人間に転生、そして辺境流し
みなさんおはようございます。
世界の大きいお友達のアイドル!
魔王ちゃんでございます。
魔王と言う名のサクッと殺され職人を続けることはや数千年、またもや転生しました。
なんと今回は人間になっていました!
何を言ってるかわからねえと思うが私もわからねえ。
催眠術だとか(略)
なぜこんなネタ知ってるんでしょうね?
不思議ですねえ。
でね、でね。
すごいことを発見したんですよ!
人間さんって一人見つけたら、近くに三百人はいるんだって!
ちょー驚きました。
そして理解しました。
人間さんって、リア充の集団なんですね。
どの世界でも少子高齢化が激しいゴブリンとかオークより繁殖力高いじゃねえか!
驚きました。
そして理解しました。
人間さんって、リア充の集団なんですね。
あ、そうそう。
私、通算すると数千年ほどお一人様やってます。
恋人?
なにそれおいしいの?
「フフフフフフ……
リア充爆発しろ!
爆ぜろ!!!
死ね!!!」
それは私の心の叫びでした。
勇者に対する憎しみの発露だったのです。
「ぜいぜい」
ふふふ。
ちょっと興奮しちゃいました。
そうそう。
今の現状報告ですね。
少し口調を変えて挑んでみましょう。
あのね魔王ちゃんね。
今回人間なの!
中世ファンタジー世界で将軍の家の息子に産まれたの!
今17歳!
今回は組長の息子とか独裁者の後継者……じゃなくて魔王じゃないの!!!
生まれながらの勝ち組ですね。
ひゃっほー!!!
無条件で周りがちやほやしてくれるスーパーボーナスステージ到来!
みんな会う人会う人が『かわいいかわいい』って褒めてくれるの!
皆さん、考えても見てください。
今まで愛されたことのない人間が無条件に愛される状況に放り込まれたら?
……一瞬で堕落しました。
世界で自分が一番偉いって勘違いしましたね。
あれほどそういうバカになるのだけはやめようと思ったのにもうあっさりと。
最悪の独善男に育ち日々黒歴史を量産し続けてましたとも。
なんでこうも簡単にバカになるんでしょうかね?
どうやら私は力こそ正義という劣悪な環境の方が謙虚に育つようです。
でね、魔王ちゃんね。
「調子こきすぎてヒャッハーしたら故郷を追放されたの……」
やっちまったぜ……
で、今ね、今ね。
ド田舎に馬車で護送中なの。
実はね。
魔王ちゃん……神そのものは否定しないけど、てめえらの商売にしてる神は信じねえ派なの。
ホラ、普段見えもしないのに偉そうにしてるやつって特に理由もなくムカつくじゃないですか?
ムカつきますよね?
なんの仕事してるかわからねえようなのに人生決められちゃうんですよ。
わかりやすく言うと現場も知らねえくせに偉そうにする無能な上司に対する怒り?
なんか近いですよねー。
んでね、宗教家って基本的に人の話聞かないじゃないですか?
でね、ちょっといろいろあって大司教さんに人生を縛られそうになったんですよ。
レール敷いてやるからそこの上だけで動きやがれと。
相手はバックに神様いるから自分たちが絶対に有利だと思ってやがるの。
ムカつきますよねー。
ですけど宗教団体ってのは無駄に強いんですよねえ。
対抗手段がないの。
しかも私、この時無駄に増長してたから、夏休みのヤンキーみたいなヤンチャに走っちゃったのね。
……自ら開発した花火投げこんだんですね。
それで大聖堂破壊しちゃった。
大司教ってのはすんげえ権力者で、発覚したら宗教と国の戦争になりそうだったんですね。
原因はあまりにもくだらないことだったんで、とりあえずほとぼり冷めるまでド田舎に追放されちゃったんですねえ。
いやあ、宗教と政治の癒着って人間さんが神からの自由を勝ち取るまで続くんですよねえ。
政教分離とかって現代の思想ですものね。
サクッと忘れてました♪
「テヘペロ♪」
まあいいや。
ポジティブシンキング。
ポジティブシンキング。
教会は絶対に滅ぼしてやる……じゃなくて趣味の園芸でもして大人しく適当に暮らそう。
私怨は身を滅ぼす。
復讐したけりゃテメエの墓穴を先に作れ。
何度これで失敗したことか。
スローライフ。
スローライフ。
薬草とか薬草とか薬草とか植えて。
自分のしたいことだけして暮らしましょう。
前世で金ないときに自分で漢方薬作って飲んでたんですよー。
カンゾウとミント混ぜて風邪薬ー!
