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ヘレンちゃん(恋愛ジャングル最強生物)

 ぶいーん。


 エアコン。


 ぶいーん。


 パソコン。


 ぶいーん。


 みんなには内緒で設置したアイスと冷蔵庫、それにパソコン。

 ネットこそありませんが、それでも私たちは文明の利器に囲まれていました。


 マーベラス。

 文明の利器って素晴らしいですね。

 17年もこういうのに遠ざかってるとなおさら格別です。


「どんどん相棒がダメ人間になっていくのだ……」


 シルヴィアがあきれ果てたという声を出しました。

 ところがシルヴィアは水着姿で室内でビニール製プールでバシャバシャと足を動かしながらアイス食べてます。

 はいダメ人間一人追加。


「シルヴィアにだけは言われたくありません」


 一緒に冷房の効いた室内に入ってアイス食ってるやつに言われたくありません。

 いいですねー。

 クーラーとアイス。

 あとはゲームとマンガとラノベをこの世界に広めて新作を作らせれば一生遊んで暮らせます。

 そう。そしてそのまま人生という消化試合を終わらせるのです!

 人生なんて真面目にやってられっかよ!

 どうせ勇者どもが殺しに来るし……殺し?

 ……ってちょっと待て!

 なにか忘れてるような……

 はて?

 殺しに来る。

 ……あああああああああああ!

 やっべー!


「……忘れてた!」


「どうした?」


「……巨大怪獣忘れてました!」


「んあ……ぬわああああああああああ! 忘れてたのだ!」


 倒さないとこの街ピンチじゃねえか!

 完全に忘れてたとですよ!

 や、やべえぜエアコン!

 完全にバカになっていた!

 こうして怪獣討伐作戦はまたもや開始されたのです。



 さて討伐です。

 と言ってもこのままでは大怪我をする隊員が出てしまいます。

 まずは装備を手に入れましょう。

 もう一度まーくんを呼び出さなければなりません。

 伝説の武器とか防具ではありません。

 相手は全力で我々を殺しにかかってきてます。

 銃とかミサイルとかが必要です。

 相手が緑色の骨になって消滅する光線銃とかがあればベストです。

 マストバイなのです!


「まーくん! あっそっびっまっしょー!」


 私はゲートをノックしました。

 シルヴィアも一緒です。

 今度は弁護士さんは出ませんよね?


「はいはーい」


 謎のワンコ。

 でもドラゴンらしい生き物。

 まーくん登場です。


「こんにちわー」


 まーくんは小さな女の子を連れていました。

 幼女です。

 幼女です。

 大事なことなので(略)


「……はて、その子はどなたですか?」


「妹のヘレンなのです♪ かわいいでしょう!」


 妹?

 お父さんの時も疑問に思いましたが種族が違いますよね。

 妹さんはお父さんそっくりです。

 すんごい美幼女。

 これはお母さんもものすごい美形に違いありません。


「にいちゃ」


「お友達のアレックスくんとシルビアちゃんなのです。ヘレン、ご挨拶は?」


「こんにちわー」


 マー君にしがみつきながら幼女が挨拶しました。

 なにこのかわいさ。


「はーい。こんにちは」


 なんでしょうね。

 この癒やし系兄妹。

 凄く癒やされます。

 ニヤニヤが止まりません。

 私がニヤニヤしていると門から大きな声がしました。


「マクスウェル様ー!」


 声の主はこれまたすんげえ美少女。

 赤毛の美少女が現れました。

 なにこの異常なほどの美形率……

 でもこの娘……美形なのになぜか肉食獣っぽい……

 おそらく人間じゃありませんね。


「エレノアちゃん♪」


 まーくんが手を振りました。


「あら、お客様。みなさん火龍のエレノアでございます。マクスウェル様のパートナー(・・・・・)ですわ」


 パートナーがやたら力強かった気がしますが、スルーします。

 ウザイ嫁アピールです。

 ツッコミを入れたら怪我するような気がします。

 それにしてもまたもやドラゴンです。

 火龍。

 またの名をレッドドラゴン。

 別名、空飛ぶ暴力。

 魔力こそ少ないですが異常に強靱な肉体と理不尽な威力のブレス攻撃で全てを破壊する生き物です。

 怒らせると周囲全てを焼き尽くします。

 一見強面ですが敵対しなければ気のいい連中です。

 ちなみに私が倒したワイバーンとは人間とワオキツネザルくらい違う種です。

 なのでワイバーンを食べたことも特に気にしないでしょう。

 おっと挨拶挨拶。


「アレックスです。こちらはシルヴィア」


 私は年に数回だけ発動する美形フラッシュを炸裂させました。

 奥歯きらりん♪

 垂れ目ケツアゴマッチョでないのが残念です。

 これを発動すると半日は下ネタを言い続けないと精神の均衡が壊れてしまう諸刃の刃です。


「……なあ無理をするなアレックス。お前のような下ネタ大好き皮肉屋くんが美形なんかに生まれたことがなにかの超自然的な罰なのだ!」


 シルヴィアうるさいです。

 あなり追い詰めると幼児のように泣き叫びますよ!

