!


 と、納得している暇はありませんでした。


「ぐごおおおおおおおおお!!!」


 巨大怪獣が炎を吐きました。


 その先には一面の麦畑。

 そのすべてが焼き払われていきます。


 ぎゃあああああああ!

 収穫前の麦があああ!

 私の懐に転がり込む税金の甘い汁がああああああああ!

 少し盗んでラーメンの麺作ろうと思ってたのにいいいいいい!


 私はお小遣いを落とした頭の悪い小学生のように悶絶しました。


 あ、これ前世の怪獣映画で見たことあるわ。


 その時、私は思わず現実逃避をしました。

 麦をやられたショックのせいに違いありません。

 その間にも農園に火がつき全てが焼き尽くされていきます。

 他の作物も全てが火に飲まれていきました。

 全て収穫前なのに!

 それはまさしく地獄絵図でした。


「シルヴィア様! アレックス様! 無事でございますか!!!」


 馬車の中で鼻水を垂らしながら固まっている私たち。

 すると馬車の扉が乱暴に開けられました。

 中に入ってきたのは守備兵団の若い団員でした。


「クソ! 収穫前に来るなんて! こんなこと今までなかったのに! はやくお逃げください!」


 逃げる?

 でも逃げたら、農民さんの明日の生活が……

 ああ、そうか。

 これはアレだ。


 その時、私の脳内の魔王回路が答えをはじき出しました。

 ちゃきちゃきちゃきーん!


 これは全部、勇者(リア充)の差し金に違いない。


 全部ヤツらの陰謀なのです!!!

 そう。

 考えればすぐにわかることでした。

 クリスマスにバレンタインに各種お祭り。

 全てお一人様をあざ笑い精神的に追い込むためのイベントです。

 消費と言う名の餌で商人を操り、リア充どもは数多(あまた)の世界で我々お一人様を絶滅させてきたのです。

 まさにジェノサイド!!!

 我らお一人様がお前らに何をした!!!

 魔王(非モテ)だってけなげに生きてるんだぞ!

 なぜ貴様らはそうやって何事もなかったかのように我々非モテを踏みつぶしていくのだ!!!


 ※あくまで魔王個人の感想です。


 そう、これも全部リア充のボケどもの陰謀に違いありません!!!

 私がかれこれ1000年もお一人様を続けているのも、ハーレム展開が一度もなかったのもリア充の陰謀です。

 そうなのです!

 せっかく痩せたにもかかわらず背が微妙に小さいのも、微妙に足が短いのも、こないだ階段踏み外してコケたのも、口内炎ができて痛いのもリア充の陰謀なのです!

 いきなりの難易度ナイトメアモードに、私の精神は被害者妄想に逃げないと壊れてしまうほど追い込まれていました。

 そしてその時だったのです。

 私は決断を下したのです。


「戦争じゃあ……」


 私は静かに震えながらつぶやきました。

 少し渋いです。

 これがクールというヤツに違いありません。


「へ?!」


「おどれボケェッ!!! 戦争じゃああああああッ!!! 兵隊集めろやあああああああぁッ!!!」


 私はとうとうキレました。

 許せなかったのです。

 この理不尽が。

 リア充どものあの勝ち誇った顔が。

 これは我々非モテの存在をかけた戦いなのです。

 私は自ら兵隊集めろと言っておきながら腰に差した宝剣を抜きました。

 家の宝物庫から換金目当てで盗んで(パクって)きたものです。

 敵に攻めて込まれて城が陥落したときに金目のものを持って逃げるために、シルヴィアは鑑定師レベルの観察眼を持っているのです。

 もちろん国宝レベルの宝剣片手にこのまま突撃するつもりです。


「っちょ! アレックスなにを言ってるのだ?!」


「リア充の好きなようにはさせるかあああああああッ!!!」


 血走った目をした私は叫びました。

 こうして私はドラゴンに挑むのでした。

 そう、リア充への反撃の狼煙はたった今、上がったのです。

 褒めてくれてもいいんですよ!



 そこはまさに地獄でした。

 焼き尽くされた畑。

 逃げ惑う人々。

 その地獄の中心に女の子が一人。

 小さな女の子がドラゴンから逃げていました。

 逃げ遅れたに違いありません。

 空を飛ぶ巨大怪獣はドラゴン。

 目視で10メートルはあるでしょう。

 この世界の分類学には詳しくないので断定はできませんが、ワイバーンというやつだと思われます。

 ワイバーンは口を開け滑空してきました。

 さんざんもてあそんだ獲物を仕留めることにしたのです。

 空から大きな口がその子を飲み込もうと……

 カサカサカサ。


「おどりゃああああああああああッ! 魔王きーっく!!!」


 まるでシーズン真っ最中のゴキブリの如きスピードで私がやってきました。

 私は女の子を抱き上げて、そのままドラゴンの横っ面に野放図な前蹴り、いわゆるヤクザキックを入れました。

 ドラゴンの巨大な歯が何本か吹き飛び、轟音を上げながら地面に突き刺さります。

 ドラゴンは何度かバウンドしてゴロゴロと転がっています。


「ギャアアアアアアアアアアアッ!!!」


 ドラゴンの悲鳴が響き、歯を折られたドラゴンが悲鳴を上げ悶絶しながら転げ回りました。

 質量にして数百倍はあろう相手へ私のキックは十分な被害をもたらしたのです。

 お前人間ちゃうやろ?

