バハムートショッピングプラザ
「そうですか。もっと凄い武器が欲しいと」
マクスウェルがうんうんと頷いてます。
それに連動して尻尾がピコピコと揺れています。
どうやらこのワンコ、異世界の商人なんだそうです。
でもどう見ても武器とかを扱ってる様子はありません。
扱っているのはおもちゃとかじゃないでしょうか?
どうやら魔法は失……
「わかりました!!! デラックスな武器ですね!」
「武器あるんですか?」
「はいー。えっとお支払いはそこのエメラルドですか?」
マクスウェルが迷惑料のエメラルドの破片に視線を傾けました。
「いえ、これは召喚魔法の迷惑料です」
私はエメラルドを差し出します。
マクスウェルはきゅっと首を傾けています。
「迷惑じゃありませんよ?」
この子……良い子すぎる!!!
「じゃ、じゃあ契約の手付けということで」
「はーい♪」
その素直な態度に私は自分の薄汚い心を見透かされているような気持ちになります。
無欲ってこんなにアグレッシブだったんだ……
「あの支払いはこの宝石で……」
私はルビーとエメラルドの本体を差し出しました。
「これですと、どういったものが購入出来ますでしょうか?」
マクスウェルは目を丸くしてました。
「これはすごい逸品ですねー。天然物でこのサイズ。ボクも見たことありません!」
マクスウェルは一目で宝石の真贋とその価値を見抜きました。
……なにこの子すごい!
「えーっとそのクラスの宝石になりますと……」
どんな武器が……ドキドキ。
「非常にデラックスな武器になりますね」
デラックス!!!
「コ○ニー落としはどうでしょう?」
「……はい?」
なんだか恐ろしく物騒な単語が出てきました。
怪獣のついでに魔族含めた全人類まで抹殺しそうなやつ。
物騒な単語に反してマクスウェルは全く邪気のないニコニコ顔でした。
「6万メガトンの圧倒的火力なのです。着弾点の周囲500キロを消滅させるのです」
なにその大陸破壊兵器!!!
それ使ったらこの町まで消滅するがな。
私は慌てて提案を拒否します。
「そんな皆殺し装置はいりません!」
「そうですかー。そうなると難しいですねえ。そうなると宇宙空母とかー。気象兵器とかー。えたーなるふぉーすぶりざーどとかー」
全て人類全てを滅ぼすことのできそうな兵器です。最後以外。
ここで私はようやく理解しました。
どうやら取引してる相手は超絶危険人物のようです。
悪意が全くないのが逆に恐ろしいです。
「あ、○邦軍全兵器セットはいかがで……」
「いりません!」
「ジ●ン派でしたか」
「そういう問題じゃありません」
「そうですかー。でも大量に余ってる倶利伽羅もエクスカリバーもそのルビーですと安すぎますし……」
へ?
いまなんつった?
「えっと今なんと?」
「っきゅ? 聖剣はただいまセール中なのです? つい作りすぎちゃって売らないとお母さんに怒られるのです……」
そう言うとマクスウェルは何も無い空間から剣を抜き出しました。
っちょ!
今普通に異世界から剣を召喚しましたよね!
魔法を詠唱してませんよね!
「はい。サンプルです。差し上げます」
そう言うと剣を私に差し出します。
「ほ、本物?」
私は相棒の方へ目をやります。
こういうのは侍に聞くのが一番なのです。
「本物……だろうな。全体の作りはお前の宝剣と同じレベルだが、剣から感じる気がお前の宝剣とは段違いだ」
「量産品ですけど性能は同じですよー」
マクスウェルはそう言うとニコニコとしてました。
りょ、量産出来るのか……すげえ。
私はマクスウェルに恐る恐る聞きます。
「おいくらで?」
「一振り1万クレジットなのです。えっとこっちの通貨だと……分析しますので金貨見せてくださいな」
私が金貨を渡すとマクスウェルが何もない空中に魔法陣を展開、分析魔法で金貨を検査しました。
このワンコ! できる!
「おおー。金の含有量多いですねえ。これだと1枚で12本、おつりもあるのです! 同じクラスの防具もいりますか?」
「買った! 守備兵団分300本買った!!! 支払いはこの宝石の欠片で!」
私は血走った目で即決しました。
全部を宝石払いです。
私個人に渡された持参金だけでも買えてしまう安さです。
サービスで防具まで付けてくれました。
これで最強兵団に一歩近づくのです。
ぐあーっはっはっは!
