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大司教

「おめでとうございます! アレックス様」


 しゃがれた声がしました。

 声の方を見ると底意地の悪そうなツラのジジイがいました。

 法衣を着ていやがります。

 そう、相手は大司教でした。

 腐れ聖職者です。

 私のテンションが一気に下がります。

 絶対神を信仰する聖職者はどの世界においても魔族含めた亜人の敵だからです。


「ヴェノム猊下。ありがとうございます」


 大司教とは端的に言うと絶対神教傘下の暴力団組長です。

 聖職者ですが政教分離という概念が存在しないこの世界では上位貴族を凌ぐ権力者です。

 領地も兵隊も持っていて、戦争にも参加します。

 表向きは婚姻はしてませんが愛人は多数。

 人身売買ビジネスの元締めでもあります。

 もう立場だけで私の敵です。

 残念ながら大司教は家を継いでいない私よりは地位が高いのです。


 さて大司教は前述の通り、この国の絶対神ヤクザをまとめる親分です。

 さらにその上の絶対神教の教皇がいやがります。

 下出に出るしかありません。

 私はなにが「おめでとう」なのか理解せずに適当な返事を返しました。


「病弱な殿下のお()りで無駄にした時間が実を結んだということですな」


 喧嘩売ってんのかこのジジイ。

 言葉の選択が攻撃的なやつっていますよね。

 外向けにはシルヴィアは病弱設定になっています。

 危険人物なのは騎士やメイドは知ってますが、箝口令を敷いているので大司教の耳には入っていないようです。


「いえいえ。神のご加護で彼女の体調も良くなっています」


 私は病弱の妹のことを語る兄のように言いました。

 向こうは3歳、私は6歳から一緒に育っているのです。

 兄弟みたいなものです。

 私の返事は完璧なはずです。


「それは重畳。ですが殿下はお子を産んでいただくのは難しいかもしれませんなあ」


 出たよ。

 子産みマシーン発言。

 ぶん殴りますよ。

 シルヴィアは頑張っているんですからね!

 ようやく引きこもり体質を直して、人前に出られるようになったんですからね!

 お前らの基準で全てを決めつけるなクソジジイ。

 シルヴィアの悪口を言っていいのは親である国王夫妻と同じ魔王たる私だけです。

 い、いや相手はジジイ。

 悪意がない可能性もあります。


「どうでしょう、アレックス様。他の手(・・・)を考えてみては」


「他の手?」


 ぶちぶちぶちぶち。

 私は血管を浮かせました。

 その下衆なツラにパンチをねじ込みたいのです。


「ええ。どうでしょう? 例えばメンゲル伯爵家の令嬢などは?」


 ゲスなツラでクソジジイが言いました。

 メンゲル家ってたしか没落寸前でしたね。

 あー、そうか。

 シルヴィアの話だと思ったら、私の話か。

 私に愛人を囲えって言ってるんですね。

 げへへ。

 紹介してやるよと。


 シルヴィアは人前に出せないくらい病弱で、腹違いの兄やら弟はまさに暗愚。

 子供は内戦の種になるかもしれません。

 得に長男は危険人物のため今は研修名目で地方にやられています。


 噂通りシルヴィアが病弱だった場合を想定しましょう。

 王家の親戚である私にスペアを作らせます。

 二人の兄を殺します。

 シルヴィアが死にます。

 直系がいなくなります。

 スペアを有効活用します。

 スペアを世話した大司教は王家に恩を売る形になるので王家を支配できます。

 断っても「おうおう、神の代弁者の前で不倫かこの野郎! どう落とし前つけるんじゃワレェッ!」と脅迫することもできます。

 完全にヤクザと同じ手です。

 もちろん数多くある布石の一つでしかありません。

 大司教の手はこれだけではないはずです。

 今の王もバカじゃないのでそれを理解したうえで大司教と仲良くしているはずです。


 なかなかえげつない手です。

 性欲で頭の中がいっぱいの普通の16歳なら罠とわかっていても引っかかることでしょう。

 こんなしょぼい手で若い時から教会の奴隷にされてしまうのです。

 ですがそんなカビの生えた手に引っかかる私ではありません。

 なんたって無駄に枯れてますからね!

 と、言ってもこの手段を華麗にスルーしたからといって第二第三の罠が待ち受けています。

 悪徳商法の勧誘よりしつこく迫ってくることでしょう。

 お墓のセールスよりも執拗なのです!

 断ればもっと巧妙に、がんじがらめにされることでしょう。

 私に逃げる手段なんてないわけです。

 こうやって教会は数々の小技を駆使して逃げ道をふさいで時の政権を操っているんですねえ。

 人間をやってみないとわかりませんでした。

 実に勉強になります。

 そして実にムカつきます。

 私は頭の中でジジイに腹パンを浴びせます。

 こんなジジイに人生好き放題いじられてたまるか!


「そうですか……でも少し猶予をください」


 私はイケメンフェイスで微笑みました。


「ええ。もちろんですとも! なあに殿下を裏切ったとかお考えかもしれませんが、そんなことはありません! この大司教が保証しますとも」


 坊主の保証というものは詐欺師の契約書に相当します。

 要するに信用できません。

 もちろん内心ではブチキレてます。

 この野郎。

 吠え面かかせてやる!

 そう!

 私の自由を縛ろうとするヤツは全員懲らしめてやるのです!

 半殺しは当たり前。

 全殺しされても文句は言えないのです!

 そのついで、あくまでおまけとして、相棒への暴言の制裁を加えてやるのです!


 ……ところで殿下を裏切るってなんでしょうね?

 誰かわかる人います?

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