怪獣
ゼスさんと謁見した後、私はデブやデブやデブと謁見しました。
地方貴族は誰も彼も見事なメタボ。
容赦なく私の黒歴史を刺激していきます。
ゼンブマシマシチョモランマ。いえ、私はデブ嫌いじゃないですよ。
自分も6歳の時は腹回りが豊かでしたからね。
サラリーマンや宮仕え、あと政治家などをやっていると飲ミュニケーションをとらねばならないことがとても多いです。
アルコール飲ませないと本音でしゃべってくれない人は多いですからね。
愛人付きマンションを与えないと本音を言わないタイプは暗殺します。
面倒くせえんだよ!
アルコールとつまみを食べたら炭水化物が欲しくなってシメにラーメンを。
ズボンが入らなくなりシャツも入らなくなり、ふと気づいたら体重が90キロオーバー。
選挙ポスターはオッサンだかオバサンだかわからんとネットで囁かれる始末。
肝臓は脂肪で肥大し、尿酸値はうなぎのぼり。
結晶化した尿酸が足の指の関節で大暴れです。
(正確には暴れるのは白血球らしいです)
……決して私の事ではありませんからね!
一般論ですからね!
通風超痛えええええぇ!!!
そして気がついたら血糖値が手のつけられない数値に。
調子こいていた人生のツケが一気に襲いかかってくるのです。
糖尿は魔王によくある病気なんですよ……
基本座りっぱなしのデスクワークですから。
……もう二度とビールとラーメンがある世界には転生しません。
と、いうわけで私は別にデブが嫌いなわけではありません。
誰よりもその苦悩がわかる自信があります。
腹と尻の脂肪には愛が詰まってるの!
あと二の腕。
少し話が脱線しました。
遊牧民の襲撃で食料が奪われまくっているこの領地。
本来ならお貴族様も痩せているはずです。
なにが問題なのか?
個人の自由でしょ?
いいえ。
食料がが少なくて土地持ちの農民にまで餓死者が出ているにもかかわらず、空気も読まずに見せびらかすように食料を無駄に消費して暴動を誘発する、官吏としてのその政治的なバランス感覚の無さはたいへん問題なのです。
もっと食料が厳しくなる冬になって扇動する人間が現れたら一気に暴動が起こることでしょう。
私は『裏で飯食っても酒飲んでもいいからパフォーマンスで少し痩せろ』と声を大にして言いたいのです。
え?
お前も痩せろ?
今言ったヤツはあとで体育館裏に来い。
説教するから。
というわけで政治も行政も演出は大事です。
仕事をしているという演出。
貴族が頑張っているから自分たちもあと少し辛抱しよう。
そう思わせないでどうするのですか!
アホの集団かお前ら!!!
まあこの時点で少なくとも民の方を向いて行政を運営していないのが良くわかります。
領主である私のほうすら向いていないようですけどね。
この時点でかなりの減点になった彼らを私はさらに採点します。
例えば今目の前にいる徴税官。
徴税官は代官の下で働いている人です。
非常に仕立てのよい服。王都で最先端のファッションです。
……のはずなのに、なぜかそこに金とか銀とかの糸を入れたり宝石着けたりしてキラキラに飾り付けています。
どこに出しても恥ずかしい清清しいまでの成金スタイル。
騎士の方々とは違い、やりすぎて悪趣味の極みですね。
宝石を私に見せ付けるつもりなのか、それが礼装だとでも思っているか、全く意図がわかりません。
単に悪趣味なだけかもしれません。
私は仕立てや生地や宝石から大体の金額を計算します。
それは徴税官の年収ではローンでもそうとう厳しいと思われる金額です。
もちろんこれだけの事をもって地下経済として無駄になる、横領をしてるとか、賄賂を貰ってるとかとは言いません。
もしかすると礼装のために苦しい家計を切り詰めて無理して買ったかもしれません。
ええ。ちょっと監査するだけです。
彼の出した徴税記録をね。
彼の資産とともにね。
コレをネタに永遠に子分としてこき使う予定です。
死んだ方がマシだったかなあってレベルで。
私は心の中だけで悪い笑みを浮かべるのでした。
はい次のデブのかたどうぞ!
◇
さて、デブに謁見したあとは視察です。
私たちは馬車で揺られながら領地を見回ってました。
と言っても畑を見るだけです。
特に何もないでしょう。
「暇ですねえ」
「うむ暇なのだ」
辺り一面麦畑が広がっています。
ちゃんと農業やってますねえ。
なんで税金取れないんでしょうねえ?
やっぱり地方の小役人の横領でしょうかねえ?
まったくみんなクズなんだから♪
しかたないなー♪
全員ぶっ殺す。
収穫期前の寒くも暑くもない陽気。
風がさわさわと流れます。
のどかですねえ。
このままスローライフが続けばいいですねえ。
と、のんびりモードになった私たち。
ところがそうは問屋が卸しません。
「……!」
「……! ……!」
「……!!!」
なんだか外が騒がしいです。
農民の皆さんが揉めているのでしょうか?
と、呑気に構えていると、いきなり暗くなりました。
「雨でも降るんですかねえ」
私はつぶやきました。
「それにしては空気が乾いているのだ」
シルヴィアがが冷静に答えます。
へー。
でもそう言う日もあるでしょう。
私は馬車の窓から空を見上げました。
大きい雲が浮かんでいます。
珍しい形です。
まるで巨大怪獣。
風もばっさばっさと……
ん?
怪獣?
「あんぎゃああああああああ!!!」
雷鳴のごとき咆吼。
「はい?」
私はあまりの急展開に頭がついていけませんでした。
それは体長10メートルはある巨大なトカゲでした。
羽が生えてて火を噴くヤツ。
それが空を飛んでいました。
それはいわゆるドラゴンでした。
ワイバーンというやつに違いありません。
「に、にげろおおおおおお!!!」
農民の叫び声が聞こえました。
にゃ!
にゃんですと!!!
なにこの急展開!!!
「ドラゴンだな」
「冷静に言うな!!!」
アカンです!
いきなり大ピンチです。
まったく資料になかったのです。
誰かが隠蔽しやがったのです!
そう、この土地は……
巨大怪獣の発生地だったのです!




