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ゴーレムさん

 あれから10年、我々はすくすくと成長しました。

 私は16歳、シルヴィアは13歳です。

 我々は特に問題を起こさずに十代という貴重な時間を謳歌していたのです。

 今回も二人でこのクソ広い王城の庭で軽くピクニックです。

 天気もいいし今日はいいことあるかもー。

 ちゅどむ。


「にゃー!!! アレックス。また城壁壊してしまったのだ。また父上に怒られるー!」


 焦りまくった相棒の声がしました。

 シルヴィアがまた魔法を暴走させやがりました。

 クソ広い王城の庭は長年の二人の訓練やら、実験やら、ケンカで穴だらけになっていました。

 今ではここには兵士も近寄りません。

 我々にもお付きの者はついていません。

 だって彼らも命が惜しいですから。

 解体訓練用の投石機のバラバラになった残骸も撤去されずに放置されています。

 前言撤回です。

 城壁やら見張り台やら訓練所やらの犠牲の上に我々はすくすくと成長しました。

 王城でほぼ監禁されながら。

 まあ王家の人間なんて城から出ないものです。

 「出ない」のと「出せない」のでは大きく違うような気がしますが、それは気のせいに違いありません。


「あのねー。なんでいちいち壊すんですか!」


「だってー! この魔法難しいのだー!」


 シルヴィアは土属性の魔法の練習をしてました。

 私の出した課題は実に単純なものです。

 土で人形を作って、魔法でセラミックスにしてゴーレム化、最後に動かせば完了です。

 なあに我が弟子シルヴィアなら容易(たやす)い作業でしょう。

 うんうん。

 失敗も良い糧になることでしょう……ってちょっと待ちやがれ。


「ゴーレム製作のどこに爆発の危険性がある作業がありやがるんですか!?」


 私のツッコミにシルヴィアは目を泳がせました。


「い、いやね。ロケット推進をつけようと思ったら突然どかーんって……」


 このガキ……

 余計な事して暴発させやがったな。


「あのね! ジェット燃料は化学者が別にいないと難しいって言ってるでしょ!」


 こういう大出力の燃料は適当こいたら死にます。

 マジで死にます。

 静電気で火だるまとか余裕であるんですからね!

 なので普通は魔術師だけでは作りません。

 高度に進んだ世界では魔術も化学も専門分野が細分化されています。

 ですので専門分野の化学者が必要になります。


「うにゃー! やってみたかったのだー! ロボットはロケットで空を飛ぶものなのだー! スラスターとかカッコイイのだー!」


 ゴーレムとロボットを混同してやがります。

 いえ気持ちはわかります。

 本当に気持ちはよくわかります……

 うん。すんげえやってみたいです。


「まったく……仕方ありませんね。作りましょうか」


 私はどぶ川のように濁った目で言いました。

 巨大ロボット。

 夢ですよね。


「げへへ。ロボットロボット……」


 私は設計図を作っていきます。

 さすがに燃料を作るのは難しいので魔力で推進するようにしてしましましょう。

 げへへへへ。


 完全に狂気の方に傾いた我々。

 ですが人生とはままならないもの。

 遊んでばかりいるわけにはいきません。


「おい、アレックス時間だぞ。シルヴィア様も時間ですよー!」


 うちの親父の声がしました。

 はて……?


「忘れたのかアレックス。今日は舞踏会だぞ」


 舞踏会?

 私のような庶民には関係のないイベントです。


「お前……まだ私は庶民とか思ってるんじゃないだろうな!」


「おっと、そういや貴族(笑)でしたっけ?」


「なんで(笑)がつくのだ!」


「で、どいつを殴ればいいんでしたっけ?」


「貴様は殺し屋か何かか?」


「冗談ですよ。じゃあ用意しますかねえ」


 今回の舞踏会はシルヴィア姫(笑)のお披露目もかねています。

 謎多き姫君。

 その噂は貴族たちによって面白おかしく噂されてました。


 曰く、国宝級の美少女。

 曰く、将来の大魔道士。

 曰く、邪眼の魔女。


 どいつもこいつも好き勝手に噂をしています。

 これらは極端な例で、実際に噂されているのは病弱で明日をも知れぬ命というものです。


 人間嫌いで人見知りが激しく、引きこもり体質で、しかも魔力を制御できないので他人様の前に出せなかった。


 これが真実だというのに噂とはいい加減なものです。


「ふふふ……みんなが笑ってるのだ……指さして笑ってるのだ……」


 はい。

 いつものように余計なフラッシュバックが始まりました。

 シルヴィアは過去に強烈な出来事があったようで、こうやってたまに壊れます。


「大丈夫です。笑いなんてしませんよ。殿下を笑ったら下級貴族なら一族皆殺し、大貴族なら我が公爵家と王家がタッグを組んで嫌がらせしますから」


 私はサムズアップしました。

 しゅごーい!

 けんりょくだいしゅきー!

 ゲス顔ダブルピース!


「……アレックスは権力だよりの生活を虚しく思わないのか?」


 なんでしょうか?

 その哲学的問いは。


「いえ、全然」


 やだなー。

 もちろんそんなこと全く疑問に思いませんよ。

 権力だいしゅきー♪


「ガチクズなのだ……」


 喧嘩売ってるんでしょうか?

 このチビ助は。


「あのな。今日の舞踏会には大司教が来る。くれぐれも大司教の目の前で神を否定するなよ!」


「はいはーい♪」


 私は適当に返事をします。

 大司教。

 この世界の土着宗教である絶対神を崇める宗教です。

 存在の証明が不可能な所品を販売してる詐欺師兼ヤクザにして、感動とモラルで人の心を動かすエンターテイナーです。

 どこの世界に行ってもこいつらの口のうまさは神がかり的です。

 主なシノギは勝手に徴収している収入の一割の税金と死後天国に行けるチケット『免罪符』の押し売りです。

 こう見えても彼らは超武闘派です。

 怒らせると意味不明の罪状でしょっ引かれたり、農民さんに一斉に号令をかけて一揆を仕掛けたりします。

 殺人放火拷問大好き、真の意味での鬼畜なのです。

 えげつない拷問や死刑のほとんどは、どの世界でもこいつら発の文化です。

 もちろんこちらも本気で殺しにかかりますが、裏切り者が出やがります。

 容赦のない拷問と死後の世界が恐ろしいからです。

 お前らなあ、騙されてるぜ!

 無神論者の私ですら転生できたんですから、地獄なんてないんですよ。

 私はこの世ほどの地獄を知りませんからね!

 彼らの嫌いなものは亜人。

 どこの世界でも亜人の抹殺を狙っています。

 この世界のことを調べましたが魔族含む亜人に関する書物がないので、すでに絶滅済みではないかと疑ってます。

 亜人というのは、人間以外の知的生命体のことです。

 この間のドラゴンは動物に含まれます。

 オーク、ゴブリン、謎の触手。

 私の愉快な子分たちは、すでにこの世界にいないかもしれません。

 そう考えると少しムカつくのです。

 少しくらい嫌がらせしてもいいよね。

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