 いいえ。

 ばっちり人間です。

 ただサムライ魔王の鬼のような特訓と、普通だったら百回は死ぬような肉体改造でパラメーターがバグっただけです。

 確かに今の私は魔法が使えません。

 ですが気功に関しては死ぬほど練習しました。

 それこそゲロ吐くほど練習したのです。

 今でもまぶたを閉じるとあの恐怖の日々が蘇ってきます。

 今では魔王城の中ボス程度には使いこなしていますとも!

 もはや魔導地雷の地雷原を駆け抜けた私に怖いものなんてないんじゃああああ!


「てめえコラァボケカスゥッ!!!」


 私は何を言っているのか自分でもわからないことをわめき散らしました。

 完全にブチ切れていたのです。

 非常時にかっこいい台詞を言える勇者(リア充)と、なにをわめいているかわからない魔王(非モテ)

 これが人生的なものの難易度に反映されているような気がする今日この頃です。


 私は歯をへし折られ悶絶するドラゴンを華麗にスルーして、そのままダッシュで安全地帯に駆け込み、女の子を逃がします。

 そしてドラゴンの方を向くとニタァッと薄気味悪く笑いました。

 ドラゴンは一瞬ビクッとしましたね。

 ウケケ!

 勇者(リア充)どもへの反撃はまだ始まったばかりなのです。


「ぐるるるるる?」


 なんだこの生き物は?

 ドラゴンはそう言っているようでした。

 人間ですがなにか?


 私は間髪入れず、ドラゴンの顔面に……

 ではなく、なぜかサイドへ回り込みました。

 ドラゴンは必死になって私を潰そうと前足でドラゴンパンチを繰り出します。

 それを私は黒い流星(ゴキブリ)の如きスピードでそれを避けていきます。


 にゃははははははははは!


 そして……ターゲットロックオン!


「魔王スラーッシュ!」


 私は剣を抜いてドラゴンの足の小指を狙って斬りつけました。

 足の小指をタンスの角にぶち当てたことのある皆さんなら、この痛みが想像できることでしょう。

 大きくて強いヤツとの戦い方なんていくらでもあるのです。


「ギャアアアアアアアッ!」


 ドラゴンが泣き叫びます。

 私には「らめーっ」て聞こえました。


「うけけけけ!!!」


 私は最高の笑顔になりました。

 今、我々は歴史的瞬間にいるのです。

 魔王が始めて勇者と書いてリア充と読むクズどもの魔の手から、最愛の領地を守ったのです!

 領地に着いてから半日くらいで思い入れとか全然ありませんけど。

 三千大世界の魔族(非モテ)のみなさん!

 褒めて!

 褒めて!


 ……と、勝ったつもりでヒャッハーした私がバカでした。


「あんぎゃああああ!!!」


 危険を感じたドラゴンが空に逃げやがりました。

 私は近接ユニットなので攻撃が届きません。

 うわーお!

 この卑怯もの!!!


「降りてこいゴラァ!!!」


 私は剣をぶんぶんと振りまして抗議します。

 しかし相手は巨大怪獣。

 私の抗議などガン無視です。


 うきー!!!


 私が地団駄を踏んで抗議していると、空に浮いたドラゴンの口が光りました。

 ドラゴンはいじめられっこが刃物を持ち出す直前の顔をしていました。


「あ、やべえ……」


 それはドラゴンブレス。

 火を噴くあれです。

 なぜ口の中が焼けないのかが不思議です。

 ドラゴンは超高温で私をこんがりローストすることにしたのです。


「って美味しくなる前に炭になるわ!!!」


 そんなツッコミをしている私に炎が発射されました。

 焼き尽くすヤツじゃなくて爆発するヤツ。

 ちゅどむ!


 おそらく激しい振動と火が私を襲うでしょう。

 一瞬で私は炭火焼きになって……


「みなさんさーよーおーなーらー!」


 アレックス先生の来世にご期待ください。

 と、あきらめの早い私の脳みそが降伏宣言を出しました。

 ところが爆発はいつになっても起こりません。


「バカなのだ!!!」


 私が目をつぶっているとシルヴィアの声がしました。

 シルヴィアが障壁で炎を防いでくれていたのです。


「さすが我が弟子!!!」


 私はサムズアップをしました。

 さすが四天王クラスの実力者です。

 キャーステキー!

 って今のうちにちゃんと倒さねば。


「シルヴィア! デカいので攻撃しつつ、私に浮遊魔法!」


「了解なのだ!」


 シルヴィアが宝物庫からパクってきた杖をかざしました。

 杖が輝き次の瞬間、轟音と共にビームが発射されました。

 純粋な魔力の塊です。

 威力だけならマップ兵器クラスです。

 これに驚いたのはドラゴン。

 負け犬のツラで慌てて避けています。


「うけけけけけけ!!!」


 シルヴィアビームを完全に回避したドラゴン。

 鼻水を垂らしながら泣きそうな顔で炎で反撃を……


「今です!!!」


「了解なのだ!!!」


 轟音と共に、はるか遠くへ行ったビームが曲がり、ドラゴンの羽に当りました。

 プギャー!!!

 ゲラゲラゲラゲラ!


「ぎゃああああああああああッ!」


 ドラゴンの悲鳴。

 羽に穴の空いた巨体が墜落していきます。


「行きますよ!!!」


 私は空へ向かい跳躍します。

 同時にシルヴィアが私に浮遊魔法をかけました。

 魔力で空高く飛び上がる私。

 墜落するドラゴン。

 私は空中で落下するドラゴンに迫りました。


「おりゃああああああああああ!!! 魔王剣ギャラクティカスラーッシュ!!!」


 ※技名は今考えました。


 私は練りに練った気を剣に集中すると大きく振りかぶり、その首へ剣を叩き込みました。

 魔王城の中ボスクラスの力で。


 つかれたにゃー。

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