 つか、アンタも同じでしょうが!


「そうそう、マクスウェル様! ネットでマクスウェル様がオンしないので大騒ぎになってますわ!」


 私の美形フラッシュは華麗にスルーされましたとさ……

 ちょっと悲しい。

 それにしてもオンですと?

 これってオンラインゲームのことですよね。

 向こうにはオンラインゲームがあるようです。

 どうやらまーくんは廃ゲーマーのようです。


「あー忘れてました! 狩りに行く約束でした!」


 なんだか楽しそうです。

 私もやりたいなあ。

 じゃなくてはっきりさせないと!


「まーくんのカノジョさん?」


 私は聞きました。

 自分でもゲスいという自覚はあります。

 でもどうしても聞き出さなければなりませんでした。

 まーくんは勇者(リア充)なのか?

 それだけははっきりさせておかねばなりません。

 まーくんは小首を傾げると考え始めました。

 エレノアが期待に満ちた顔をしてます。

 そして、まーくんは口を開きました。


「ちがいますよー。お友達ですよー(・・・・・・・)


 それは悪意のない笑顔でした。

 本当になんの悪意もない笑顔でした。


「げっふー!」


 ですがいわれた本人には大ダメージ!

 あ、エレノアが血を吐いて倒れやがりました。

 殺虫剤をかけられた虫のようにピクピクしてます。

 エレノアはこちら側でムダ美形と、メモメモ。

 仲間が増えてうれしい♪


「悪気はないが……残酷なのだ」


「世の中は常に残酷なものですよ」


 言ってみたかっただけですがなにか?

 そしてその時、私たちは目撃しました。

 倒れるエレノア。

 それを見てヘレンのほくそ笑む顔を。

 その勝利を確信した顔を。

 ライバルを蹴落とした優越感を。

 そしてこの小さな捕食者(プレデター)はフィニッシュに入ります。


「にいちゃ」


 ぺちょ。

 ヘレンはまーくんのふわふわとした体に抱きつきました。


「はいヘレンちゃん。だっこですかー?」


「あいー」


 ヘレンはまーくんに抱っこされました。

 その顔は邪悪にほくそ笑んでいます。


 この男は私のもんじゃい!


 邪悪なツラはそう物語っていました。

 この娘……あの胡散臭いお父さんそっくりだ!


「わかりますか。シルヴィア。あれがメスです。全てのパラメーターを愛されることに使った生き物です。我々には逆立ちしても到達できない境地です」


「うむ……恐ろしい……あれが女子力なのか……」


 ごくり。

 魔王(非モテ)には到達できない境地です。

 我々は息を呑みました。

 世の中にはまだまだ恐ろしい生き物が潜んでいるに違いありません。

 そうこの恋愛ジャングルにはまだ発見されていない恐ろしい捕食者がたくさんいるのです。

 我々が眉毛の野太いやたら線の多い顔になっていると、まーくんがぺこりと頭を下げました。


「ごめんなさいです。そういうわけなのでボクもう行かないと」


 おう。

 今回は遊べないようですね。

 って、やべえ。

 本題忘れてた。


「あ、その前に武器を売ってください」


「コロニー落とし使いますか?」


「もうちょっとソフトなやつを。迫撃砲とかアサルトライフルとか」


 ソフトの基準が根本的に間違っているような気がします。

 私もこのノリに染まってきているようです。


「はいー。今すぐは用意できませんけど、作った記憶があるのでたぶん倉庫にあると思いますー。あとで在庫確認しておきますねー」


「はい。お願いします! あ、そうそう。あとこれの鑑定お願いできますか?」


 私は例のメモリーカードをまーくんに手渡しました。


「……メモリーカードですねえ」


「ええ、規格に合うパソコンが必要になりますね」


「わかりましたのです! 次までに解析しておきます」


 まーくんはやたら純粋な顔でそう言いました。

 物を預けても安心できる商人さんってホントいいものです。

 私たちは手を振ってまーくんを送り出しました。

 よしこれで武器予約完了です。

 今度こそ巨大怪獣を圧倒的力で倒してやるのです!

 ぬわーっはっはっは!!!

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