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過去編 ~生まれてから数年間まで~

 今から17年ほど前のことです。


「うんぎゃあああ!(訳:デストローイ!!!)」


 すっぽーん。

 時間にして約10分、ありえないほどの超安産で生まれたのが私でした。

 血まみれの私に視線が集まります。

 おっと、これは小粋なスピーチをしろって事ですね。

 異世界には「天上天下唯我独尊」と開幕スピーチで成功を収めてちやほやされた例もあるそうです。

 うん、私も頑張らねば!

 なるべく明るく楽しいスピーチでハートをがっちりつかまなければ!!!


「へいへーい! 魔王ちゃんだよー! ひゃっほー! すんどこずんどこ……うんげ、げふへっふげふー!」


 次の瞬間、私は盛大にむせました。

 私のマシンガントークはむせるという最悪の結果をもたらしたのです。

 つまったのは羊水でしょうか……

 なんと脆弱な肉体!

 げふう!

 げひゅ!

 ……あれ……だんだん意識が……遠く……


「たいへん! 若様が呼吸困難に!」


 こうして私は生後一発目からやらかしたのです。

 このせいで私のスピーチとかは全てなかったことに。

 誰も見なかったことにしやがりました。

 全ては忘却の彼方へと消え去ったとさ。

 めでたしめでたし。

 なんで私はこうも格好つかないんでしょうねえ。

 わりと真面目に。

 至急、責任者は私に土下座すること!



 生後30秒であやうく死にかけた私ですが、その後はすくすく育ちました。

 死にかけたことは黒歴史としてなかったことになったとさ。

 今度の転生先は中世っぽい世界。

 回転寿司もヤサイマシマシラーメンもインターネットも薄い本もありません。

 なにこの刺激フリー社会。

 超つまんない。

 文明って一度染まると抜け出せませんよね。

 私の家は公爵家。

 王家の親戚になるそうです。

 生まれながらの勝ち組ですね。

 ですので、かわいがられて、かわいがられて、かいわがられて……

 気がついたらここ1000年で一番調子に乗ってました……

 いやだって、なにやってもほめてもらえるんですよ!

 どこ行ってもチヤホヤしてもらえるんですよ!

 常日頃、勇者(リア充)に虐げられている魔王はそういうのに弱いのです。

 あと賄賂も。

 もう……神様気分です。

 ところが一つだけ問題がありました。

 魔法が使えません。

 魔道士の中の魔道士、スーパーウルトラ天才魔道士の私に……魔力がないのです。

 魔力がすっからかんなのです。

 逆さに振っても出て来ません。

 魔法の使えない私なんてただの役立たずじゃん……

 3歳からつけられた家庭教師に会うたびにその厳しい現実を思い知らされました。

 だって家庭教師はは魔道士だったのです!

 悔しいので家庭教師の魔道士に八つ当たりするのが日課になっていましたとも!

 ええもうね、学生に無茶な質問する大学教授のごとく基本の魔術理論からツッコミまくりました。

 転生前は中世世界で調子に乗って進化論や引力を偉そうに語るのは止めようと心に誓ってました。

 でもストレスがたまると思わずやってしまうものですね。


 もう生意気な中学生のように揚げ足を取りましたとも!


「へぇー! 物理的な接触がないのに爆発が起こるんですかー♪ へぇー。じゃあ、なんでダンジョンで調子に乗って火炎魔法使うと死亡事故が起こるんでしょうかねえ?」


「へぇー! 凄いや! 無駄な火花放電! まさに魔力の無駄遣い! え、なんですかそのツラ。じゃあ、今から凧あげて雷の正体に迫る実験をしましょう」


「だから水魔法で水ぶつけるより、顔を水で覆うとか、血液を沸騰させるとかした方が効率がいいでしょ?」


「光属性の魔法は水蒸気で乱反射させて散らしさえすれば全然怖くな……」


「だからその魔方陣を数式に変換して、自動的に描画するスクリプトを作っちまえば時間を短縮できるでしょ?」


 それは科学と魔法の大安売りでした。

 魔道士も小生意気なガキに論破されるのでムキになって勉強してきます。


「じゃあ、実験しましょう! それで白黒つけましょう!!!」


 もうこうなったらお互い戦争です。

 彼の方も、すでに私をガキだと思ってません。

 本気でぶつかってきました。

 私も八つ当たりなど完全に忘れ去り、本気で議論をしました。

 罵倒、罵倒、罵倒。

 たまに下ネタ。

 怒鳴り声と下ネタギャグを織り交ぜてのレボリューション。

 ようするにそれは論破というルールに則った本気の喧嘩でした。

 こうして、どんどん私たちの授業は専門的かつ超高度になっていき、最終的には新しい魔法を開発するに至りました。

 なぜこうなった?

 どうも私は魔法のことだと手が抜けないのです。

 そんなある日、彼が満面の笑みを浮かべてやって来ました。


「アレックス先生! 宮廷魔術師の試験に合格しました!」


 先生に先生といわれるという謎の現象発生中。

 このとき私はシーツを破るほど悔しい思いをしてました。

 歯をガチガチ言わせて悔しがりましたとも。

 枕を引き裂きましたとも!


 「キイイイイイイィッ! なんで私は魔力ないのよ!」と。


 ひよっこ魔道士にムキになる私カッコイイ!

 ですがそれもこれもこれからのリア充ライフに必要なのなのかもしれません。

 そう、魔法への執着を忘れ去るのが幸せの第一歩に違いありません。

 と、私は自分に都合のいいように解釈しました。

 考えるのが面倒くさかったのです。

 体の遺伝的要因か、脳の問題か、もともとクズ度が高いせいか、原因はわかりませんがそのくらい頭がスッカスカだったのです。

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