「お買い上げありがとうございますなのです。でもー、現在の在庫の状態だと他の聖剣も混ざってしまいますけど、いいですか?」
「数が揃えばなんでもいいです」
300本も伝説の聖剣の在庫があるお店。
すでに私はツッコむのも考えるのをやめました。
そういうものがあるんですねー。
凄いやー。
私はなにも考えないようにしつつ宝石を渡しました。
「はいー! ありがとうございますー。これでお母さんに怒られなくてすみましたー。作りすぎて困ってたんです」
この超危険生物を叱るお母さん。
きっと最強の生き物に違いありません。
「売れないとお父さんがサソリ固めされちゃうところでした……」
お父さん……
私は涙が止まりません。
異世界でもお父さんは立場が弱いんですね……
なにこのけなげな子。
私はワンコへ急に親近感を感じると、もう一つの用事を思い出しました。
「あ、そうそう。あと……申し訳ないのですが食料とかも扱ってます?」
私は恐る恐る聞きます。
我が領地は現在、大飢饉中です。
なんせドラゴンに麦を焼かれてしまいましたから。
いいかげん、食料がないと死人が出ますからねー。
「はいー。うちはショッピングセンターなので食料品はたくさんあるのです」
ピコピコとワンコが跳ねました。
この生き物お持ち帰りしたい!!!
私はこのモフモフを温かい気持ちで見てまし……って……ちょっと待て、いま何つった?
「全力で売ってください……って、ショッピングセンター?」
「はいー♪」
「あの古代埼玉語を話す金髪夫婦が頭悪そうなガキを連れて、フードコートで時間を潰すというあの伝説の……」
「んー。お母さんはよくそう言ってますねー」
「物欲の殿堂と言われる……1店舗でなんでも揃うあの店ですよね?」
「はいー♪」
ニコニコと微笑むワンコ。
尻尾がピコピコと揺れています。
凄いんですよーと言いたいみたいです。
私もつられてにっこり笑います。
どうやら私はとんでもない当りを引いたようです。
私は内心の邪気を悟られないように声を抑えて言いました。
少し震えていたのは内緒です。
「ここにゲート固定していいですか? また取引をお願いしたいので」
あくまで事務的に言いました。
ですが内心は喜びの余り震えていました。
動揺しすぎて吐きそうです。
私は動揺をすると逆に大人しくなるタイプです。
おそらく宝くじの高額当選者ってこういう気分なのでしょう。
「いいですよー♪」
マクスウェルはあくまでマイペースでした。
「それではお友達メダルを作……」
「ゲートを固定するのですー!」
私がギリギリのネタを言い終わる前にワンコが両手を挙げました。
すると不安定だったゲートがぴしっという音と共に一瞬で空間に固定されました。
うわーお!
すっげえな!
「今の魔法ですか?」
「はいー。この本に出てました!」
ワンコがまたもや何もない空間から出した新品の本を差し出しました。
なになに……クラウディア・ザカリアス著『白魔法』。
なるほど白魔法か!
白魔法は回復とか解毒とかのいわゆる『善良で健全』な魔法です。
ちょっと苦手な分野なんですよねえ。
でもこの著者はどこかで聞いたことがあるような……?
思い出せません。
でも、こんな小さな子がここまで使えるようになるのですから良書に違いありません。
欲しいなあ。
でもお高いんでしょ?
どれどれお値段は……1600クレジット。
安ッ!!!
「売ってください!」
「はいなのですー!」
新しい魔道書に凄い装備に食料……全て確保完了しました。
しかも相場の半分以下。
今日の私はいいことばかり起こります。
この商人さんとはぜひ今後もおつきあいしましょう!
「あ、そうそう。そちらのお店の名前は?」
「バハムートショッピングプラザなのです!!!」
こうして領主の館にショッピングセンターへの門ができました。
冷凍タコ焼きからコロ○ー落としまで。
なんでも揃う物欲の殿堂。
魔導マネーでかんたん決済。
物々交換も可。
お買い物ならバハムートショッピングプラザ。
……もはや細かいことを考えるのはやめました。