クミンとシナモンで胃腸薬ー!
風邪薬も自分で作るんですよ。
えへへー。
あと発明とかー。
ミサイルとかプラズマ砲とか作って遊ぼっと。
あと巨大ロボ。
ロマンですよねえ。
まさかあてがわれた土地が上級者コースのはずがないです。
無駄遣いさえしなければイージーモードな土地のはずです。
実家は名門ですからねー。
税金横領してお金を貯めるところからまったり始めなきゃ!
テヘペロ♪
「アレックス。なに恐ろしいこと口走ってるのだ……」
おっと妄想が口に出ていたようです。
同じ馬車に乗っていた女の子が私に言いました。
ヒラヒラリボンたくさんゴスロリ衣装を着た可憐な少女です。
この文明レベルの低い世界で無茶しやがるぜ……
彼女はシルヴィア。
この国のお姫様です。
私の幼なじみで友人です。
あ!
そうそう。
今の私の名前はアレックスです。
名前名乗るの忘れてましたね。
男でも女でも使える名前でよかったです。
もし転生先での名前が鬼瓦権三郎とかだったらどうしようかと思いますよね。
話を元にもとしましょう。
なんでお姫様が私と同じ馬車にいるのか……それは……
「もうやだなあ。同じ元魔王じゃないですか。固いこと言うのなしですよー♪」
私はクスクスと笑いながら言いました。
はい。
彼女も元魔王です。
なんでしたっけ?
ああ、そうそう。
剣王ガラハッドでしたっけ。
前世がサムライ魔王なんだそうで。
「腕力ない女の子に生まれたせいで全部パーですけど」
「余計なお世話なのだ! お前も魔法使えないくせに!」
実は私たち、職種が入れ替わっているんです。
私の前世は魔法使いです。
彼女の前世はサムライ。
今の私は17歳の腕力過剰な若者だけど魔力なし。
彼女は異常なほどの魔力持ちだけど14歳の非力な女の子。
私はハイクラスの魔法技術を持ってますが魔法は使えず、彼女は魔力あるけど魔法の技術がありません。
逆に私は筋力あるけど近接戦闘の技術がなく、彼女は近接戦闘のマスターだけど筋力が全くありません。
お互い積み上げたものが全部パーでやんの!!!
「ゲヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!! 超ウケるー!!!」
「うるさいのだ!!! お前はオネエか!」
シルヴィアが私をポコポコと殴ります。
サムライ魔王ですのでポコポコという音を立てながらも正確に急所を打ち抜いてきます。
でもダメージはありません。
きーかーぬーわー!
あ、そうそう、なんで彼女が同じ馬車にいるかですね。
いやね彼女。
私が大司教の家に花火打ち込んだときに魔力暴走させて街の一部を破壊しちゃったんです。
幸い怪我人はいなかったけど「ロイヤルファミリーがこれじゃヤバくね?」って話になって病気療養のために田舎で療養処分になりました。
簡単に言うと、危険人物はまとめて管理した方が楽じゃね?
って誰かが言い出して「将軍の息子アレックスがその警護もかねて地方の領主を体験する」という建前で一緒に追放。
まあいわゆるリストラですね。
危険物はまとめて管理。
王族も将軍家も探せばスペアがいっぱいいるからこういうときも楽ですねー。
薄汚い大人たちの思惑って大好物です。
ひゃっはー!!!
このように少し喜んでいる私ですが、シルヴィアはそうではありません。
「せっかく一生お部屋に閉じこもって寝て凄そうと思ったのに……すべて貴様のせいなのだ!!!」
泣きながらシルヴィアが私をぽこぽこ叩きます。
きーかーぬーわー!!!
まったくこのダメ人間は仕方ありませんねー。
「今から引きこもればいいのです。なあに引きこもるのを邪魔するものは処刑してしまえばいいのです」
サムズアップ。
私は最高に優しい気持ちで言いました。
いや感動の台詞ですねえ。
私最高!!!
「そうやって暴力に頼って同じ事を繰り返してるから勇者が殺しに来るのだ……」
私の言った感動的な台詞は、バカの心無い一言で打砕かれました。
シルヴィアはそのまま無言になり、私もそのまま黙りました。
言い返せなかったのです。
ええ! 全くその通りですよ!




