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邪神とガチャマスィーン

 私とシルヴィアはマクスウェルを呼び出しました。

 マクスウェルを呼ぶための合言葉は決めてあります。


「まーくん、あっそびましょー!」


 私は夏休みの小学生のような合言葉を元気よく言いました。

 ところがそこに現れたのは……


「やっほー。呼ばれて飛び出て内臓でろん! よい子の守護神ナイアーラトテップなのねん♪」


 胡散臭いオッサンでした。

 浅黒い肌でギターケースの中に機関銃持ってそうな顔の美形。

 ただし爬虫類系。

 なんでしょうねえ。

 この詐欺師っぽい顔……

 明らかに嘘から先に生まれてきた顔です。


「ないぞうでろん?」


「内蔵でろん」


「ひゃっはー!」


「ひゃっはー!」


 ハイタッチ。

 シルヴィアはそれを冷たい顔でにらみます。


「新しい大口顧客さんハローなのねん! ようこそバハムートショッピングプラザ・カワグッチー店へ!」


 妙に聞き覚えのある地名を叫ぶとこの変な人は名刺を差し出しました。

 そこには古代埼玉語で『ナイアーラトテップ法律事務所代表ナイアーラトテップ』と書かれていました。

 古代埼玉とはかつてあった超古代文明のことです。

 ありとあらゆる世界にチバーやアダチーと熾烈な争いを繰り返した痕跡が残っています。

 それを知っているとは他だものじゃねえです。

 ナイアーラトテップは一見するとうさんくさいおっさんです。

 そのくせただの弁護士ではありえないような気を漂わせています。

 どうやらオッサンは悪魔とか妖怪の類いのようです。

 もっと上位の存在かもしれません。


「古代……埼玉語……だと……」


 私はバトル漫画の解説役のようにつぶやきました。

 これはお約束です。


「なんだそのさしたる根拠もなくダメそうな言葉は……」


 まったく、相変わらず空気が読めない娘ですね。

 そこは「知っているのか? アレックス」でしょ?

 そして続けるのです。

 「あの伝説の……古代埼玉文明の暗殺拳を……」ってね。

 まあしかたない。

 ノリの悪いシルヴィアちゃんには丁寧に説明してやりましょう。


「シルヴィア。古代埼玉っていうのは多くの世界で存在した超古代文明ですよ! 通貨は草加せんべい」


「……なんだそのインチキ臭い連中は!」


「あの古代アトランティスの末裔で水害で滅んだ故郷を教訓として海無し県に住んでいる民族です。ありとあらゆる世界を征服したのですが、せんべいと山○うどんの食べ過ぎからの糖尿病で滅亡の憂き目に……」


「フフフフフ。埼玉の秘密を知るとは……恐ろしいお客様なのねー」


 ごくり。


「フフフフフ。弁護士殿もなかなかの目利き」


「げひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」


「にゃはははははははははは!」


 なんだか目の前のオッサンが急激に前世からの友人のような気がしてきました。


「お前ら二人とも死ねばいいのだ」


 シルヴィアが一刀両断にします。

 せんせー、シルヴィアちゃんが冷たいです。

 いけーないんーだーいけないんだー。

 てんてーにいってやろー。


「では本題なのね。ささこれを進呈なのね」


 弁護士さんが私に紙を渡しました。

 いい加減話が進まないと思ったのでしょう。

 それはチケットでした。

 古代埼玉語でなにやら書いてあります。


「それはなんなのだ?」


「えー……ガチャの無料券だそうです」


 ガチャ。

 とある世界の古代埼玉文明を一夜にして滅ぼしたと言われる悪魔のシステムです。

 お金やチケットと引き替えにガチャを回すといろいろな便利アイテムが出現します。

 が、一度ガチャを回したが最後、その悪魔的魅力に取り憑かれ破滅するまでガチャを回し続けるのです。

 狩猟本能を刺激する悪魔のシステムなのです。


「なんという恐ろしい手を……まさに破滅への片道切符ですね」


「そ、そんな恐ろしいものなのか?」


「まあ一種のギャンブルですよ。手を出しさえしなければ恐ろしいことはありません」


「くくく。やらないのねん? 初回は無料よ!」


 ふふふ。

 そんな手垢のついたオールドスタイルな手に乗るはずが……


「やります!」


「やるのか!」


「だってギャンブルですよ! やらなきゃ損でしょ!」


「……こいつ……目が血走っているのだ」


 私は血走った眼で券を差し出しました。

 丁半博打にバカラ。

 インディアンポーカーにロシアンルーレット。

 ギャンブルには夢が詰まってます。

 ほとんどが蜃気楼ですが。


「ではこのガチャを回すのねん」


 弁護士さんがア●ダとかコス●スと書かれた安っぽいガチャマシーンをどこからともなく出しました。

 私が弁護士さんに券を渡すと弁護士さんは『100埼玉クレジット』と書かれたコインを私に渡しました。

 コインをガチャにセットしレバーを握り……そして!


 ぐるぐるぐるがしゃーん。

 ごくり……


「さて……ガチャが出ましたが……」


 私は静かに言いました。


「これで暴走族ファッションをした猫のステッカーとかが出てきたら暴れますので」


「だ、大丈夫よ」


 なぜか声が甲高くなりました。

 絶対入ってるな。

 よし、くだらないギャグ商品が出たら暴れよう。

 私はにっこり笑うと出てきたカプセルを手に取りひねります。

 うわーお!

 なんだろう!

 今から凄い期待感がありますね。

 きゅぽん。

 よし中の品を確認……



『夏休み良い子のコロニー落としキット引換券』



「いらねー!!!」


 私は床にカプセルを投げつけます。


「うお、酷いのね! いろいろネタを仕込んでいたのに一番の当りを引くとは。恐ろしい子」


「夏休みの宿題で人類皆殺しにしてどうすんのよ! つかお前らコロニー落とし好きだなおい!」


「ではもう一度やるのねん? 一回100埼玉クレジットよ」


 実は埼玉クレジットはエメラルドのごく一部を換金した分が100万ほどあります。

 ですがこれは領民の食料の分。

 これを使ってしまっては……


「やりマッスル!」


「やるのかー!」


 シルヴィアのツッコミなど最早聞いていません。

 私は全く当りの出ないスロットに全力で金を投入するギャンブル依存症患者のような顔になっていました。

 うへへへ。

 ぐるぐるぐるぐるー。


 がちゃがちゃがこーん!


「うへへへへ」


「こ、コイツ……将来ギャンブルで破滅するタイプなのだ……」


 シルヴィアうるさいです。

 さてさてガチャの中身を確認っと。



『究極魔法えたーなるふぉーすなんとか……当ったら死ぬ』



 ばしーん!


「いらねええええええええええ!」


「うわ! ひどいのねん!」


「もっとまともな景品ねえのかよ!」


 私は血走った目で詰め寄ります。


「レアガチャなのにー!」


「レアじゃねえの出せええええ!!!」


 レアの中身は全て世界滅亡レベルの品のような気がします。

 もっとマシなのよこせ!


「えーつまんない。もう普通のガチャじゃ面白くないのねん」


 そう言いながら弁護士さんはもっとショボいガチャマシーンを出してきました。

 段ボール紙に手書きで『20埼玉クレジット』と書いてあるヤツ。

 なんだか可哀想なので買ってやりましょう。

 あまりにも安いのでゴム製のしょぼい人形が出ても許してやりましょう。


 がちゃがちゃがこーん!



『魔導式ルームエアコン爽快』



「チッ!」


 弁護士さんが露骨に嫌そうな顔をしました。


「当りですね……」


「当りだな……」


 ではもう一度。

 がちゃがちゃがこーん!



『魔導式ノートパソコン 』



「当りですね……」


「当りだな……」


「チッ!」


 弁護士さんがさらに舌打ちします。

 どこまでも感じ悪いです。


「くッ! 小さな葛籠(つづら)を動物的本能で選ぶ。そんなハッピーエンド認めないのね!」


「ふふふ。勝った! 無欲の勝利ですよ!」


「今のお前ら二人のどこに小さな葛籠や無欲があったのだ!」


 シルヴィアがツッコミを入れますがどこまでもスルーです。

 知らないもんねー。

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